「点滴してください」と来院される方がいます。しかし「わかりました」と即応するわけにはいきません。
特殊な治療薬の投与ならともかく、単純な補液(輸液)が必要なのは、あくまで脱水状態の場合だけです。
いくら点滴がご希望でも、脱水の心配がない方には点滴はしません。時間と医療費のムダです。
一方で、とくに小児では脱水になり易いので、補液が必要な状態かどうかを、迅速に判断する必要があります。
その判断基準は、検査所見よりもまず、口腔内の乾燥具合や、皮膚の性状や、何よりも顔色が大事です。
蒼白な顔色や冷たい手足だったら、脱水のために皮膚の末梢循環が悪くなっている証拠。ただちに点滴です。
不思議なのは「乾燥」の「燥」の字です。なにしろ「燥ぐ」と書いたら「はしゃぐ」です。
脱水でぐったりしている時に、はしゃぐ気にはなりません。そこのところが、どうしても引っかかります。
それはともかく、点滴を始めると、まず顔色が改善し、手足が温かくなり、だんだんと活気が出てきます。
子どもなら、絵本を読んだりゲームを始めたり、やたらにしゃべり出したりします。
点滴に飽きてぐずったり、少々暴れるほど元気が出てきたら、もう点滴は終了してもいい頃合いです。
「乾燥」していた体が「湿潤」状態になると、「燥(はしゃ)ぎ」始めるとはこれいかに、です。