風邪と辞書

「インフルエンザに罹りました」と言う人はいても、「インフルエンザを引きました」と言う人はいません。

ところが風邪の場合は『引く』が普通で、「風邪に罹りました」と言われると、微妙に違和感があります。

インフルエンザとは異なり、風邪においては、何らかの感染症に罹患したという意識が希薄なのです。

「運動会で疲れた」とか「湯冷めした」とか「汗をかいたのに着替えなかった」ことで、人は風邪を引きます。

つまり風邪は感染症ではなく、体調の不具合だというニュアンスですが、あながち間違いでもありません。

ウイルスに感染して、それを排除する体力(免疫力)がないとき発病する、という意味では正しいでしょう。

『引く』つながりで言うなら、最近は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1400.html" target="_blank" title="辞書">辞書</a>を引くのがマイブームです。(強引な展開で、すみません)

辞書によると、風邪(の原因)を自分の体に吸い込み受け入れることが、「風邪を引く」ことだそうです。

また、辞書の中から、自分の探し求める事項をピックアップすることが、「辞書を引く」です。

「風邪を引く」と「辞書を引く」には、「自分の方に引き寄せる」という意味合いが共通しています。

真の意味で「辞書を引く」のであれば、辞書から引き出した事柄を、自分の中に取り込まなければなりません。

辞書の引きっぱなし、本の読みっぱなし、ではダメなんですね。肝に銘じます。

安保関連法成立

安全保障関連法が、ついに成立しました。賛否ありますが、誰も戦争をしたくはない気持ちは、同じです。

議論はまだ、尽くされていないとしても、近年まれに見るほど、世論は盛り上がりました。

良くも悪くも、安倍首相のリーダーシップが発揮されたわけです。さて支持率はどうなることやら。

その安倍首相が「吐血」したと、少し前に週刊文春がスクープしましたが、ガセだったようです、たぶん。

首相本人が、「血は吐いていません」「血を吐く思いで頑張っています」と、うまく切り返したとか。

それにしても、最近の安倍首相の硬い表情を見ていると、どうしても心配になります。

法案可決で、単純にストレスが和らぐとは思えません。持病がぶり返さないことを祈るばかりです。

「吐血」というのは、食道や胃などの「消化器」から出血したやや黒い血液を、口から吐きもどすことです。

一方で、気管支や肺などの「呼吸器」からの真っ赤な血液を、咳込みながら出すことを「喀血」といいます。

ついでに言うなら、大腸などからの出血が肛門から出るのが「下血」です。

また下血されましたと、昭和天皇の病状の詳細がいちいち報じられていた、昭和末期のあの頃を思い出します。

安倍首相の体調はどうなんでしょう。本当に頑張ってもらわなければならないのは、これからなのですが。

0歳からの日本脳炎予防

ついに0歳児が、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-702.html" target="_blank" title="日本脳炎">日本脳炎</a>を発病しました。先月、千葉県に住む乳児が発症し、今月診断が確定しました。

乳児でも蚊に刺されるし、刺されれば日本脳炎に罹ることもある、ってことです。

日本脳炎は、小さな子どもは発症しないというのが通説でした。医者も厚労省も、ずっとそう思って来ました。

だから0歳6カ月から接種できる日本脳炎ワクチンも、勧奨接種は3歳からでした。

ところが最近、高知と沖縄でそれぞれ1歳の子どもが発症し、あれっ?、という雰囲気になっていました。

3歳からの予防で間に合うのか、3歳まで待つ意味って何なのか、そのような疑問が医者の間に出てきました。

かつて副反応が問題となったワクチンも、製造法が変わって安全性が高まり、積極的勧奨接種に戻りました。

しかしいまなお、日本脳炎ワクチンの標準的な接種年齢は、3歳のままです。

日本脳炎は、世界中で毎年1万人以上が罹る病気ですが、さいわい、日本ではかなり減っています。

2013年の発病者はわずかに8人。地域別では、熊本2人の他に、6府県で各1人ずつ。熊本、多いです。

しかし、感染リスクのある地域は、日本全国に及びます。

ブタのウイルス抗体保有率が、定期的にチェックされていますが、東北・北海道でもしばしば陽性が出ます。

感染しても発病する率は低い病気ですが、もしも発病すれば、高い率で死亡または重い後遺症が残る疾患です。

それがワクチンで予防できるなら、おまけに無料なら、ぜひ接種を受けておくべきでしょう。

例外的に定期予防接種が実施されていなかった<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1046.html" target="_blank" title="北海道">北海道</a>でも、ようやく接種が始まることになりそうです。

