過払い金の返還額

「過払い金」返還についてのテレビCMを、最近よく目にしますね。とくにアディーレ法律事務所。

「おひとりあたり平均160万円」という回収実績を謳っていますが、過払い金の平均値って何でしょう。

正規分布に従うはずもない過払い金を<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-17.html" target="_blank" title="単純平均">単純平均</a>しても、何の情報にもならないどころか、誤解を招くだけです。

たとえば、こういうことです。過払い金返還の対象者が10人、回収額が平均160万円とします。

1人が突出して1,510万円、他の9人が10万円ずつ、合計1600万円、という場合でも、1人平均160万円です。

このように、金額の平均値というのは、とびぬけて巨額な事例によって、大きく上ぶれしてしまうのです。

アディーレ法律事務所は、その錯覚を利用して、返還金額を大きく見せようとしているような気がします。

確認のためアディーレのサイトを見ると、「過払い金事例紹介」として、6つのケースが挙げられていました。

その6つの事例の返還額はそれぞれ、60、396、430、98、92、246万円、平均220万円です。

これまた、返還額を大きく見せる事例ばかりを並べた印象があります。

「過払い金回収実績」を見ると、2つの数値が記載してありました。

過去全ての回収金額は、285,222件で1,614億324万円。平均額は約56万円。160万円には遠く及びません。

最近1カ月間の回収金額は、4,978件で31億165万円。これでも平均で約62万円。

テレビCMでいう「160万円」の根拠を探すと、「2014年1月~12月当事務所実績より算出」とあります。

つまり過去全体の実績でもなければ、最近の実績でもない、ちょっと古い実績を前面に出しているようです。

たぶんその頃の実績が、いちばん良かったのでしょう。そう考えてしまうので、余計うさん臭く感じるのです。

水痘が減り帯状疱疹が増える

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1126.html" target="_blank" title="水痘ワクチン">水痘ワクチン</a>の定期接種が始まって1年半たちましたが、水ぼうそうの子どもが、すっかり減りましたね。

当院で水痘と診断した人数は、定期接種開始前の1年間の60人に対し、最近1年間は18人と、まさに激減です。

その水痘ワクチンに、「50歳以上の帯状疱疹の予防」という効能・効果が、今月18日から追加されました。

もともと、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1373.html" target="_blank" title="帯状疱疹">帯状疱疹</a>の予防に有効だとわかってはいたのですが、ようやくそれが正式に認められたわけです。

どうしてこのタイミングなのかと言えば、逆説的な理由ですが、水痘患者が減ってきたからです。

では「水痘が減ると帯状疱疹が増える」という、風が吹けば桶屋が儲かる的な図式を、見ていきましょう。

帯状疱疹は、過去に水痘に罹った人の神経内にずっと潜んでいた水痘ウイルスが、不意に暴れ出す病気です。

水痘ウイルスが、日頃は体内で大人しくしているのは、体の免疫力がその活動を抑え込んでいるから。

だんだんと免疫が低下すると、いつかウイルスが暴れ出すので、ときどき免疫を強めてやる必要があります。

免疫を強めるためには、ときどき外部からのウイルスに触れて、免疫を活性化するのが有効です。

ほんの2年前までは、毎年100万人が罹患するほど、水痘はありきたりの病気でした。

そこら中に水痘の子どもがいたので、水痘の免疫は自然に活性化され、維持されてきました。

ところが、水痘ワクチンの定期接種化によって患者が激減すると、免疫をなかなか維持できなくなってきます。

つまり、「水痘が減ると帯状疱疹が増える」というわけです。

最終的に、水痘罹患歴のある者が世の中からいなくなれば、帯状疱疹の心配もなくなるでしょう。

しかし今はまだ過渡期。新たな水痘患者は減っても、水痘罹患歴のある人はたくさんいます。

帯状疱疹の心配は、むしろこれから増えるのです。だから中高年の方はワクチンを打ちましょう、というわけ。

iPhone SE発売

次期iPhone(iPhone 7)は待ち遠しいですが、明後日発売されるiPhone SEには、あまり興味が湧きません。

5.5インチのディスプレイに慣れてしまい、もはや4インチでは満足できないカラダになってしまったのです。

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1612.html" target="_blank" title="iPhoneロック解除">iPhoneロック解除</a>」問題は、ついにFBIが、Appleの助けなしに、ロック解除に成功したと報じられました。

