ホッチキス

生垣の剪定作業後に、汗を流そうと浴室に行ったら、そこはサウナ状態。浴室乾燥機が作動中でした。

かまわずシャワーを浴びたら、よけい汗が出ました。浴室に干してあった洗濯物がどうなったかは知りません。

その浴室乾燥機なんですけどね。メーカーは「MAX」。あの、ホッチキスを作っている会社です。

調べてみたら元々は、戦時中に零式戦闘機の尾翼部品メーカーとして発足した会社とか。幅広いですね。

ホッチキスの歴史だとか、名称についての話も面白いのですが、どうせ受け売りになるので割愛します。

小学生の頃、ホッチキスで綴じてある書類を初めて目にして、上手くできているものだと感心したものです。

表にはスッと直線状の、裏にはカーブの付いた2つの金属片が、顔を出しています。

そのカーブのおかげで、針の先が紙に埋まる方向に向くので、手を傷つけたりすることがないわけです。

ある晩のこと。わが家にもついに、その斬新な事務用品がやって来ました。昭和40年代前半でしょうか。

針が出るところに触ると危ないよ、と親から注意を受けましたが、そう言われると、よけいに興味が湧きます。

よく見ると、針が出てきそうな穴がありますが、どのように針が飛び出してくるのか、その仕組みを知りたい。

もしもその、針の出口と思われる部分を、指で押したら、何が起きるのか。

その好奇心についに勝てず、親指でグイッと押し込んだら、針が根元まで、指に突き刺さったのでした。

とても痛かった。痛かったのですが、その痛みよりも勝ったのが、針の状態への興味でした。

指に突き刺さった針を、おそるおそる抜いてみると、その先端は真っ直ぐなのです。曲がってないのです。

「そうか、針は真っ直ぐに出てきて、紙を突き抜けた後で、反対側の溝にぶつかってクルッと曲がるんだ」

メカ好きの少年としては、大いに満足したのでした。身をもって知るというのは、こういうことでしょう。