「医療事故調査制度」が始まりました。
医療機関は、「診療行為に関連した患者の予期せぬ死亡事例」を、報告・調査する義務があります。
たとえば手術後に死亡した場合、手術と死亡の関連性は明らか。問題は、死亡が予期できていたかどうかです。
もちろん外科医は、術中に起こりうるあらゆる可能性を想定し、すべての死亡を予期できているはずです。
予期できているのであれば、それを患者に説明していたか、さらに記録に残していたか、という点が重要です。
手術前には、いわゆる「インフォームドコンセント」と呼ばれる説明を尽くし、患者の同意をとります。
具体的には、病気の状態、手術の必要性、手術しなかった場合に予測される経過などを、ありのまま話します。
次いで、予定術式の詳細、術中・術後に起こりうる合併症・偶発症、術後の見通しなどを詳しく説明します。
手術中や術後に死亡する可能性とその確率も、具体的な数値で示すことになります。
そのような説明の後、万全の準備で行った手術が、しかし結果的にうまくいかない場合があります。
「死亡する可能性は低いと聞いていたのに」というご家族の言い分は、よくわかります。
医者と患者家族との間には、大きな意識のギャップがあります。
いくら死亡の可能性をあらかじめ説明していても、家族側はそのような事態を想定してはいないのです。
まして、手術ですらない、たとえば予防接種でも、アナフィラキシーショックで死亡する危険性はあります。
もちろん、医療者側は想定していることですが、その危険性が、被接種者に十分伝わっているとは思えません。
一般に、「言った、言わない」の水掛け論は、得てして「言った側」の言い方が悪いのです。
さっそく明日、予防接種後のアナフィラキシーについて、厳しめのポスターを作って掲示することにします。
ひとつひとつ、医者と患者の意識のギャップを埋めることが必要なのでしょう。