聴診器

診察でいつも使っている聴診器が壊れました。しかも修理不能。聴診器って、意外と壊れやすい構造なのです。

壊れる場所は、いつも決まっています。両耳から降りてきたチューブが合流する三叉路の手前の部分です。

適度な力で耳にはまるように、その部分には板バネが仕込まれています。そのバネの金属が、折れるのです。

いわゆる「金属疲労」です。働かせすぎたせいなので「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-721.html" target="_blank" title="勤続疲労">勤続疲労</a>」とも言えます(また言ってしまった)。

聴診器でいちばん大事なのは、もちろん先端のチェストピース部分。あとはただのチューブです。

ところが、そのチューブ内に組み込まれて適度な弾力を与えている金属(内バネ)が、真っ先に破損します。

最重要部分には何の問題もないのに、その聴診器は使えなくなり、廃棄せざるを得ません。

これって、聴診器メーカーの謀略ではなかろうかと、いつも思います。

医師が通常使っている、いちばんポピュラーな聴診器は、「リットマン」と呼ばれる構造のものです。

リットマンにもピンからキリまでありますが、学生時代も研修医時代も今も、私はリットマンを使っています。

しかし1997年から約10年間、HP製の「ラパポート」型聴診器にハマった時期があります。

リットマンよりも古風で、重くて、精密で、マニアックな雰囲気があったからです。

というよりも、テレビドラマ「ER緊急救命室」に出てくる医師たちのHP製聴診器が、格好良く見えたのです。

HPの聴診器は外バネなので、破損はしにくいのですが、なぜかだんだん聴こえが悪くなってきます。

学生時代に、内科の某教授が使っていたのは、さらにクラシカルな聴診器でした。

チェストピースはおそらく象牙で、そこから異様に長いゴム管が2本伸び、その先を両耳に差し込みます。

2本のゴム管をつなぐバネがないので、おそらく最も破損しにくい聴診器と、言えなくもありません。

マイクロホン付き聴診器は、今はまだ邪道のようなものですが、性能も使い勝手もどんどんよくなるでしょう。

手に持つのはチェストピースだけ。耳にはBluetoothのイヤホン。そんな聴診スタイルになるかもしれません。