川内原発ついに再稼働

福島第一原発の事故後、新規制基準下で初めて、川内原発が本日再稼働し、さきほど臨界に到達したようです。

世論調査では過半数の国民が支持していないなかで、およそ2年ぶりの、原発稼働です。

その原発が立地しているのは、鹿児島県薩摩川内市です。2004年に周辺町村と合併する前は、川内市でした。

原発を所管する経産相の宮沢洋一氏は昨年、「かわうち原発」と発言して問題になったりしました。

まあそんなこともあって、いまや宮城県仙台市と同じぐらい(?)、よく知られる川内(せんだい)です。

天照大神の孫、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が、千の台を作るように命じた故事が、川内の由来とのこと。

そこに大きな川があったので、「千台」が「川内」になったと。ま、よくあるパターンですね。

私は1988年の10月から12月までの3カ月間、川内市(当時)内の民間病院に勤めていました。

住居は川内川河畔のビルの最上階で、窓からは、川内川の景色と、桜島の火山灰が飛び込んで来ました。

「川内大綱引き」という、年中行事があります。日本一の大綱引きと言われ、国道を封鎖して行われます。

1600年に薩摩藩主・島津義弘が、関ヶ原の戦いに向かう兵士を鼓舞するために始めたと、伝えられています。

上方と下方に分かれて、数千人が参加して大綱を引き合う、妨害OK、ケンカ一切お構いなしの祭りです。

川内の中心部は、川内川で南北に分断されていて、綱引きは国道上を南北方向に引き合う形になります。

じゃあ、川に架かる太平橋の上で行われるのかというと、そうではなく、橋の上を避けて北か南で行われます。

おそらく、安全のためでしょう。北側で1回、南側で2回、という3年サイクルにも、意味があるのでしょう。

川内川の河口には、南側に川内原発、北側に川内火力発電所があります。

しばらく中断していた発電所の綱引きは、南側の原発が盛り返すのでしょうか(あ〜あ、上手くないです)。

パキラに水やり

毎朝、クリニックのパキラに水をやります。挿し木から芽を出し始めたばかりの、伸び盛りの子どもたちです。

日に日に成長しているパキラに私は目を細めて、「お水あげようね〜」などと口にしているかもしれません。

植物に水を「やる」とか、ペットにエサを「やる」と言わず、水やエサを「あげる」と言う場合があります。

「遣る(やる)」という言葉は、「目下の者や動植物などに、何かを与える」という意味で使われます。

なので「あげる」というのは、相手を自分と対等と考えた、愛情あふれる表現なのです。

私の場合、第三人称としての動植物には「やる」を使うのに、直接相対すると「あげる」になるようです。

目下の者に対して使う「やる」ですが、昔は、対等な相手にも使っていたそうです。

一方で「あげる」も、昔は目上の人に差し出す意味だったそうですが、いまでは対等か目下相手の言葉です。

どうやら敬語は、長い間使われていくうちに、だんだんと敬語の程度が低下していくようです。

たとえば「食べる」は「食う」の謙譲語または丁寧語だったそうですが、すでに尊敬意識は失われています。

おかげで「食う」は、相対的に丁寧度の低い言葉になってしまいました。

そのうち、植物に水を「あげる」、犬にエサを「あげる」が、普通の使われ方になるのでしょう。

エサを「やる」などと言ったものなら、動物愛護の精神にもとると、叱られそうです。

同時処方禁止薬

同時に処方してはならない薬があります。

(1)相互作用によって、薬の効果が極端に減弱したり強まったり、あるいは副作用が出やすくなるもの

(2)似たような作用の薬のため、両方を同時に内服すると、過剰な用量になってしまうもの

このうち(1)は医学的な問題ですが、(2)は医学上のみならず、保険診療上の問題もあります。

診療報酬を審査する機関や、支払い機関(保険者)が、それをチェックして、クレームをつけてきます。

もちろん、診療報酬は査定され、医療機関は返金を要求されます。厳しいペナルティーです。

先日、ある患者さんに、糖尿病の薬Aを処方し、その4週間後に薬Bに切り替えたところ、査定されました。

薬Aと薬Bは、同時に処方することができない薬ですが、私はもちろん、同時処方したわけではありません。

問題は、処方日が、同じ月の月初めと月末だったことです。

