初老とは何歳からか

まず、「初老」の定義から。辞書によると、

「(1)老境に入りかけた年頃、(2)40歳の異称」『広辞苑(第5版)』

「(1)老境に入りかけの人。老化を自覚するようになる年頃。(2)四〇歳の異称。」『大辞林(第2版)』

だいたい「老境」などという、「初老」よりもなじみのない言葉を使うのは、説明として不適切・不親切です。

これらの辞書には、人に意味をわからせようという態度が、微塵も感じられません。とくに広辞苑はひどい。

では、座右の(辞)書、『日本国語大辞典(第2版)』を見てみましょう。初老とは、

「四〇歳の異称。また、老人の域にはいりかけた年頃。寿命がのびた現在では、五〇歳から六〇歳前後をさすことが多い。女性では月経閉止期、男性では作業能力が衰えはじめたときから老化現象が顕著になるまでの期間」

さらに、私の好きな『新明解国語辞典(第6版)』は、簡潔ながらも生々しい記述です。初老とは、

「肉体的な盛りを過ぎ、そろそろからだの各部に気をつける必要が感じられるおよその時期」

老境はおろか、老化や老人という言葉すら使わずに、初老を説明しているところが、実にすばらしい。

さて、「肉体的な盛り」はともかく、私も最近とくに、からだの各部には気をつける必要を感じています。

辞書の定義に照らせば、私はすでに初老かもしれません。しかしそれを認める気は、サラサラありません。

肉体はともかく、精神は充実しているつもりだからです。いや、記憶力はだいぶ低下しているかもしれません。

視力、聴力といった、知覚機能も、残念ながら低下していると言わざるを得ません。

しかし、好奇心とか想像力とか空想や妄想などの精神活動は、意外と維持できているか、むしろ旺盛です。

世の人々は、何歳からを初老と考えているのか。NHKの調査によると、平均値は57.0歳だったとか。

ただし、男性の初老は55.5歳、女性が58.4歳という、承伏しかねる較差があります。

とくに、10代の回答者の平均値は48.6歳だったようで、彼らから見れば、私などすっかり老人なのでしょう。

一方で、50代の回答者による初老の年齢は、59.1歳でした。自分らはまだ違うぞと、そういう意思表示です。

今日は私の、55歳の誕生日でした。四捨五入すると、やばいです。