ステーキの温度管理

ステーキを美味しく焼く方法は、どうやら2つに大別できるようですが、それが真逆です。

(1)まず表面をよく焼き、その後、内部に適度に火を通す

肉汁を漏らさないようにと、私が日ごろBBQで行ってきた焼き方も、おおむねこの手順。

表面をしっかり焼いた後、火から下ろし、アルミホイルで包み、余熱だけで火を通す方法もあるそうです。

(2)ゆっくり弱火で内部まで火を通し、最後に表面をよく焼く

最初は低温で加熱するのがミソで、こちらの方法が料理科学にかなっているとか。

肉を焼くときの内部温度は60度前後が望ましく、65度を越えてはならない、などとよく言われます。

したがって、(1)の後半も(2)の前半も、内部が65度を越えないように火を通すのがポイントです。

しかし実際問題として、肉の内部にちょうど良い具合に火が通ったかどうか、素人が見極めるのは難しいもの。

専用の温度計を使って、肉の内部温度を測定しながら焼くのも面倒。では、どのように温度管理をすべきか。

思いつきました。60度のお湯で肉を温めて火を通し、最後に表面をさっと焼いたらどうか、と。

本日、実験しました。失敗するともったいないので、グラム198円の、お手頃価格の豪州肉を準備しました。

鍋にたっぷりのお湯を沸かします。火を止め、温度計を入れて温度を見ながら、64度に調整します。

あらかじめ室温に戻しておいた肉を、ジップロックに入れて密閉し、湯に浸し、鍋に蓋をします。

庭に出て、BBQの炭火を起こします。約20分後には、最強の火力となりました。

ここで、肉が浸かっている鍋の湯の温度を見ると、57度でした。温度管理は、思いのほかうまくいきました。

肉を湯から出してみるとしかし、ジップロック内には、多量の肉汁が出ていました。イヤな予感がします。

もたもたしているうちに、炭火の火力が落ちたため、肉の表面を焼くだけのために、10分以上かかりました。

果たしてステーキは、火が通り過ぎてカチカチ、しかも旨味ゼロ。実験大失敗です。

薬と眠気と運転

病気が原因で起きた交通事故の話は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1495.html" target="_blank" title="先日">先日</a>書きましたが、薬物の影響による事故も、問題です。

