お医者さんがいっぱい

昔ほどじゃあないけれど、頼りになるのが医師会です。

なにしろ面倒見がいいし、保証も充実それが医師会。

あんた医師かい?、じゃあ医師会。

「あー、先生。すみません、ちょっとその、趣旨には賛同しますけど、文章がちょっと、ふざけてません?」

「面白いでしょ」

「ええ、面白いです。むしろ、すごく面白いです。ただ、ご年配の先生方に叱られるかと」

「ご年配って。じゃあ、若い先生方はどうだろ」

「バカ受けでしょう」

「じゃあ、いいじゃない」

「あー、いや、良くないですよ。長老の方々が当会を牛耳ってるんです。政治力、あるんです」

「第1回日本医師会文学賞」を受賞したのは良いのだが、おかげで機関誌に医師会のキャッチフレーズを書けと頼まれてしまった。それで仕方なく書いたのが、冒頭の文章だ。

「ともかく、いちど理事会に諮ってみたらどう?」

私がそんな意地悪を言ったものだから、事務局のタグチ君は、しぶしぶ理事会に持ち込んだらしい。

そしたら「昔ほどじゃあないけれど、というのが、スカン」という意見が多かったようだ。

三行目のダジャレは、むしろ好意的に受け入れられたという。なんだ、重鎮の方々もユーモアあるじゃん。

医師会長の大英断で、私の原文がそのまま機関誌に掲載された。しかも、大好評。ほらね。

親しみが持てるとか、一般の方にもアピールしやすいとか、ともかく、反対意見がほとんどなかったとか。

そしたらやっぱり、タグチ君が来た。

「先生、すみません。先生が正しかったです。バカ受けです。もう、先生すごいです」

「じゃあさ」と私は切り出した。「『日本医師会雑誌』という機関誌の名称も、この際、変えたらどう?」

「あ、いや、それはどうかと」

「どうして?」

「まあその、歴史といいますか、伝統といいますか。機関誌名を変更する必然性もないですし」

「そんなことないよ。正式名称はそのままでも、ほら、愛称を付けてもいいんじゃないの?」

「愛称ですか」

「国民にウケるよ。それっていまどき大事でしょ?」

「親しみのある愛称は、たしかにいいかもしれませんけどね。先生もう何か、アイデアあるんですか?」

「わかる?」

「え、マジですか。あるんですか。じゃあ、いちおう聞かせてくれますか?」

「お医者さん」

「えー?」

「が」

「が?」

「いっぱい」

「はあ?」

「お医者さんがいっぱい、どう?」

「お医者さんがいっぱい、どう?、って言われましても、まるで絵本のタイトルじゃないですか」

「あ、ほんとだ。たしかに。となると、もう使われてるかもなぁ。あとでググっとこう」

「いや、そういう問題じゃなくて、なんていうか、その」

「幼稚?」

「そう!。じゃなくて、子どもっぽいですよ」

「同じじゃん。でもね、タグチ君。それぐらいに飛躍しないと、愛称の意味ないっしょう」

「すみません、ちょっとしたダジャレなんでしょう?。先生、私もう、余裕ないです」(★)

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長々と、ヘンテコリンな文章を、すみません。

今朝見た夢をだいぶデフォルメして、物語にしてみました。続きはありません。★のとこで目覚めたので。