MRワクチン足りるのか

北里第一三共の「麻しん/風しん混合(MR)ワクチン」は、有効性に疑問が生じ、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1490.html" target="_blank" title="出荷停止">出荷停止</a>が続いています。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1557.html" target="_blank" title="化血研問題">化血研問題</a>の陰に隠れてしまいましたが、ワクチン業界ではいま、ジワジワと広がっている問題です。

生ワクチンは、保存期間中に効力(=生物学的作用、これを「力価」といいます)が徐々に低下していきます。

有効期間が18カ月とされているこのワクチンは、製造18カ月後の力価が基準を満たしている必要があります。

ところが昨年、その定期検査によって、麻しんの力価が基準を下回っていたロットがあることが判明しました。

力価はFFUという単位で表しますが、厚労省の承認規格である5,000FFUに対し、最低のものは1,900FFU。

これはマズイというわけで、メーカーは昨年10月末、自主回収に踏み切り、新規の出荷もされていません。

となると、問題は2つです。

(1)MRワクチンの供給が不足して、必要な対象者に接種ができなくなる可能性

(2)すでに北里のワクチンを接種した人は、十分な免疫が付いたのかという心配

MRワクチンの定期接種対象は、1歳児(1期)と年長児(2期)です。

当院の昨年の実績では、3月の接種者数が最多でした。2期のお子さんの駆け込み接種が多いからです。

北里以外のメーカーのワクチンだけで、はたして足りるのか、まさに来月が山場です。

化血研問題では、ワクチンの効力はOKだったので、供給が不足したワクチンは特別に<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1558.html" target="_blank" title="出荷が認められました">出荷が認められました</a>。

しかし北里の場合、効力に疑問が生じたゆえの出荷停止なので、やっぱり出荷OKというわけにもいきません。

実は1,900FFUというのは、WHOの基準(1,000FFU)と比べたらまだマシな、十分有効な数値です。

ですが規則を遵守して供給を止めた以上は、メーカーも厚労省も、いまさらどうにもできない状況なのです。

力価が低かった原因が、まだわかっていない北里のワクチン。今後どのように決着するのか、未知数です。

なお、効力の低いワクチンを接種してしまったお子さんに対する、救済措置については、後日また書きます。

気が付けばリボ払い

クレジットカードって、不要なものはドシドシ解約したいところですが、どういうわけか、増える一方です。

とくに最近怖いのは、支払が自動的に「リボ払い」になるカードが増えていることでしょう。

加入時に、特別に指定しなければ、リボ払いが基本設定になるような契約が多いです。

そのような契約だと、商品購入時に一括支払いと言っても、ダメです。自動的にリボ払いです。

少額で月々返済する形なので、返済期間はいくらでも長引き、利息の負担ばかりが続くというトラップです。

最近加入した、東宝シネマイレージにも、加入時に「リボ宣言」をするかどうか、決断を迫られました。

この宣言をしておくと、利用分がすべて自動で「リボ」になるというわけです。これによって、

(1)リボ払いのメリット:買いすぎたときでも、毎月の支払金額は一定なので安心

(2)リボ宣言のメリット:買い物の後からリボ払いに変更する必要が無い

というわけですが、裏を返せば、

(1)リボ払いのデメリット:買い物をするたびに借金をすることになり、金利の負担を強いられる

(2)リボ宣言のデメリット:一括払いの積もりで買い物をしても、自動的にリボ払い(借金)になる

カード加入時のデフォルト(標準設定)が、「リボ払い」になるカードには、悪意を感じます。

これではまるで、新手のサラ金です。「リボ」などという軽いノリに、騙されてはいけません。

ま、クレジット払い自体が、すでに借金なんでしょうけどね。

叩く

高熱で腰痛を訴える女性の方で、わりと多いのが急性腎盂腎炎です。尿検査をすると、膿尿や血尿を認めます。

腰の少し上を叩くと、「うっ」と痛みます。これを「肋骨脊柱角叩打痛」とか「腰部叩打痛」といいます。

「叩打痛」は「こうだつう」と読みます。叩くと痛むという意味です。英語では “knock pain” です。

「叩く」と書いて「はたく」とも読むことを、最近知りました。「有り金をはたく」の時はこの字なんですね。

さて、「叩」と言えば「命」です。ゴルゴ松本に言わせるなら、「命」=「人屋根に一叩き」だと。

「母体内にいるときから、トックントックンと、一叩き、一叩きの連続が命なのだ」と。いい話です。

ただし漢和辞典によれば、「命」=「口」+「令」であって、「人」+「一」+「叩」ではないようです。

もちろん<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-324.html" target="_blank" title="前にも書いた">前にも書いた</a>ように、漢字を使った例え話には、学術的正当性など必要ありません。

