ドラマがマニアック

『A LIFE』。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1932.html" target="_blank" title="先週も">先週も</a>書いたキムタク主演のTBSのドラマ。(元)心臓外科医目線のレビュー、第2弾です。

そこそこ真面目な雰囲気で始まったドラマが、今後どのように崩れていくのか気になって、第2話を観ました。

描かれた手術は3例。あとで問題になるのが、胸部大動脈瘤に対する「ステントグラフト内挿術 (TEVAR)」。

胸を大きく切る大手術ではなく、鼠径部の動脈から人工血管を挿入して、大動脈内に内張りする手術です。

それと並行して、小児の手術も行われていたのですが、これがまた「PVO解除」という難解な術式でした。

「PVO」というのは、複雑な先天性心臓病等に時々合併する、治療の難しい病変「肺静脈狭窄」のことです。

私が医者になって初めて書いた論文(症例報告)は、この「PVO解除」を行った乳児の心臓病症例でした。

一般に、心臓を停止させて手術を行う場合、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-225.html" target="_blank" title="人工心肺">人工心肺</a>による体外循環によって、全身の循環を保ちます。

ところがその全身の血液循環自体が、手術操作や視野の邪魔になる場合、完全に循環を止めることがあります。

そのままでは生きられないので、患者の体温を20度以下に下げます。これが「超低体温循環停止」です。

ドラマでは、循環停止によってPVO解除を行っていましたが、それにしては、手術室が閑散としていました。

超低体温循環停止をやるような時は、麻酔科医や臨床工学技士などが大勢取り囲んで、緊迫してるはずなのに。

患者の頭の周囲に何も無いのも変。循環停止では、脳障害を防ぐために、保冷材で頭部を冷やすのが普通です。

そんな中、PVO解除がうまくいかず、「これ以上続けたらDOTもあり得ます」という言葉が飛び出します。 

「DOT」とは “Death on Table”の略で、日本語で「台上死」、つまり手術台の上で亡くなるという意味です。

そのイヤな雰囲気の絶体絶命のとき、キムタクが助け船を出すのですが、その手術風景も異様。

拡大鏡を固定するヒモが、術衣の胸の前に垂れ下がり、まあ不潔きわまりない。これでは術後感染必発ですよ。

おまけに、奇跡的に救命できたその晩に、執刀医の女医は早々と帰宅してごちそうを作ってる! はぁ?

循環停止したこの重症例では、術後経過も厳しいはず。執刀医がそんなに早く帰宅できるとは思えません。

リアリティーが無いなと思って見ていたら、TEVARの術後患者が急変し「右鎖骨下動脈起始異常」が発覚。

どうしてそんな、マニアックなカードを切るかなあ。これじゃあ、来週も観たくなってしまいます。