幼い子どもの持ち物は、親が選んで買って持たせます。やがて成長すると、自分で選びたがる時期が来ます。
思い出すのは、次女が小学6年生になって、修学旅行に持って行く物品を準備したときのこと。
旅行の前日、娘はお泊まりセット(歯ブラシと練り歯磨き)を買いに、近所のスーパーに行ったようです。
さんざん時間をかけ、選びに選び、自分が最高に気に入った物を買い、嬉々として帰宅してきたのでした。
細い円筒形の透明なケース、ファスナーがスムーズで、色が水色で、歯ブラシ先にカバーがあって・・・
買ってきたお泊まりセットは、全ての点において最高であると、私にじっくり披露してくれます。
初めて自分が自分のために選んだ物が、嬉しくてしかたないのでしょう。
お父さんも、お仕事に持って行くお泊まりセットを持っているよ、と私が言っても、娘は聞く耳を持ちません。
じゃあ、比べてみようか、と私は自分の歯ブラシセットをカバンから出して、娘の目の前に差し出しました。
それは、娘が買ってきた物とうりふたつ。色も同じ、形も同じ。つまり、同じ製品なのでした。
当直用に、以前近所のコンビニで私が買っていたものです。偶然にも、娘は同じものを買ってきたわけです。
ここまで趣味が同じだとは、私も驚きましたが、私以上に驚いたのは、いや落ち込んだのは、娘の方でしょう。
同じ物を持っていることなど、私の胸の内にとどめておけばよかったのに、私も大人気無いことをしました。
それ以来でしょうか、父娘の会話が減ったのは。でも会話は減っても、気持ちはみなわかっているつもりです。