例え話というのは、聞き手がなるほどと思えるように上手くできていれば、それでいいのです。

「叩」の旁(つくり)の「卩」は、人がひざまずいた姿を表す象形文字とか。今風に書けば「orz」でしょう。

いかにも、頭を叩いてください、てな感じ(漢字)。

しかし私は「卩」を見ると、「布団叩き」か「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1459.html" target="_blank" title="ハエタタキ">ハエタタキ</a>」に見えてしかたがありません。

だから「叩」の字は、「口」でののしりながら「卩」のような形のもので打つ、というのが私のイメージです。

イスカンダルから来熊

「イスカンダルから、熊本の食肉加工場に視察の人々が訪れた」とのニュースを小耳に挟み、少々驚きました。

「イスカンダル」というと、『宇宙戦艦ヤマト』の物語では、放射能汚染された地球を救ってくれた星です。

「放射能除去装置の設計図を取りに来なさい」と言ってくれた人の星です。それがなぜ熊本。しかも食肉。

私が知らなかっただけなのですが、マレーシアの『イスカンダル計画』に関係する人たちでした。

これはシンガポールの対岸に20年かけて、人口300万人の都市を作るという、巨大プロジェクトだそうです。

その地域(ジョホール州)の前の王『イスカンダル王』にちなんで、『イスカンダル計画』です。

では「イスカンダル」とはなんぞや。ご存じの方も多いでしょうが、「アレキサンダー大王」のことですね。

“Aliskandar” の語頭の “al” が定冠詞と勘違いされて “Iskandar” になったと、Wikiにも書いてあります。

このように、言葉の解釈を間違えて新たな単語を作ることを「異分析」といい、とても興味深いテーマです。

たとえば「hamburg(ハンブルグ)+er」が、「ham(ハム)+burger」を経て、「burger」となった例が有名。

イタリア語で<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1367.html" target="_blank" title="柿">柿</a>は「カキ(cachi)」ですが、これが複数形と解釈され、1個なら「カコ(caco)」です。

「ミスド」ならまだしも、「マクド」に至っては、故意に異分析した例でしょう。

「モトカレ(元彼氏)」は通常の短縮語ですが、「モトカノ(元彼女)」は今風の異分析かもしれません。

ちなみにタイトルの「来熊」は、熊本の人にしか読めないかもしれませんが、「らいゆう」です。

溶連菌感染の初期症状

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1524.html" target="_blank" title="溶連菌感染">溶連菌感染</a>が多いことは、昨年末にも書きましたが、全国的に、かなり流行しているようです。

子どもの「風邪」のほとんどは「ウイルス感染」ですが、溶連菌感染は風邪に似ていても「細菌感染」です。

風邪に抗生剤は効きませんが、溶連菌感染には抗生剤が効きます。効くどころか、抗生剤治療が必須です。

したがって、溶連菌感染を疑ったら早めに医療機関を受診して、診断を確定し、治療を始める必要があります。

今朝もテレビで、溶連菌感染の症状や治療法を解説していましたが、人のカラダはそう単純ではありません。

開院して8年4カ月間に、当院で迅速検査によって溶連菌感染と診断した患者さんは1,251人でした。

しかし最近の3カ月間だけで99人なので、今ずいぶん流行していることがわかります。

その経験をふまえて、溶連菌感染の初期症状について誤解のないように、私の印象をまとめてみます。

(1)咽頭痛(のどの痛み)

もっとも頻度の多い症状ですが、痛まない人もいます。乳幼児では、食欲低下やよだれも重要な症状です。

診察すると、軟口蓋(のどちんこの上)が、燃えるように赤く腫れています。もう、血が出そうな印象です。

(2)熱(微熱から高熱まで)

子どもでは微熱が多く、熱が出ない子もいます。一方成人では、ひどい扁桃炎で高熱でぐったりの方が多い。

(3)発疹

腹部や大腿部、ときに足などが、点状の赤い発疹でザラッとしてきます。ただし半数以上は発疹が出ません。

(4)イチゴ舌(舌が赤くなり、イチゴの種のような赤いプツプツができる)