支払い機関は、1カ月単位で審査するので、同じ月に処方した薬を、同時処方したものと勘違いしたのです。

なんとも理不尽な話です。気付かなければ、泣き寝入りです。

勘違い査定に対して、その間違いにちゃんと気付いて異議を申し立てる責任は、医療機関側にあります。

公的機関は一般に、医療機関に対して「性悪説」的態度で臨んでいるので、一事が万事、こうなるのです

虫よけか虫集めか

この時期、からだじゅうを蚊に刺されて、ひどい状態で来院するお子さんがいます。

蚊は人間の呼気の二酸化炭素を頼りに集まってくるそうですが、汗の臭いや体温も重要な誘引因子です。

大人よりも体温が高く、遊び回って汗をかく子どもがが蚊に刺されやすいのは、そういうわけなのでしょう。

わが家の庭に出ると、すぐ蚊に刺されてしまいます。生垣が伸び放題、雑草が生え放題で、蚊が多いからです。

ちょっとした用でごく短時間だけ庭に出るときは、なるべく早足で歩いて、できれば息を止めます。

虫コナーズや蚊取り線香は、屋外で使っても有効成分がすぐに拡散してしまうので、有効性は低いようです。

庭でバーベキューの際には、虫よけスプレーが必須です。うっかりスプレーし忘れたときに、よく刺されます。

体温や汗や二酸化炭素のほかに、虫は光に集まってくる性質があります。

その理由は、虫が飛ぶときの基準である月と勘違いしているとか、仲間と集まるためだとか、諸説あります。

若者がコンビニに、オジサンたちがネオン街に集まるのと、ある意味同じかもしれません。

ただし、虫に見えるのは紫外線です。だから紫外線をほとんど出さないLEDには、集まりにくいそうです。

虫たちのそのような性質を利用して、紫外線と二酸化炭素を出す、虫集め装置があります。

これは効果がありそう。わが家の庭にも1台設置しようと思い、さっそくネットで発注・・・

いやその前に、念のため、商品レビューを閲覧。すると、蚊よりも蛾ばかり採れるという意見が多数あり。

気持ち悪いので、買うのはやめました。ご近所の蛾まで全部、わが家におびき寄せて採取したくはないので。

鼻の日

8月7日は「鼻の日」。今朝の「林修の金曜言葉塾」では当然、芥川龍之介の『鼻』に触れていました。

せっかくなので、何十年かぶりに、今日は『鼻』をほじくり返して、いや、読み返してみました。

よく知られるようにこの話は、『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』に収載されている説話を題材にしています。

それらの古典についての記憶も曖昧なので、この際、その両者も読んでみました。

『今昔物語集』を学校で習ったことなんて、それこそ「今は昔」。

平安末期に成立したとされる、いろんな話を集めてみました的な、全1059話の、奇想天外な説話集です。

最後の方の巻には「宿報」「霊鬼」「悪行」などのサブタイトルが付いていて、なかなかそそられます。

その中の『池尾禅珍内供鼻語(いけのをのぜんちないくのはなのこと)』が、芥川の題材になりました。

『<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-574.html" target="_blank" title="宇治拾遺物語">宇治拾遺物語</a>』は、時代が下って鎌倉時代に編纂された「面白話まとめ」。ぐっと凝縮されて、全197話。

半数近くが今昔物語と重なっているので、事実上「厳選・今昔物語集」的な側面もあります。

その『鼻長き僧の事』を今昔と読み比べると、当然、ほとんど同じ内容ですが、ずいぶん読み易くなってます。

古典の2つは、異常に鼻が大きな僧の、その「鼻持ちならない」愚かさを描いた笑い話、という印象でした。

芥川の『鼻』はしかし、巨鼻コンプレックスをもつ僧と、彼を取り巻く人々の、互いの心理を描写した物語。

題材の面白さだけで終わらせないところが、さすがです。そこを夏目漱石が絶賛したのでしょうね。

医療に満足できない日本人

日本人の医療に対する満足度は、他国に比べて低いことが、国際調査で明らかになっています。

そこには日本(日本人)の特殊性が浮き彫りになっているので、改めて考察してみました。

客観的事実と、調査結果をまず、羅列してみます。

(1)国民皆保険制度があるので、経済的理由で、医療を受けられない人はいない(これはすばらしいです)

