ホテルオークラ東京の本館が、本日をもって閉館し、明日から、高層ビルへの建て替えが始まります。
文化的な価値も高く、取り壊し見直しの嘆願運動も起きるほどでしたが、計画通り進められるようです。
欧州のみならず、日本よりも歴史の浅い米国ですら、開業から100年以上の老舗ホテルが温存されています。
日本は寺社仏閣は温存しても、実用的な建造物を、最初の形のまま使い続けるという発想が足りません。
お前には関係ない話だろう、と言わないで下さい。私も1回だけ、オークラに宿泊したことがあるのです。
バブル真っ盛りの、1990年のことです。
当時、製薬会社主催の研究会には、旅費も宿泊費もメーカー負担で参加していました。古き良き時代でした。
ある医薬品の臨床治験に関わっていた関係で、メーカー主催の検討会のために、たびたび上京していました。
どういうわけか、東京の宿泊ホテルは毎回異なり、いつも一流。そのうち1回が、ホテルオークラでした。
タクシーで到着すると、まずその外観の風格に圧倒されたのち、メインロビーで度肝を抜かれます。
後にも先にも、これほど迫力があるロビーには、お目にかかったことがありません。
迫力があるのに威圧されるわけではなく、和風のたたずまいなのにインターナショナルな雰囲気でした。
あのような圧倒的な、日本モダニズムの空間が、はたして新しいホテルに引き継がれるのでしょうか。
外観もそう。多少個性を持たせたとしても、高層ビルというのはたいてい、似たり寄ったりになりがちです。
都心の一等地に、あえて低層ビルでいくという、これ以上ない贅沢な選択肢はなかったのでしょうか。
地上11階のまま、そのかわり地下50階建てにする、っていうのはどうでしょう。氷山みたいなビルです。