先週FBIは「独自に解除できる」と言い始めていましたが、どうやら強がりではなく、根拠はあったようです。

Appleは、最後までFBIに協力しなかったことで、プライバシー保護を最優先とする姿勢を貫きました。

FBIは、自力でロック解除に成功することで、テロリストに対する断固たる態度を示しました。

つまり、AppleもFBIも、どちらも満足できる結果に終わったわけで、少々話がうますぎる感じもします。

どうもこの件は、そう単純ではなく、私は3つの可能性を考えます。

(1)FBIに協力する第3者(セキュリティーの専門家、またはハッカー)が、FBIにロック解法を教えた

(2)Appleが、FBIにその方法をこっそり明かした(つまり、出来レース)

(3)Appleが、第3者を介して、FBIにその方法をリークした(Appleが協力したことは、FBIも知らない)

このたびのロック解除は、テロ容疑者が所有していたiPhone 5cに対するものです。

これがiPhone 5s以上だと、CPUに「Secure Enclave」が実装されているため、ロック解除は不可能。

そこに登場したのが、iPhone 5のサイズに最新のCPUとセキュリティーを備えた、iPhone SEというわけ。

今回の一件は、iPhone 5cからiPhone SEへの買い換えを促す、ちょうど良い機会だったとも考えられます。

肝心か、肝腎か

「心臓外科」「脳外科」「肝臓外科」と並べてみると、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1302.html" target="_blank" title="テレビドラマ">テレビドラマ</a>で描きやすいのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-225.html" target="_blank" title="心臓外科">心臓外科</a>でしょう。

なにしろ心臓は、「見た目」に動く臓器なので、手術が成功したシーンを表現しやすいですしね。

しかし、術後に心拍動が再開したからと言って、それは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1248.html" target="_blank" title="術後経過">術後経過</a>の初期段階の、そのまた入口に過ぎません。

問題はその後、安定して力強く拍動し続けてくれるかですが、まあそのことは、今回はあまり言いません。

考えてみると心臓は、血液を全身に送り出してるだけなのに、人体の最重要臓器のような顔をしています。

それはそれで重要だし、心臓にはほかの働きもあるのですが、ほかと比べれば比較的シンプルな臓器です。

最も複雑で高度な臓器は脳でしょう。ただ映像的に、脳外科の手術シーンは、ドラマで描きにくいのが難点。

心配したり、心が躍ったり、心を痛めたりしますが、心臓は脳のように思考する場所ではありません。

なのに「心」が心臓に宿ると感じるのは、感情の起伏が自律神経を介して、心拍動に影響するからでしょうね。

その結果、心臓がドキッと(動悸が)したりして、心臓の動きと心の動きが、リンクして感じるわけです。

「肝心」という言葉は「肝腎」とも書きます。それから考えると、心臓と腎臓は置き換え可能な立場です。

「肝心」と「肝腎」に共通する肝臓こそが、心臓や腎臓よりも格上と、位置づけられていたのかもしれません。

古来より、肝臓は人間の感情の根源と考えられています。英語の “liver” は生命 “life” と同語源だとか。

それだけ重要だからでしょうか、肝臓は、他の臓器にはない「再生力」を与えられています。

肝臓だけは、いくら切除しても、まるでプラナリアのように、元通りの大きさに戻ります。

ギリシャ神話の「プロメテウス」は、火を盗んだために、鷲に肝臓を食べられるという罰を与えられました。

しかし翌日には肝臓が再生するものだから、毎日毎日、三万年間食べられ続けたという、まあ気の長い話です。

ギリシャ神話が作られた昔から、肝臓の驚異的な再生能力が知られていた、ということにも驚きます。

病気とニュース映像

国内4例目の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1594.html" title="ジカ熱">ジカ熱</a>感染患者の女性は、さいわい、症状も回復しているとのこと。

しかし今後、南米からの帰国者が日本にジカ熱を持ち込むケースは、ますます増えてくるでしょう。

夏場に入り、蚊がとぶ季節になれば、二次感染の恐れも出てきます。

ジカ熱で怖いのは、感染した妊婦から生まれる赤ちゃんの「小頭症」です。

そんな赤ちゃんの映像を、ときどきテレビで見かけますが、インパクトがありますね。

「ジカワクチン」ができたら、すぐ接種したくなります。

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1186.html" target="_blank" title="HPVワクチン">HPVワクチン</a>(子宮頸がん予防ワクチン)」の副反応とおぼしき女性の映像。あれも衝撃的でした。

報道ステーションが、何度も何度も、あの映像を放送しました。誰の目にも、悲惨な病状に映ります。

しかしこのような、医学的因果関係が明確ではないのに、映像のインパクトで問題提起するのは疑問です。

百歩譲って、この女性の病状の原因がワクチンだとしても、あのように一方的に提示するのはフェアじゃない。

それならば、子宮頸がんの罹患率や死亡数などのデータについても、よくわかるように報じるべきです。

さらに、子宮頸がんの手術シーンとか、摘出臓器の画像さえも、ニュース番組で放送したっていいと思います。

副作用を問題にするのなら、そのワクチンで防ごうとしている病気の悲惨さも、同時に伝えるべきだからです。

医療費助成、中3まで?

