「あらためて調べ直してみたら、効果が無かったので、販売は中止します」
臨床現場で長年使われてきた薬が、なんのことはない、毒にも薬にもならなかったことが判明した話です。
今週、販売中止が決定したのは、「リゾチーム」と「プロナーゼ」。「消炎酵素剤」という種類の医薬品です。
慢性副鼻腔炎や気管支炎や捻挫の腫れに用いられる薬ですが、風邪薬としても、昔からよく使われてきました。
たしかに消炎酵素剤は、効果は強くないけど副作用も少なそう、的なポジションだったかもしれません。
しかし、何十年も使い続けてきたのに、いまさら「効果ナシ」とは、なんじゃそりゃ、です。
じつは「リゾチーム」と「プロナーゼ」には、先輩格の薬があります。「セラペプターゼ」です。
セラペプターゼは5年前に販売が中止されました。調べてみたら効果が無いことが判明したからです。
薬の効果の有無は、「プラセボ(偽薬)」との比較で、統計学的に有意な有効性があるかどうかで判定します。
つまり簡単に言うなら、セラペプターゼの有効性はメリケン粉と同程度だった、というわけです。
そのことが判明した結果、同じ消炎酵素剤であるリゾチームとプロナーゼにも、疑いの目が向けられました。
そして数年間の確認試験の結果、リゾチームもプロナーゼもメリケン粉と同じだったと、そういうことです。
たいていの風邪は、休養と水分・栄養補給によって、数日の内に治っていきます。
処方された消炎酵素剤が効いたように見えたのは、「プラセボ効果」ですらなく、自然経過だったのでしょう。
この数十年の間に、消炎酵素剤よりもよく効く(効果がはっきりした)医薬品が、たくさん登場しました。
消炎酵素剤のような、ボンヤリとした薬は、もう役目を終えたと言うべきなのかもしれません。