かぜ薬などには、眠気を催す成分が含まれていることがあり、居眠り運転につながる危険があります。

禁煙治療薬「チャンピックス」もまた、内服後の眠気で事故を起こした事例が、報告されています。

チャンピックスは、平成20年の発売時より、「めまい、傾眠」という副作用があることがわかっていました。

しかし、喫煙という「毒」に拮抗する画期的新薬なので、少々の副作用は軽視されていた嫌いがありました。

ところが発売後、意識障害によって自動車事故を引き起こした3つの事例が報告され、雲行きが変わりました。

ただちに「使用上の注意」が改訂され、本剤内服中は「自動車の運転に従事させない」と記載されました。

チャンピックス内服による禁煙治療は、通常12週間にわたって続けられます。その間、薬は毎日服用します。

なので「禁煙したけりゃ3カ月間は車を運転するな」ということになってしまいます。

現に、「車を運転する方には、禁煙治療薬を処方できません」という姿勢を貫いている医療機関もあります。

たしかにそれは正論です。他人を危険にさらしてまで、禁煙治療などしなくてよろしい、というわけです。

しかし、禁煙治療を希望する方のほとんどが、日常的に車を運転しています。

喫煙がもたらす疾病を減らそうというのなら、もっと現実的な対応をして、禁煙治療をしやすくすべきです。

私は「試しに内服して、もしも眠気がくるようなら、運転前には飲まないように」と指導して処方しています。

実際の印象としても、内服しても眠くならない方がほとんどです。

国やメーカーは、「運転禁止」と規定して責任回避ばかりせず、もっと現実的な運用を支援すべきです。

医者と患者のギャップ

「医療事故調査制度」が始まりました。

医療機関は、「診療行為に関連した患者の予期せぬ死亡事例」を、報告・調査する義務があります。

たとえば手術後に死亡した場合、手術と死亡の関連性は明らか。問題は、死亡が予期できていたかどうかです。

もちろん外科医は、術中に起こりうるあらゆる可能性を想定し、すべての死亡を予期できているはずです。

予期できているのであれば、それを患者に説明していたか、さらに記録に残していたか、という点が重要です。

手術前には、いわゆる「インフォームドコンセント」と呼ばれる説明を尽くし、患者の同意をとります。

具体的には、病気の状態、手術の必要性、手術しなかった場合に予測される経過などを、ありのまま話します。

次いで、予定術式の詳細、術中・術後に起こりうる合併症・偶発症、術後の見通しなどを詳しく説明します。

手術中や術後に死亡する可能性とその確率も、具体的な数値で示すことになります。

そのような説明の後、万全の準備で行った手術が、しかし結果的にうまくいかない場合があります。

「死亡する可能性は低いと聞いていたのに」というご家族の言い分は、よくわかります。

医者と患者家族との間には、大きな意識のギャップがあります。

いくら死亡の可能性をあらかじめ説明していても、家族側はそのような事態を想定してはいないのです。

まして、手術ですらない、たとえば予防接種でも、アナフィラキシーショックで死亡する危険性はあります。

もちろん、医療者側は想定していることですが、その危険性が、被接種者に十分伝わっているとは思えません。

一般に、「言った、言わない」の水掛け論は、得てして「言った側」の言い方が悪いのです。

さっそく明日、予防接種後のアナフィラキシーについて、厳しめのポスターを作って掲示することにします。

ひとつひとつ、医者と患者の意識のギャップを埋めることが必要なのでしょう。

短期記憶力テスト

宮崎市で先週起きた重大な交通事故の原因は、運転していた男性の認知症などが原因とみられています。

無謀運転や飲酒運転ではなく、男性の健康上の問題が引き起こした事故だけに、なんともやりきれません。

抗てんかん薬の飲み忘れで、運転中に発作が出てしまったケースは、これまでに何度か報じられました。

昨年は、インスリンを注射している糖尿病の方の、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1004.html" target="_blank" title="低血糖が関与したと思われる事故">低血糖が関与したと思われる事故</a>が起きました。