最初はあまり目立ちません。治療の途中ぐらいから、ブツブツしてくることの方が多く、長引きやすいです。

テレビなどの悪いところは、これらの症状を同列に解説するので、誰でも全部の症状が出るように錯覚します。

しかし、全部当てはまる人などいません。たいていは咽頭痛だけです。

ジカ熱と黄熱

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1576.html" target="_blank" title="ジカ熱">ジカ熱</a>」の話題が出て、真っ先に私が思い出したのが「ジカ中毒」。もちろん、まったく別の病気です。

私は小さい頃、よく自家中毒になっていました。きっと、ナイーブな子だったのでしょう。

いま自家中毒は「周期性嘔吐症」と呼ばれ、片頭痛関連疾患と考えられています。

「ジカウイルス」は、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1068.html" target="_blank" title="デングウイルス">デングウイルス</a>」と同じ、「フラビウイルス」というグループに属します。

他にこのグループのウイルスとしては、「日本脳炎ウイルス」や「黄熱ウイルス」があります。

「フラビ」は、ラテン語で黄色を意味する「flavus」に由来しますが、これは黄熱から来ています。

黄熱(黄熱病)といえば、野口英世です。彼は研究の途上、その黄熱に感染して、ガーナで亡くなりました。

読みは「こうねつ」も間違いではありませんが、通常「おうねつ」です。

南米も黄熱の流行地域なので、リオ五輪の際の渡航者は、ジカ熱よりも重症の黄熱にも注意が必要です。

厚労省は、リオ渡航予定者に対して、黄熱ワクチンの接種を受けるよう呼びかけています。

黄熱ワクチンは従来、1回接種すれば、その10日後から10年間、予防効果が続くとされてきました。

しかし最近、1回の接種が生涯有効との考え方に、国際規則が変わりました(今年6月から発効)。

何度も接種しなければならない日本脳炎ワクチンとの違いは、生ワクチンと不活化ワクチンの違いです。

ジカ熱のワクチンの開発は、まだ始まったばかりで、臨床治験まであと18カ月かかると最近報じられました。

一方でデング熱ワクチンは、開発がギリギリ間に合ったようで、もうじきブラジルでも導入されるとのこと。

リオ五輪の時には、多くの日本人が渡航するでしょうから、これらの感染症の「持ち帰り」も心配です。

ウイルスを持ち帰らぬためにも、渡航者は少なくとも、黄熱の予防接種は受けておいてほしいものです。

政治家の謝罪の言葉

丸川珠代環境相は昨日、自身の発言を撤回し、謝罪しました。その際に語った言葉は、

「誤解を招いたとすれば、特に福島をはじめ被災者の皆様に誠に申し訳なく、心からおわび申し上げたい」

だから<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1369.html" target="_blank" title="何度も">何度も</a>言ってますけど、「誤解を招いたとすれば」っていう言い訳がましい前提を、まずやめましょう。

だいたい政治家というのは、ちゃんと謝る気があるのか、真摯な態度が伝わってきません。

元アナウンサーなのに、どうしてそこがわからないのでしょうね。

人が素直に謝罪するならば、「申し訳ありませんでした」とか「すみませんでした」というのが普通でしょう。

「間違っていました」とか「反省しています」とか「二度といたしません」などと付け加えても良いですね。

ところが、「お詫びします」という謝り方が多い。これではどうしても、直接謝られている気がしません。

「今からお詫びの言葉を述べます」という、意思表示だけのように、私は感じるからです。

「お詫びしたいと思います」と言われても、そう思うなら早く詫びてくださいよ、と言いたくなる。

「お詫びしたいと、そのように考えております」これが政治家がよく発する謝罪言葉です。ぜんぜんダメ。

「お詫びしたいと、そのように考えておる次第でございます」丁寧に言われてもダメなものはダメ。

新聞等の訂正記事でも「お詫びして訂正します」という常套句が使われますが、いかにも心がこもってない。

「訂正いたします。申し訳ございませんでした」と書いてもらいたい。

生放送の緊張感

NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターは、諸事情あって、3月で降板です。

内容もさることながら、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1525.html" target="_blank" title="生放送の緊張感">生放送の緊張感</a>を楽しんでいるとしか思えない国谷氏の進行ぶりが、見事でした。

番組自体は存続し(番組名に「+」が付く)、4月からは女性キャスター7名の「リレー形式」になるとか。

優秀な女性キャスター7人が束になって、やっと国谷氏の後任が務まるのか、などと思ったりもします。

先日なにげに番組を見ていたら、樹木希林さんが、しれっときわどい発言をしていましたね。

ネットで話題になったので、あらためて録画を見直してみると、番組最後の18秒はこうでした。

樹木「いや私ね、国谷さんはホントに素敵な」

国谷「まぁ」

樹木「仕事ぶりだなぁと思っているの。そしてねぇ、NHKは大変な財産を」(A)