「子ども医療費助成 付帯決議案可決」

「子ども医療費助成拡大 見送り」

この2つの見出しの記事が、同じ内容を報じているので、ちょっと戸惑いますが、先週の熊本市議会の話です。

子どもの医療には、その対象年齢や金額は自治体によって異なりますが、医療費に助成があります。

熊本市では、対象者が診療を受ける際には「子ども医療費受給資格者証(ひまわりカード)」を提示します。

これによって、医療機関の窓口で支払う自己負担は現在のところ、

(1)3歳未満のお子さんは、自己負担なし

(2)3歳以上小学3年生まで(9歳到達後の3月末日まで)は、1医療機関につき1カ月あたり500円

この対象年齢を中3まで拡大します、というのが、大西一史市長の選挙公約の一つでした。

(2−2)3歳以上中学3年生までは、1医療機関につき1カ月あたり1000円の自己負担

やたらに助成を増やすと過剰医療にならないか、という危惧もありますが、問題は別のところにありました。

つまり、従来の(2)の対象者については、自己負担額が500円から1000円に増額されてしまうということ。

このことなどを問題視して、助成制度の内容を再考するように市側に求めたのが「付帯決議」です。

少子化対策のひとつとしても、小児医療費助成の拡充は意味があるかもしれませんが、単純ではないのです。

現行制度でも、すでに過剰医療気味な側面は感じます。対象を拡充すれば良いというものではありません。

必要な医療には十分に助成し、不要な医療には自己負担を課す。そんな細やかな制度になればいいのですが。

人工知能が書いた小説

人工知能(AI)が創り出した小説が、第3回「日経 星新一賞」の一次審査をパスしたと、話題になってます。

「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の作品。さっそく、応募作のうち2つを読んでみました。

『私の仕事は』は、意外と面白かった。ありがちな設定なので陳腐化しやすく、何度も使えないでしょうけど。

『コンピュータが小説を書く日』はしかし、ちっとも面白くなかった。いや、負け惜しみじゃなくて。

「星新一賞」といえば、私もその第1回に応募しました。そして敗退した顛末は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-908.html" target="_blank" title="前にも書いた">前にも書いた</a>通りです。

その後、賞の企画者らの内部対立が判明し、嫌気が差したので第2回以降には応募していません。

先日は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1622.html" target="_blank" title="AIが囲碁のプロ棋士に圧勝">AIが囲碁のプロ棋士に圧勝</a>したことが話題になりましたが、小説の場合と共通点がありそうです。