薬で管理できる病状ならまだしも、心筋梗塞や脳梗塞などは、どのように管理しても起きるときは起きます。

極端な話、運転中のくしゃみが原因でハンドル操作を誤りそうになることだって、私でも経験があります。

医学的なリスクを抱えている人に、運転を認めるかどうか、その線引きはとても難しいと思います。

しかし、認知症と診断され、過去には事故歴もある今回の男性が運転できていたことは、たしかに問題です。

75歳以上の場合、記憶力や判断力を調べる「講習予備検査」をパスした人だけが、運転免許を更新できます。

その検査のひとつ「手がかり再生」に使うイラストを、テレビで紹介していたので、チャレンジしてみました。

まず8つの絵が提示され、「8つのモノの名前を覚えてください。2分後に答え合わせをします」と、CM入り。

こう言っちゃなんですが、私は記憶力が良い方です。とくに、短時間で集中的に記憶する作業が、好きです。

一見無関係にみえる8つのイラストも、それらを関連づけるような物語を創りながら、覚えていくのです。

さて、CMがあけました。ところがです。なぜかどうしても4つしか思い出せません。冷や汗が出てきました。

番組では、私よりもだいぶ年配のコメンテーターが、7つ言い当てました。

「全問正解でなかった方は、医師の診察が必要な場合もあります」とのこと。かなりヤバイです。

ごまめの歯ぎしり

国会議員の河野太郎氏は、入閣を機に、自身のブログ「ごまめの歯ぎしり」の公開を制限しています。

10月8日以降の、大臣としてのブログは読めますが、その前のヤンチャな時期のバックナンバーは読めません。

「今までは外から言っているだけだった。今度は政府内の議論でしっかりと言うべきところは言っていく」

と河野氏は言っていますが、バックナンバーの閲覧を制限する理由にはなりません。残念です。

政権批判だけでなく、国会内の悪習を疑問視するところなど、なかなか面白いブログでした。たとえば、

あらかじめ、反対する政党がないとわかっている議題は、本会議では「異議なし採決」が行われます。

そうなると、議長の「ご異議ありませんか」に対しては、「異議なし」しか選択肢はありません。

ある緊急動議が出されたとき、議長がそれを採択すべく「ご異議ありませんか」と諮ったときのこと。

河野氏があえて「異議があります」と発言したのに、議長は「ご異議なしと認めます」と押し通したとか。

まさに「ごまめの歯ぎしり」が聞こえてきそうなシーンです。

ところで、このネット社会。いちど立ち上げられた有名人のブログなど、コピーサイトがすぐ見つかります。

現に私も、そのようなサイトのバックナンバーを、河野氏入閣後になって、あらためて読み始めたところです。

閉鎖されたと聞くと、逆に読みたくなるもの。皮肉にも、ブログ読者はむしろ、今後拡大するかもしれません。

閣僚として表向きは公開を制限し、裏ではバックナンバーを読ませようというのなら、河野氏もなかなかです。

加工肉と大腸がん

「加工肉を毎日50g食べ続けたら、大腸がんにかかる確率が18%増える」

WHOがこのたび発表した、国際がん研究機関の報告が、世間を騒がせています。

毎日50gって、そんなに大量の加工肉を食べなきゃいいでしょう、と思ったら大間違い。

フランクフルト1本が約50gなので、下手したら、その2倍、3倍を食べる日だってありそうです。

それよりも問題は、18%という数字の持つ過大なイメージが、一人歩きしていることです。

かつて胃がんが多かった日本ですが、「食の欧米化」によって、大腸がんが増えています。

2013年の統計では、日本人の約8%が、一生のうちに大腸がんと診断されたそうです。けっこう多いです。

もちろん、早期発見された場合には、ほぼ100%根治できます。

その8%が、18%増えるというのなら、8+18=26%になるのかというと、そうではありません。

8%の18%、つまり8x0.18=1.44%だけ増えるので、9.44%になるということです。

では、加工肉がなぜ悪いのか。加工に用いる化学物質が問題とも言われます。

化学物質と同様に、高温加熱も良くないらしいですね。

以前、焼き魚や<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1153.html" target="_blank" title="フライドポテト">フライドポテト</a>による発がんが問題になりましたが、それと同様のメカニズムでしょう。

タンパクやアミノ酸に高熱を加えすぎると、よからぬ反応が起きるようです。

BBQで肉を焼くときにも、ほどほどの火加減で、ゆっくり火を通した方が良いのかもしれません。

そして、焦げすぎた部分は食べないこと。でも、そのカリッとした部分がまた、美味いんですけどね。

絶食と体脂肪

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-413.html" target="_blank" title="1日1食">1日1食</a>、夕食のみ」の生活を、ほぼ10年ほど続けています。たまに昼食も食べますが、それは例外的。

