生前退位の違和感

天皇陛下が、「生前退位」に関連したお言葉を述べられました。

今日はその、天皇陛下のことではなく、一般用語としての「生前」について考えてみました。

「生後」と言えば、「生後間もない赤子」のように、生まれた後、という意味です。

ところが「生前」は、生まれる前、ではなく、生きている間、あるいはむしろ死ぬ前のことを指します。

「生前」とは、仏教用語で「往生」前のことを指すようです。死んで仏に生まれ変わる前、という意味です。

辞書を引いてみると、

大辞林:死んだ人がまだ生きていたとき。存命中。死ぬ前。

デジタル大辞泉:その人が生きていたとき。死ぬ前。在世中。

日本国語大辞典:生きていた時。死ぬ前。在世中。

仏教語大辞典:(1)すでに死んだ人の、生きていた間。(2)一生の間。生涯。

いずれも、死んだ後になってから、その人の存命中のことを指すような使い方です。

だから、生きている人に対して「生前」を使うことに、私は違和感を感じるのでしょう。

しいて言うなら、迫る死を意識し始めた(まだ生きている)時期、という解釈を付け加えたい気がします。

天皇陛下の「生前退位」における「生前」には、そのような意味を感じます。