診察室で8年間使ってきた「水銀血圧計」ですが、ついにこのたび買い換えました。
水銀体温計や水銀血圧計は、とくに破損時の健康被害が問題とされ、世界的に使用が中止される方向です。
水銀は20℃で気化し、それを吸入すると肺に沈着して水銀中毒を起こすからです。
一時期、水銀血圧計にそっくりな外観の、デジタル自動血圧計に買い換えようと考えたことがあります。
しかし、自動血圧計はどうしても、その正確さが気になってしまい、結局購入は見合わせました。
やはり血圧は、聴診器を耳に当てて測る、アナログ血圧計がいちばんです。
となると選択肢はひとつ。「アネロイド血圧計」ということになります。
「アネロイド(aneroid)」とは、「液体を使わない」という意味のギリシャ語です。つまり、水銀不使用。
内部が真空の金属容器が外圧によって変形するのを、針の動きに変えて血圧を示すものです。
水銀血圧計で水銀柱がゆっくり降りてくる、あの繊細さにはかないませんが、ちゃんと正確に測れます。
人の血圧は、大動脈と頸動脈にある「圧受容器 ( baroreceptorバロレセプター)」によって監視されています。
<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1332.html" target="_blank" title="バロ">バロ</a>(baro)とは、圧力を意味します。バロメーター(barometer)のバロです。
血圧が上がれば、バロレセプターがそれを感知し、自律神経を介して、心臓の収縮力と心拍数を減らします。
血圧が下がったときには、その逆の反応です。
バロレセプターという、いうなれば生体の血圧計の、その精巧な仕組みと俊敏な反応には驚くばかりです。
動脈壁の変形(伸展)で作動するので、アネロイド血圧計に、少し似ているのかもしれません。