大病院指向の人の中には、通常の大病院・基幹病院には飽き足らず、大学病院の受診を希望する方がいます。
もちろん、最高度の医療が必要なときは、大学病院(特定機能病院)がいちばん頼りになるかもしれません。
さてここからは、私の個人的な、了見の狭い考えと経験に基づく意見ですので、ご了承ください。
大学病院の医師からみると、外来診療は決してメインの仕事ではありません。むしろ面倒なやっつけ仕事です。
自分の研究テーマや専門分野を、どんどん掘り下げて探究したい、というのが大学病院の医師の願いです。
興味のない分野が混在する診療には、あまりエネルギーをつぎ込みたくないのです。なにしろ時間が惜しい。
私が大学病院にいた時期には、さいわい、外来診療を受け持つことは多くはありませんでした。
しかしたまに、人手不足の時などにかり出されました。いちばんイヤでたまらない仕事でした。
朝から実験しようと準備していたとき、今日は外来を担当するようにと頼まれると、予定が丸つぶれです。
時間を奪われ、体力まで消耗することがわかっているので、もう、外来に出ていく前から、意気消沈です。
そんな気分で診療に当たっている、私の診察を受ける患者さんも悲劇です。いま思えば、申し訳ない話です。
だからこそ言いたいのです。軽い病状やごくありふれた疾患で、大学病院の外来を受診してはならないと。
そんな私が、いまは真逆の外来診療専従です。毎日毎日、多くの患者さんと会話を交わして時間を過ごします。
いつもの患者さんの、表情や口調や歩き方のかすかな違いに、何か異変を見い出そうと診療をしています。
これは地域に根ざした「町医者」にしかできない特技です。
昨今、「かかりつけ医」の存在が重要視されていますが、そんなことは昔から当たり前の話なのです。