朝ヨーグルトを食べたり、昼はソイジョイを食べていた頃もありましたが、今は朝・昼とも、飲み物だけです。

1日1食には慣れましたが、胃腸の検査の前日、夕食も食べられなかった完全絶食の日は、さすがに辛かった。

比叡山延暦寺の荒行「堂入り」を、住職が無事「満行」したと、先日報じられました。

断食、断水、不眠、不臥の9日間を耐え、しかも達成後にしっかりした足取りで歩く住職の姿には驚きました。

榎木孝明氏の30日間の「不食」にも驚きましたが、荒行の方は断水かつ不眠です。

どうしてそのようなことが、医学的に可能なのか。ともかく、驚異的な精神力が必要だとは思います。

災害時などに「72時間の壁」という言葉がよく出てきます。

被災後は72時間を境に生存率が低下する、という経験則です。

しかし72時間を過ぎて、ほぼ絶望視されていた被災者が、無事救出されることが、ときどきあります。

飲まず食わず、寒さや痛みや絶望感にさいなまれて過ごす72時間超を、よく耐えられるものだと思います。

体温が下がり、意識レベルも下がり、基礎代謝が下がったことで、体力消耗を最小限にできたのでしょうか。

体内に備蓄していた脂肪を、きわめてゆっくりと消費して生き延びたのでしょう。

ちょうどクマが、秋に過食して蓄えた体内脂肪をエネルギー源にして、冬眠する仕組みと似ています。

そのような事を考えると、十分な体脂肪の蓄積こそ、極限状態を生き抜くための要件と言えるでしょう。

「脂肪の燃えやすいからだ」は、生活習慣病の予防には有利でも、被災時には不利な体質かもしれません。

明治の日よりも明治節

「文化の日」を「明治の日」に名称変更しようという動きがあり、私もその方がマシだと思います。

祝祭日というのは、何か具体的な出来事や名目があってこそ、その日を祝うわけです。

「文化」なんて特定の日に祝うモノでもないし、もともとの「文化の日」という名前が間違っているのです。

11月3日は明治天皇の誕生日。明治時代はこの日が、祝祭日のひとつ「天長節」でした。

大正時代の天長節は、大正天皇の誕生日である8月31日、昭和に入ると天長節は、4月29日になりました。

「明治節」は、明治天皇の誕生日を祝う日を休日として復活させるべく、昭和に入って作られたものです。

戦後、日本国憲法が公布されたのが、昭和21年11月3日。その6カ月後の5月3日に、施行されました。

諸説はありますが、どう考えたって、憲法公布を「明治節」に合わせたと考えるのが自然です。

「明治の日」は戦前回帰だと批判も出ていますが、それほど大げさに考える必要もないでしょう。

戦前から即位していた昭和天皇の誕生日だって、「みどりの日」を経由していまは「昭和の日」です。

ただし、祝日が必ず「○○の日」とか「○○日」という名称であるのは、いかにも画一的で個性がありません。

歴史的な由来があって作られた祝日であればなおさら、歴史的な名称をそのまま使うのが適切だと思います。

なので「文化の日」は、このさい「明治節」に変えましょう。ついでに「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1226.html" target="_blank" title="建国記念の日">建国記念の日</a>」は「紀元節」に。

MRワクチン回収騒ぎ

北里第一三共が製造した「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-619.html" target="_blank" title="麻しん/風しん混合(MR)ワクチン">麻しん/風しん混合(MR)ワクチン</a>」と「麻しんワクチン」が、回収騒ぎです。

麻しんワクチンとしての効力が、有効期間内に承認規格を下回る可能性があることが判明したため、とのこと。

日本中で流通していたMRワクチンの相当数が、今回の回収対象ロットに該当します。影響は大きいです。

第一三共は「これまでに有効性や安全性に影響があったとの報告はない」と言っています。

たしかに、安全性に重大な影響を及ぼすような不具合ではなかったことは、不幸中の幸いです。

しかし、有効性が十分だったかどうかは、数年、十数年以上経たなければわかりません。それがワクチンです。

有効性が低いワクチンの接種は、将来、はしかに罹るという「被害」をもたらしかねません。

かつて、「麻しんワクチン」の効力不足が原因で、大問題を引き起こした事件があります。

平成13年、沖縄県宜野湾市周辺で、ワクチンを接種したはずの子どもたちが、次々とはしかにかかりました。

使われていたのは千葉県血清研究所(千葉血清)製ワクチン。当初は、ワクチンの保管法が原因とされました。

しかしその後、あらためて検証を進めると、ワクチン接種後の抗体陽性率が異常に低いことが判明。

同様の被害は、千葉、福岡、熊本からも報告されましたが、特別な措置はとられませんでした。

そしてあろうことか、平成14年には、千葉血清という会社自体が閉鎖してしまいました。真実は闇の中です。

今回の北里第一三共のワクチンは、まず原因究明をしなければなりません。

有効性の低いワクチンを接種してしまった人を、どのように救済すべきかも、検討が進められているようです。

あらためてワクチンを再接種するのか、その場合の費用負担はどうするのかなど、面倒な問題が山積です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1479.html" target="_blank" title="化血研">化血研</a>のときと同様に、「全ワクチン出荷停止せよ」などと厚労省が言い出すと、大変なことになりますが。

ライオンを区別せよ

数日前、Facebookで投稿しようとしたら、セキュリティー上の問題があると、警告画面に切り替わりました。

ずらりと十数枚の画像が並んでおり、その中からライオンの絵を全て選べという、セキュリティチェックです。

ライオンの絵は3枚。そのほかに、ライオン以外の動物や植物などの画像が並んでいますが、なぜライオン?

Facebookのセキュリティチェックには、時々出くわしますが、画像選択など聞いたことがありませんでした。

ともかく、ライオンの画像を3カ所クリックして、無事その場を切り抜けましたが、何だったのでしょう。

「近ごろ、ライオンとトラの区別が付かないヤツがいるので、セキュリティー上問題があるのではないか」

などという意見が、Facebookの上層部で出ていたのでしょうか。

そのうち、ピューマをすべて選べ、などと言われたら、正しく解答できるか自信がありません。

ヒョウやレパードも難しい。ネコ科じゃないけど、コヨーテとハイエナも、私はときどき間違えます。

こういった、セキュリティー上の問題を警告する画面が、実はマルウェアということもあるようです。

もしかすると私は、セキュリティチェックを装うサイトに誘導されてしまったのかもしれません。

さいわい、パスワードや私の個人情報を入力することはなかったので、実害はなかったはずです。

しいて言うなら、私のライオン認識能力という個人情報が漏洩したことになりますが、まあいいでしょう。

それにしても、セキュリティチェックが純正のものかどうか、どうやって判別すればよいのでしょうね。