(2)誰でも自分の好きな病院を受診することができる(いわゆるフリーアクセス)

(3)病院受診率はダントツ(それに気づいていない日本人)

(4)必要以上に病院を受診しているとは思ってはいない(同上)

(5)待ち時間の長さは不満(医療機関は、それなりに工夫してるんですけどね)

(6)仕事があるので受診しづらい(だからウチは土日祝日診療やってますって)

(7)医療水準の高さは認めるが、治療への満足度も、医師への信頼度も低い(あらま)

(8)医療制度への満足度が低い(わがままでしょ)

(9)入院患者1人を診る医師や看護師の人数が、各国と比べてきわめて少ない(そうなんですよ)

まとめてみると、こういうことです。日本人は・・・

安い医療費で好きな病院を受診できるから、受診率はとても高いのに、受診しすぎとは思っていない。

いざとなったら大病院志向。地域の医者との信頼関係が築きにくく、あまり信頼もしていない。

受診率が高いのに医師数が少なけりゃ、当然、待ち時間が長く、診察時間は短くなる。それが不満。

高齢者は、医療費負担が増えつつあることが不満。現役世代は、高齢者の医療費を負担している現状が不満。

こんなに満足度の低い国民皆保険って、つくづく微妙な制度だと思います。よく破綻しないものです。

アタマジラミ

「シラミ(虱)」に感染して来院するお子さんが、ときどきいます。

当院で新たに診断することは、ほとんどありません。治療薬を処方することもありません。

たいていは、その感染の確認か、治ったかどうかの確認(登園許可証等の交付)のための来院です。

治療は市販のシャンプー等で行いますが、布団などの洗濯もしっかりやらないと、再発することがあります。

「シラミ」で思い出す事柄が2つあります。

(1)シラミは英語でlouse(複数形lice)。Riceのつもりでliceと発音して、外国人が驚いた、という笑い話。

(2)芭蕉の句「蚤虱馬の尿する枕もと」。ノミやシラミに悩まされても、馬の排尿に趣を感じるとはさすが。

子ども達の頭髪に寄生するのは「アタマジラミ」です。成虫よりむしろ、小さく光る卵がよく見つかります。

「アタマ(頭)」+「シラミ(虱)」=「アタマジラミ」であって、「アタマシラミ」ではありません。

こういう風に、濁音化するのが「連濁」です。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-650.html" target="_blank" title="前に">前に</a>、韓国語に関連して、似たようなことを書きました。

「仮名」は、音を表すだけの表音文字なので、実際の読みに即した文字を使うのが原則です。

なので「頭シラミ」は誤りで、「頭ジラミ」と書くキマリです。だから「回転すし」も誤りなのです。

しかし私はあえて、異を唱えたい。それじゃあまりにも、杓子定規で不親切です。

漢字を読めない子どもが、「ジラミ」や「ずし」という文字を見て、その意味が連想できるでしょうか。

「頭」や「回転」という漢字を読める者のみが、「アタマジラミ」や「カイテンズシ」と連濁するのです。

漢字を読めない者は、連濁のしようがないじゃないですか。

「漢字+仮名」という形の言葉においては、仮名を連濁表記しない、というのはだめですか。

「頭シラミ」と書いてあっても、読むときには「アタマジラミ」と変換する。日本人ならできるでしょう。

日本国語大辞典

文章を書くときには、時間とネタとパソコンのほかに、辞書が必須です。

誤字脱字だけでなく、言葉の取り違えや、用法の誤り・勘違いを、できるだけなくしたいからです。

間違いに気づかないまま、ネットで公開したら、後悔します。

たびたび辞書を引くうちに、だんだん「辞書好き」になりました。ときには、辞書を読みふけったりします。

日本語関係で手元にある辞書は、広辞苑、新明解国語辞典、三省堂国語辞典、新潮日本語漢字辞典などです。

NHKが発行している漢字表記辞典と日本語ハンドブックや、三省堂のてにをは辞典も、ときどき使います。

ネットなら、朝日新聞社の「コトバンク」を使いますが、その中身は「大辞林」と「デジタル大辞泉」です。

まあ、それはそれでいいのですが、もっとずっと、用例や由来などを、掘り下げてみたいこともあります。

「新明解」や「三国」が小辞典、「広辞苑」「大辞林」「大辞泉」が中辞典なら、やはり大辞典が欲しいもの。

それが、小学館の「日本国語大辞典」です。日本語の大辞典と言えば、これがほぼ唯一の存在のようです。

第二版は、全13巻+別巻1巻。ほとんど図書館で見かけるだけの大部です。全部買うと20万円を超えます。

欲しいけど、高すぎる。文筆家なら買うかもしれませんが、カルテとブログを書いているだけの私が買うか?

