医学部入試の小論文

医学部の入学試験では、しばしば小論文が課されます。しかし私はそれを、誤解していました。

テーマはたいてい、ありがちな医療問題なんだろうと、勝手にそう思っていました。たとえば昨年の、

関西医科大「高齢化社会と医療について」とか、久留米大「高齢化社会における医師の役割」のように。

ところが、もっとずっと面白い(奇抜な)課題を出す大学があることを、つい最近知りました。

順天堂大は、階段を昇っていく男性の後ろ姿と、手前には印象的な赤い風船が2つある絵を提示して、

「キング・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べてください」

東海大は、『赤毛のアン』の抜粋を提示して、

「これを読んで感じたことについて、具体的な例や経験を交えて述べてください」

杏林大にいたっては、

「うそも方便ということわざについて論じてください(60分/800字)」

医学部の入試に限るなら、小論文試験に求められるのは、次のようなことじゃないでしょうか。

(1)出題の意図を理解し、論理的かつ常識的な作文ができる(へんてこりんな文章を書かない)

(2)医師となる自覚と良心を感じさせる(こじつけでも、医学や医療や健康に関連する内容を盛り込む)

(3)うわべの論評ではなく、自分の経験談(苦悩した後に克服)などの、具体的なエピソードを挿入する

もちろん、経験談なんて創作でいいでしょう。なぜならこれは面接ではなく、小論文。つまり作文だからです。

持病を克服したとか、家族を介護したとか、持ちネタのある者だけが高く評価されたのでは、不公平です。

小論文は、自分の人間性や価値観をさらけ出す場であって、苦労経験のありなしを問うものではないはず。

自分を売り込むためなら、経験談を捏造することなど、うそも方便なのです。

・・・という答案では、どうでしょうか、杏林大学の方(ここまで794字)。