接種対象年齢(月齢)である0歳6カ月になったら、できるだけ早めの接種を、当院ではオススメしています。

標準接種年齢を3歳とする理由は、ありません。それに3歳未満でも、いくらでも蚊に刺されます。

初老とは何歳からか

まず、「初老」の定義から。辞書によると、

「(1)老境に入りかけた年頃、(2)40歳の異称」『広辞苑(第5版)』

「(1)老境に入りかけの人。老化を自覚するようになる年頃。(2)四〇歳の異称。」『大辞林(第2版)』

だいたい「老境」などという、「初老」よりもなじみのない言葉を使うのは、説明として不適切・不親切です。

これらの辞書には、人に意味をわからせようという態度が、微塵も感じられません。とくに広辞苑はひどい。

では、座右の(辞)書、『日本国語大辞典(第2版)』を見てみましょう。初老とは、

「四〇歳の異称。また、老人の域にはいりかけた年頃。寿命がのびた現在では、五〇歳から六〇歳前後をさすことが多い。女性では月経閉止期、男性では作業能力が衰えはじめたときから老化現象が顕著になるまでの期間」

さらに、私の好きな『新明解国語辞典(第6版)』は、簡潔ながらも生々しい記述です。初老とは、

「肉体的な盛りを過ぎ、そろそろからだの各部に気をつける必要が感じられるおよその時期」

老境はおろか、老化や老人という言葉すら使わずに、初老を説明しているところが、実にすばらしい。

さて、「肉体的な盛り」はともかく、私も最近とくに、からだの各部には気をつける必要を感じています。

辞書の定義に照らせば、私はすでに初老かもしれません。しかしそれを認める気は、サラサラありません。

肉体はともかく、精神は充実しているつもりだからです。いや、記憶力はだいぶ低下しているかもしれません。

視力、聴力といった、知覚機能も、残念ながら低下していると言わざるを得ません。

しかし、好奇心とか想像力とか空想や妄想などの精神活動は、意外と維持できているか、むしろ旺盛です。

世の人々は、何歳からを初老と考えているのか。NHKの調査によると、平均値は57.0歳だったとか。

ただし、男性の初老は55.5歳、女性が58.4歳という、承伏しかねる較差があります。

とくに、10代の回答者の平均値は48.6歳だったようで、彼らから見れば、私などすっかり老人なのでしょう。

一方で、50代の回答者による初老の年齢は、59.1歳でした。自分らはまだ違うぞと、そういう意思表示です。

今日は私の、55歳の誕生日でした。四捨五入すると、やばいです。

自分の趣味で選ぶ

幼い子どもの持ち物は、親が選んで買って持たせます。やがて成長すると、自分で選びたがる時期が来ます。

思い出すのは、次女が小学6年生になって、修学旅行に持って行く物品を準備したときのこと。

旅行の前日、娘はお泊まりセット(歯ブラシと練り歯磨き)を買いに、近所のスーパーに行ったようです。

さんざん時間をかけ、選びに選び、自分が最高に気に入った物を買い、嬉々として帰宅してきたのでした。

細い円筒形の透明なケース、ファスナーがスムーズで、色が水色で、歯ブラシ先にカバーがあって・・・

買ってきたお泊まりセットは、全ての点において最高であると、私にじっくり披露してくれます。

初めて自分が自分のために選んだ物が、嬉しくてしかたないのでしょう。

お父さんも、お仕事に持って行くお泊まりセットを持っているよ、と私が言っても、娘は聞く耳を持ちません。

じゃあ、比べてみようか、と私は自分の歯ブラシセットをカバンから出して、娘の目の前に差し出しました。

それは、娘が買ってきた物とうりふたつ。色も同じ、形も同じ。つまり、同じ製品なのでした。

当直用に、以前近所のコンビニで私が買っていたものです。偶然にも、娘は同じものを買ってきたわけです。

ここまで趣味が同じだとは、私も驚きましたが、私以上に驚いたのは、いや落ち込んだのは、娘の方でしょう。

同じ物を持っていることなど、私の胸の内にとどめておけばよかったのに、私も大人気無いことをしました。