つまり、AIは「総当たり」計算をするのではなく、「創造」をする段階に入った、ということです。

これまでのAIは、膨大な計算を、超高速で処理し、解決策を見つける、いわば「力業」型の知能でした。

これからのAIは、膨大な情報を、山ほど学習して、経験を積んでいく、いわば「応用」型の知能です。

情報を与え、学習させ、経験を積ませ、あとは成長するのを待つ。まるで人間と同じ。

これが本来の人工知能であり、やがて応用力も想像力も創造力も発揮するようになるのでしょう。

ちなみに星新一賞のグランプリは、『ローンチ・フリー』が受賞しました。著者は佐藤実氏。

「宇宙エレベーター」に関する著作などがある、東海大理学部の先生だそうです。実在人物、のはずです。

読書感想文

小学校6年生の時、担任の先生に読書感想文を褒められたことがあります。しかも、クラス全員の前で。

名探偵ホームズの、どれかの話でした。当時私は、読書感想文が得意だったのです。

でも本当は、褒められた話ではありません。なぜなら、コツを知っていたからです、先生が喜ぶような。

遠藤周作の『海と毒薬』を読んだのは、学生時代ですが、自分の内面を見透かされたようで、ショックでした。

先生が「悦ぶ」ような文章を意図的に書き、クラス全員の前で褒められる、いやな少年が登場したからです。

よく知られているようにこの小説は、いわゆる『九大生体解剖事件』にヒントを得て書かれたものです。

しかし、取材メモはすべて捨て、改めてフィクションを書いたのだと、後に遠藤周作は言っています。

フィクションだからこそ逆に、登場人物の描き方が実に深く、彼らの気持ちが「よくわかる」のです。

一方で、実際の事件は、実行した教授と同門なので私も無縁ではなく、いつか研究してみたいテーマです。

当事者のうちで、ただ一人ご存命の東野利夫先生(産婦人科開業医)には、以前、家族がお世話になりました。

事件を題材にしたノンフィクションで有名な、上坂冬子氏の本を読むのなら、東野氏の著作も読むべきです。

さらに関係者の親族による近著も、身内が書いたというバイアスを考慮しながら、読んでみるべきでしょう。

そんなわけで、数年来の私の課題は、九大生体解剖事件の全容解明(把握)なのですが、なかなか進みません。

とりあえず、研究題材(東野、上坂、熊野の著書と、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-504.html" target="_blank" title="九大第一外科">九大第一外科</a>の関連資料)を、読み進めている途中です。

あるいはフィクションではあっても、遠藤周作も読み直す必要があるでしょう。何か意味があるはずです。

いつかそれらの感想文(私の思うところ)を、まとめてみたいと思います。

ナイト・シフト

昨日、iOS 9.3がリリースされたので、さっそくiPhoneにインストールしました。

新バージョンにありがちな想定外の不具合など恐れず、進んで人柱になるのが、Apple信者なのです。

その新機能をひとつ挙げるなら、「Night Shift(ナイト・シフト)」モードの導入でしょうか。

夜になると(標準では日没時から)、画面の色合いが全体的に暖色系になるという、ただそれだけの機能です。

何時から何時まで作動するかとか、色合いの強さなどは、自分で設定できます。

どうでもいいと言えばどうでもいい機能ですが、暗い寝室で見る時などには、目に優しいかもしれません。

それで思ったのですが、室内の照明そのものが、昼と夜とで色合いを変えてくれると面白くないですか。

わが家のリビングなどの共用スペースは、主としてやや暖色系の蛍光灯や電球を配置しています。

ハウスメーカーのお奨めで、家庭の暖かみを演出できるということなのです。

たしかに、夜に仕事から帰って来て屋外からわが家を見ると、暖色系の窓の明かりは穏やかで、ほっとします。

しかし、夕暮れ時や曇りの日には、暖色系では室内の明るさが足りません。もっとビシッと照らして欲しい。

こういうとき、時間帯や屋外の明るさに応じて、照明の色合いを自動的に切り替えてくれるといいですよね。

そう、「ナイト・シフト」でね(AppleのCM風)。

ポリオ5回目OKへ

不活化ポリオワクチンの、通算4回を越える接種が、ようやく解禁されました。

これで、3種混合ワクチンの接種漏れをカバーするために、4種混合ワクチンを使えることになりました。

これまでは、3種の回数を4種で満たそうとすれば、ポリオの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1500.html" target="_blank" title="回数オーバー">回数オーバー</a>がネックになっていたのです。

ポリオワクチンの、5回以上の接種が禁止されていたのは、安全性が確認できていないという理由でした。

バカな話です。フランスなんか、5回も6回も接種してますよ。

だいいち、3年半前から日本で使い始めたワクチンは、そのフランス製じゃないですか。

フランスでは、不活化ポリオワクチンを、小児期に5回と、25歳と45歳に1回ずつ接種しています。

さらに、65歳以上では10年に1回追加接種をし続けるので、生涯に10回以上接種することもあり得ます。

ではなぜ、いまになって日本で通算接種回数の上限が撤廃されたのでしょう。

今年2月に更新された、厚労省の「ポリオワクチンに関するQ&A」によると、理由が2つ書いてあります。

(1)通常の市場での3種混合ワクチンの販売が終了していて、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1160.html" target="_blank" title="入手困難">入手困難</a>であるから

(2)4回を超える不活化ポリオワクチン接種後の、有効性及び安全性が確認されたから

実際上は(1)です。すでに3種混合ワクチンは存在しません。そのようにしたのは厚労省です。

ところが、3種混合ワクチンの接種漏れが思いのほか多く、厚労省は(2)と言うしかなくなったのです。

このような混乱は、不活化ポリオワクチンと4種混合ワクチンの、導入開始時期のズレが原因でしょう。

ポリオワクチンだけ先行させたものだから、ポリオワクチンの接種が先に満了してしまったのです。

少し考えたら、そうなることはわかっていたのに、国は先が読めず、対応は後手後手で、見苦しい結末でした。