キクラゲ

NHKの番組「うまいッ!」が、今朝とり上げていたのは、鹿児島・沖永良部島の「キクラゲ」。

好きでも嫌いでもない食材ですが、それは私が、美味しい生キクラゲを食べたことがないからかもしれません。

しかしその当て字「木耳」は、以前から気になっています。まあ、耳(耳介)の形に似てるからでしょうけど。

キクラゲの学名は、Auricularia auriculaです。 “auricle” とは、医学用語で「耳介」つまり耳の意味です。

英語では “Jew's Ear”(ユダの耳)というそうですね。由来は省略。

いずれにしても、キクラゲが耳に似ていることは、世界の誰もが認めていると考えてもよさそうです。

ところが、辞書で「木耳」を引くと面白い。意味は大きく2つ。

(1)キクラゲ。形が人の耳に似ているから。

(2)人の耳。形がキクラゲに似ているから。

いや、おかしいでしょう。

キクラゲが人の耳に似ているから木耳と書き、そのキクラゲに似ているから木耳は人の耳の意味だと。

これじゃあ、卵が先かニワトリが先か、みたいな堂々巡りです。

辞書には(2)の用例として、坪内逍遙の「小説神髄」の、次のような一節があげられています。

「其所見を著者の木耳に聞かしめたまわば」

う〜ん。耳の意味で「木耳」と書くのは、どうも違和感がありますね。しかしこれを「キクラゲ」と書くと、

「其所見を著者のキクラゲに聞かしめたまわば」

ああ、面白い。しっくりくる。つまり(2)の意味では、「キクラゲ」とカナで書くべきなのです。

さらに言えば、馬と木馬とか、刀と木刀のような違いを、耳と木耳にも感じます。なので(2)は、

(2)人の耳。形がキクラゲに似ているから。しばしば、役に立たない飾りの意味で用いる。用例としては、

「てめえら、キクラゲの穴ぁかっぽじって、よーく聞きやがれ」