それ以来でしょうか、父娘の会話が減ったのは。でも会話は減っても、気持ちはみなわかっているつもりです。

文系不要という暴論

文科省の、いわゆる「文系廃止通知」が波紋を呼んでいます。

通知文が「舌足らず」だったため誤解を生んだと、文科省は弁解していますが、たぶん本音だったのでしょう。

その本音とは、理系は社会や生活に役に立つが、文系は(あまり)役に立たない、という暴論です。

笑ってしまいます。何をもって、役に立つというのでしょう。

生活を便利にするのは理系だとしても、その生活を豊かにしているのは、文学や芸術などの文系です。

だいいち、いま日本の社会を牛耳っているのは、文系(官僚)じゃないですか。

理系の人間など、文系にうまく使われているにすぎません。

たとえば過去30年間の、18人の歴代総理大臣の出身大学・学部を調べてみたら、理系はわずかに2人。

東大工学部出身の鳩山氏と、東工大理学部出身の菅氏だけ。他は全員、文系学部出身。

文系の首相がみな素晴らしいとは言いませんが、少なくとも理系出身者は、総理大臣には向かないようです。

その文系の安倍首相が、OECDの基調演説でこう語りました。

「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う」と。

100年先を見なければならない国家の指導者が、つい目の前のニーズを見据えるとは、考えが浅いものです。

そう言えば医学部の定員にしても、増やして、減らして、また増やしたと思ったら、今度は減らそうという話。

安倍首相は、いったい何を焦っているのでしょう。もっとどっしりと構えてほしい。

胃潰瘍とアスピリン

脳梗塞や心筋梗塞等の既往がある方には、「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-895.html" target="_blank" title="アスピリン">アスピリン</a>」を処方することがよくあります。

アスピリンには、血小板の働きを抑制して、血液をサラサラにする作用があるからです。

しかしアスピリンのような消炎剤は、胃粘膜を傷つけやすく、胃炎や胃潰瘍の原因になることがあります。

なので、胃潰瘍の人にアスピリンを処方することは、禁じられています。これを「禁忌薬」といいます。

では、脳梗塞や心筋梗塞等の既往がある方が、アスピリンが原因で胃潰瘍になったら、どうすべきでしょうか。

胃潰瘍は、「H2受容体拮抗薬」や「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」などの強い胃薬で治療します。

これらを処方する際は、「胃潰瘍」などの傷病名をレセプトに記載しなければなりません。

そしてひとたび胃潰瘍と診断すると、アスピリンは禁忌薬となり、処方を継続することができなくなります。

つまり脳梗塞や心筋梗塞等の既往がある方が、アスピリンで胃潰瘍になった場合、二者択一を迫られるのです。

保険診療上は、アスピリンを続けるか、胃潰瘍を治すか、どちらか一方しか選択できないということです。

アスピリンを続けつつ胃潰瘍も治療するという、当たり前のような診療が、保険では認められていません。

オカシな規則ですが、これはほんの一例に過ぎません。このような制約が、保険診療にはたくさんあります。

人のカラダの中では、色んな事が同時に起き得るのに、規則上、同時には治療できない疾患があるのです。

インフル接種料金値上げ

インフルエンザワクチンの接種料金は、今シーズン、全国の医療機関で値上げされることになりそうです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1338.html" target="_blank" title="前に書いた">前に書いた</a>ように今回から、インフルエンザワクチンが「4価」になるのが、値上げの理由です。