国谷「あ、いやぁ」

樹木「お持ちだなぁと思って、私はいつもね、あの、だ、大好きな番組です」(B)

国谷「ありがとうございます。いつまでも、どうぞお元気で」

樹木「はい、いつまでもなんて」(音声が途切れ、番組も終了)

なるほど。(A)の後に「失うんだなぁと思って」と続くかとも思わせる、絶妙な「間」がありますね。

樹木希林はそれを狙っていたのだと思います。(B)で、どもってしまったのは、その緊張の現れでしょう。

こういう風に、生放送の最後に言いたいことを滑り込ませて、しかも人を不快にさせないのは、さすがです。

中古本と電子書籍

読みたい本がある時、私がどのような手段でその本を入手するかについては、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1480.html" target="_blank" title="以前">以前</a>も書きました。

しかし、その考え方は、最近ずいぶん変わりつつあります。結局は、ケースバイケースなのですが。

(1)速さ優先(すぐに読みたい)なら、電子書籍(KindleかiBook)、なければ書店、またはAmazon

(2)物欲優先(手元に置きたい)なら、Amazonの中古本、なければAmazonの新刊本

考えてみると、読みたい本を書店で買う機会は、かなり減りました。こうなったのは、つい最近のことです。

しかし、書店に行かないというわけではありません。書店は「本を探しに行く場所」だと思っているからです。

さて、(2)のケースだと、たいていは1円の中古本を選ぶのですが、送料を加えると実質258円です。

ところが、そこまで安い中古本がない場合も、しばしばあります。

それどころか、送料を加えると新品よりも高くなる場合があります。あれって、どうなんですかね。

もっと驚くのは、新刊本なのに、中古本の方が新刊の数倍の価格で売られていることがあります。

絶版なら理解できますが、新刊本でいったい、どうゆう了見なのでしょう。

ネット検索してみたら、「新刊よりも高い中古本は詐欺の可能性が高い」とありました。ホントですか。

悪質な転売です。発注を受けたら、すぐにAmazonから購入して、包装を替えて発送する、というわけです。

在庫ゼロで丸儲けですね。でも、引っかかる人間がいるのだろうかと思いますが、たぶん、いるんでしょうね。

いまいちばん導入して欲しいのは、電子書籍の買取(返却)と、中古の電子書籍売買制度です。

不要になった電子書籍を返却(=端末から削除)すると、いくらかキャッシュバックされるのってどうですか。

あるいは、電子書籍の所有権を誰かに譲渡できる仕組みも、面白いと思います。

書棚のキャパも限られるので、もうこれからは物欲を捨てて、電子書籍で買うことが増えそうです。

ドラゴンクエスト

「今日2月10日は『ドラゴンクエスト III』が発売された日です」と、今朝から林修氏が言ってました。

どうして3作目のことをそこまで取り上げるのか、ドラクエをやらない私には、よくわかりません。

もしかすると、平日に発売されたのに多くの子ども達が店に並び、社会問題となったからかもしれません。

ドラクエをやらない、と書きましたが、実は1作目の「ドラゴンクエスト」だけは、やったことがあります。

研修医の2年目の時のこと。当時私は週に1回、某救急病院の当直をしていました。つまり、アルバイトです。

医者としての経験がまだ浅かったので、急病や交通事故の患者さんへの対応は、緊張の連続でした。

当直室で寝ていても、救急車のサイレンを聞くと、それがかすかな音でも、すぐに眠りから目覚めました。

音がどんどん大きくなり、そしてピタッと消えた瞬間、ナースからの電話が鳴ります。「救急車入りました」。

この病院では、受け入れの可否をあらかじめ当直医に尋ねるシステムがなかったのです。全車受け入れです。

白衣を引っかけて1階まで降りて診察室に着くまで、いったい何者が到着したのか、わからないシステムです。

いつしか、換気扇の音までがサイレンに聞こえ始め、当直室ではなかなか眠れなくなってしまいました。

ところがある日、ひらめいたのです。眠れないなら、眠るのをやめようと。当直のときは、徹夜してしまえと。

ちょうど院長室にはファミコンがあって、発売間もない「ドラゴンクエスト(1作目)」がありました。

いつも昼間に院長がドラクエしてて、様々な場面における「復活の呪文」が、細かく記録してありました。

なので私は、好きなところからゲームを始められるのです。

それ以来、毎週、夜通しドラクエしたものです。救急車のサイレンなど、まったく気にならなくなりました。