肝心か、肝腎か

「心臓外科」「脳外科」「肝臓外科」と並べてみると、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1302.html" target="_blank" title="テレビドラマ">テレビドラマ</a>で描きやすいのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-225.html" target="_blank" title="心臓外科">心臓外科</a>でしょう。

なにしろ心臓は、「見た目」に動く臓器なので、手術が成功したシーンを表現しやすいですしね。

しかし、術後に心拍動が再開したからと言って、それは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1248.html" target="_blank" title="術後経過">術後経過</a>の初期段階の、そのまた入口に過ぎません。

問題はその後、安定して力強く拍動し続けてくれるかですが、まあそのことは、今回はあまり言いません。

考えてみると心臓は、血液を全身に送り出してるだけなのに、人体の最重要臓器のような顔をしています。

それはそれで重要だし、心臓にはほかの働きもあるのですが、ほかと比べれば比較的シンプルな臓器です。

最も複雑で高度な臓器は脳でしょう。ただ映像的に、脳外科の手術シーンは、ドラマで描きにくいのが難点。

心配したり、心が躍ったり、心を痛めたりしますが、心臓は脳のように思考する場所ではありません。

なのに「心」が心臓に宿ると感じるのは、感情の起伏が自律神経を介して、心拍動に影響するからでしょうね。

その結果、心臓がドキッと(動悸が)したりして、心臓の動きと心の動きが、リンクして感じるわけです。

「肝心」という言葉は「肝腎」とも書きます。それから考えると、心臓と腎臓は置き換え可能な立場です。

「肝心」と「肝腎」に共通する肝臓こそが、心臓や腎臓よりも格上と、位置づけられていたのかもしれません。

古来より、肝臓は人間の感情の根源と考えられています。英語の “liver” は生命 “life” と同語源だとか。

それだけ重要だからでしょうか、肝臓は、他の臓器にはない「再生力」を与えられています。

肝臓だけは、いくら切除しても、まるでプラナリアのように、元通りの大きさに戻ります。

ギリシャ神話の「プロメテウス」は、火を盗んだために、鷲に肝臓を食べられるという罰を与えられました。

しかし翌日には肝臓が再生するものだから、毎日毎日、三万年間食べられ続けたという、まあ気の長い話です。

ギリシャ神話が作られた昔から、肝臓の驚異的な再生能力が知られていた、ということにも驚きます。