「4価」とは、「4つの株のウイルスに有効」という意味。「価」は、有効成分のようなものです。

以前は「3価」だったので、「4価」になると、有効成分は1.33倍に増えることになります。

これに伴って、ワクチンメーカーは、ワクチン価格を値上げしました。しかも1.33倍どころではありません。

この機を逃すまいという、一種の便乗値上げです。しかも、各社一斉です。

まあしかし、過去何年もの間、ずっと値上げしてこなかったので、ある程度はしかたありません。

メーカーが値上げし、薬品卸が値上げするので、末端の医療機関も、接種料金を上げざるを得ません。

料金が高くなれば、今シーズンは、接種人数が減るかもしれません。

それを予測して、ワクチンメーカー各社は、製造量を昨シーズンよりも11%ほど減らしたそうです。

おりしも、インフルエンザワクチンの有効性を疑問視するような研究結果が、出ました。

前々シーズンのワクチン接種後の大規模調査で、乳児と中学生への接種効果が認められなかったとのこと。

これもまた、接種への逆風になるかもしれません。

これまで接種を推奨してきた当院としても、少々及び腰になりそうな、今年のワクチンシーズンです。

そんないきさつがあったもので、いまだに予約受付を開始できておらず、ご迷惑をおかけしております。

喫煙年齢引き下げの怪

選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げるのにあわせて、飲酒・喫煙年齢も18歳に引き下げようという自民党。

自民党の「成年年齢に関する特命委員会」の、トンデモ提言案です。

「18歳から責任を持てるようにした方がいい」というのが、その理由とか。

まさか、飲酒・喫煙も、社会参加のひとつ、という理屈なのでしょうか。

たしかに、社会人でも大学生でも、違法な飲酒や喫煙が18歳ごろから始まることは、実態としてあります。

しかし、その悪しき現状に、法律の方を合わせることはないでしょう。とくに喫煙は大問題です。

党内外からの反発が強いため、委員会は当初案を撤回しました。そりゃそうでしょう。

ただし、「社会的なコンセンサスが得られるよう、国民にも広く意見を聞く」などと、諦めてはいない様子。

選挙権年齢の引き下げには、大きな社会的意義がありますが、飲酒・喫煙年齢の引き下げの意義は何ですか。

産業界の活性化でしょうか、税収増でしょうか。私には、健康被害促進ぐらいしか、思い当たりません。

先進国は揃って禁煙運動を進めているというのに、喫煙者の拡大につながるようなことをして、どうしますか。

依存性があり、健康を害することがわかっている喫煙を、わざわざ若者に広げる理由など、何もありません。

委員会は「医学的見地や社会的影響について、慎重な検討を加える」としています。

であるならば、喫煙可能年齢など、逆にもっと引き上げてはどうでしょう。25歳とか30歳とか、60歳とか。

庭の芝生を一新

以前住んでいた家の庭は、綺麗な芝生に覆われていましたが、手入れが行き届かず、枯らしてしまいました。

同じ轍を踏まないように、今の家の庭の芝生は、水やりや芝刈りや草取りなど、気をつけて管理してきました。

芝刈りがおっくうにならないように、電動芝刈り機も購入しました。

芝生を活性化するために、「ローンスパイク」でエアレーションしたり、肥料もまきました。

が、それも最初の1,2年。スパイクを使ったのはトータル2,3回。電動の芝刈りさえ、おっくうになりました。

当初は庭一面を覆っていた芝生も、ほぼ消失。緑色に見えるのは雑草だけという惨状。

心を入れ替えて庭を再生しようと、近所の造園店に行くと、眩しいほど美しい芝生が目に入ってきました。

雑草1本もなく、びっしりと均一に敷き詰められた芝生が、日に照らされて青青と輝いています。

「あのようによく管理された芝生って、美しいですね」と私がいうと、店員の意外な返事「人工芝ですよ」。

驚いて近づいて見ましたが、至近距離からでも、天然芝に見えます。最近の人工芝は、かなり精巧です。

けっこうな長さの、柔らかい緑色の芝の葉がフサフサして、その根元には枯れた芝までが再現してあります。

昔バルコニーに敷いていた、30cm四方で1枚100円弱の、裸足で歩くと痛い人工芝とは大違い。

といういきさつがあって、このたび、庭一面に人工芝を張りました。緑一色になりました。

もうこれで、芝刈りも草取りも不要です。庭の手入れや土いじりが好きな人には、邪道なんでしょうかね。