小学校6年生の時、担任の先生に読書感想文を褒められたことがあります。しかも、クラス全員の前で。
名探偵ホームズの、どれかの話でした。当時私は、読書感想文が得意だったのです。
でも本当は、褒められた話ではありません。なぜなら、コツを知っていたからです、先生が喜ぶような。
遠藤周作の『海と毒薬』を読んだのは、学生時代ですが、自分の内面を見透かされたようで、ショックでした。
先生が「悦ぶ」ような文章を意図的に書き、クラス全員の前で褒められる、いやな少年が登場したからです。
よく知られているようにこの小説は、いわゆる『九大生体解剖事件』にヒントを得て書かれたものです。
しかし、取材メモはすべて捨て、改めてフィクションを書いたのだと、後に遠藤周作は言っています。
フィクションだからこそ逆に、登場人物の描き方が実に深く、彼らの気持ちが「よくわかる」のです。
一方で、実際の事件は、実行した教授と同門なので私も無縁ではなく、いつか研究してみたいテーマです。
当事者のうちで、ただ一人ご存命の東野利夫先生(産婦人科開業医)には、以前、家族がお世話になりました。
事件を題材にしたノンフィクションで有名な、上坂冬子氏の本を読むのなら、東野氏の著作も読むべきです。
さらに関係者の親族による近著も、身内が書いたというバイアスを考慮しながら、読んでみるべきでしょう。
そんなわけで、数年来の私の課題は、九大生体解剖事件の全容解明(把握)なのですが、なかなか進みません。
とりあえず、研究題材(東野、上坂、熊野の著書と、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-504.html" target="_blank" title="九大第一外科">九大第一外科</a>の関連資料)を、読み進めている途中です。
あるいはフィクションではあっても、遠藤周作も読み直す必要があるでしょう。何か意味があるはずです。
いつかそれらの感想文(私の思うところ)を、まとめてみたいと思います。