と、諦めかけていたとき、小学館のサイトに「ジャパンナレッジ」というのを見つけました。

「日本国語大辞典」のみならず、小学館のあらゆる辞典類を、まとめて検索閲覧できる、有料サイトです。

ただちに、会員登録しました。ケチなので、試しに、1カ月間だけ使ってみることにします。

紙の辞書とは異なり、どうしても所有欲は満たされませんが、安さと便利さにはかえられません。

BSL-4施設稼働へ

国立感染症研究所・村山庁舎の「BSL-4施設」の稼働について、厚労相と武蔵村山市長が合意したようです。

有効な治療法がなく、とくに致死率の高い病原体を「バイオセーフティー・レベル4 (BSL-4)」に分類します。

エボラウイルスもそのひとつ。これらを扱うことのできる研究施設が「BSL-4施設」です。

この施設の使命は、以下の3つあると考えられています。いずれも重要です。

(1)BSL-4病原体による感染症が発生したときの診断

(2)BSL-4病原体の基礎研究・診断法・ワクチン・治療薬の開発

(3)BSL-4病原体研究者の育成

世界中にBSL-4施設は、41カ所あるそうですが、先進国でそれが稼働していないのは、日本だけだそうです。

建設はしたものの、周辺住民からの反対によって、稼働ができずにいるわけです。

そもそも、日本にわずか2施設しか存在しないこと自体が、何をか言わんやです。しかも稼働していない。

では、他の国々では、住民の反対運動はなかったのでしょうか。そんなことはないでしょう。

施設の意義について、国が住民を説得し、住民が納得したからこそ、その国では稼働できているわけです。

ところが日本では、それができませんでした。住民を納得させられなかったからです。

これはちょうど、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の勧奨接種の差し控えと同じです。

日本人は、目の前の危険(ワクチンであれば副反応)ばかりが気になって、本来の目的を見失しないがちです。

建設から30年以上を経て、BSL-4施設が稼働に至ったのは、良くも悪くも、安倍政権の力かもしれません。

日本を、感染症のアウトブレイクやバイオテロから守ろうという、ある意味、国防のためとも思えてきます。

熱中症と熱射病

梅雨明けしたとたんに、熱中症が増えています。毎日のように、点滴が必要な患者さんが来院します。

昔は「日射病」と言っていましたが、やがて「熱射病」を経て、いまは「熱中症」が一般的な呼び方です。

日本救急医学会による熱中症の定義は、「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」です。

従来はその症状から、「熱けいれん」「熱失神」「熱疲労」「熱射病」の4つに分類されていました。

どれが重症なのか、わかりにくいですね(熱射病が最重症)。そこで新たな分類が提唱されました。

【 I 度】 現場にて対処可能

【 II 度】 速やかに医療機関への受診が必要

【 III 度】 採血、医療者による判断により入院(場合により集中治療)が必要

え〜っと、なんていいますか、あらゆる病気で使えそうな、ありきたりの分類になってしまいました。

このうち【 III 度】が「熱射病」に相当します。中枢神経症状や、肝・腎・血液凝固障害等を呈するものです。

そうなると、わざわざ「熱中症」という言葉を使わなくても、いいような気がしてきます。

【 III 度】が熱射病なら、【 II 度】は軽度の熱射病、【 I 度】はごく軽度の熱射病、ではだめですか。

もともと「熱中症」の「中」は、「暑気中(あた)り」の「中」です。

「毒」に「中(あた)る」から「中毒」です。「熱」に「中(あた)る」なら「中熱」じゃないのでしょうか。

それをどうして「熱中」症にしたのか。そこのところから、間違っていたような気がします。