たとえ話の詭弁

屁理屈を言わせせたら、官僚の右に出る者はいませんが、その頂点ともいえるのが内閣法制局長官でしょう。

昨日の衆院平和安全法制特別委員会は、意味不明な「たとえ話」の応酬が、なかなか面白かったですね。

集団的自衛権は、全体としては違憲だが、一部を切り出したものは合憲だという理由は何か、という議論。

民主党議員がこれを、たとえ話にして質問しました。

(1)「もう腐っちゃった味噌汁の中から一杯限定して取っても、腐っているものは腐っている」

これに対して、横畠裕介・内閣法制局長官は次のように、二段階で答弁しました。

(2)「仮に毒キノコだとすれば、煮ても焼いても食えないし、その一部分をかじってもあたります」

(3)「フグだと、それは毒があるから、全部食べたらそれはあたりますけれども、肝を外せば食べられる」

横畠氏はまず、民主党の「腐った味噌汁」を無視して、誰も言ってない初耳の「毒キノコ」を登場させます。

野党が動揺したところでしかも、集団的自衛権は「毒キノコ」ではなく「フグ」なのだと、たたみかけます。

「フグ」のたとえ話が、なんとなく辻褄が合うものだから、なぜ「フグ」なのかという説明はナシです。

そのうち、集団的自衛権は全面的に合憲になるかもしれません。その時のたとえ話はおそらく、

(4)「きちんと工夫して養殖すれば、毒の無いフグもできます。丸ごと食べられます」

「火花」を読む

又吉直樹の小説「火花」が、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-165.html" target="_blank" title="芥川賞">芥川賞</a>の候補に選ばれたと、今朝から報じられています。

つい昨夜、テレビ番組の「アメトーーク」で、その又吉氏の「読書芸人」ぶりを見たばかりでした。

そういうわけで、これはタイミングなんだろうと思い、休診日の今日、「火花」を読むことにしました。

さて、読みたい本があるとき、入手経路はおもに、(1)通販、(2)書店、(3)電子書籍です。

電子書籍であれば、AppleのiBook版や、AmazonのKindle版を、価格1,000円ですぐ入手できます。

しかし今回は、せっかくなので、実体のある単行本を買おうと決意しました。

通販の悪い所は、本が届いた時にはしばしば、読みたい気分のピークを過ぎていることです。

ここは、気分が変わらないうちに書店に直行です。近所の紀伊國屋書店に、朝一番で行くことにしました。

紀伊國屋書店が入っているゆめタウンに、9時半の開店と同時に突入し、2階の紀伊國屋へ向かうと・・・

あらら、まだ準備中。どうやら書店は10時開店らしい。1階の喫茶店で、30分ほど時間をつぶします。

10時入店。店頭の目立つ場所に「火花」を発見。新刊本コーナーにも、平積みの「火花」を確認。

ここですぐに、「火花」を手に取ってレジに持って行くような、恥ずかしいことをしてはなりません。

それではいかにも、今朝のニュースを見て慌てて買いに来た客だと、見透かされてしまうからです。

まずは、付近の新刊本をひと通り見て回り、何冊か手に取り、ほほう、などという表情を浮かべてみせます。

そしておもむろに、おや「火花」ですか、最近話題ですね、ちょっと読んでみますか、という風に演じます。

そのような私の一連の仕草を、カウンターの中から店長が、ずっと見ていました。

感染と初期対応

韓国では、MERSの感染が拡大し、感染者165人、死者23人となりました。日本への上陸も心配です。

MERSは感染力が比較的弱いので、患者との濃厚接触を避ければ、感染するリスクは少ないと考えられます。

しかし逆に言えば、患者と濃厚接触した者を、どれだけ確実・迅速に隔離できるかが、とても重要です。

最初の患者と2次感染者が転院した、サムスンソウル病院での院内感染が、感染拡大の最大の要因でしょう。

この失敗を他山の石として、MERSが万一日本に上陸した際には、的確な初期対応をしなければなりません。

潜伏期の長い感染症なので、水際対策の効果は限定的です。発病後の初動が、何よりも重要です。

われわれ医療従事者は、受診者の病状と生活歴(韓国滞在歴等)には、とくに気を配らなければなりません。

日本でいま、MERS以上に問題となっているウイルス感染と言えば、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1339.html" target="_blank" title="日本年金機構の情報流出問題">日本年金機構の情報流出問題</a>でしょう。

最初のパソコンの「感染」が確認された際に、特別な対策を取らなかったことが、初動の最大の問題でした。

その10日後ごろになって感染が拡大し、ついにウイルスが「発病」、つまり個人情報が流出したわけです。

警視庁から連絡を受け、年金機構がパソコンをネットから「隔離」したのは、最初の感染の21日後でした。

年金機構だけでなく、厚労省内部の報告態勢の不備も、問題視されています。とにかく初動が甘いのです。

もしもMERSが上陸したとき、厚労省の初期対応は大丈夫なのでしょうか。

どうしてピロリか

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1348.html" target="_blank" title="ピロリ除菌治療">ピロリ除菌治療</a>、続けてますよ。もちろん断酒も。

胃がんの原因につながる細菌なので、除菌した方が良いのですが、どうにも危機感を抱きにくい感染症です。

もしかするとそれは、菌の名前「ピロリ」からくる、可愛らしい印象が原因かもしれません。

凶悪な病原体のはずなのに、ピロリと聞くと、なぜか力が抜けてしまいます。

NHKの幼児番組「にこにこぷん」の弱虫キャラクター「ぽろり」にも似た、おとぼけイメージです。

生後2,3週の赤ちゃんが、哺乳するたびに勢いよく嘔吐する、「肥厚性幽門狭窄症」という病気があります。

胃の出口を「幽門」といいますが、その部分の筋肉が厚くなって狭くなる病気です。

胃の入口は「噴門」といいますが、その部分を逆流して胃の内容物がまさに、噴水のように出てきます。

肥厚性幽門狭窄症は、第1子の男の子に多い病気です。点滴で応急処置し、手術で幽門の筋肉を切り広げます。

幽門のことを、ラテン語で「ピロルス(pylorus)」といい、ここから発見されたので、ピロリ菌だそうです。

さらに「ピロルス」の語源は、ギリシア語の「ピロロス(πυλωρός)」で、元々は門番の意味だとか。

その門番が、異常にムキムキになった病気が、肥厚性幽門狭窄症というわけです。

なお、「ぽろり」の本名を調べたら、「ぽろり・カジリアッチIII世」でした。

湿布も保険適用外へ

市販品と類似した医療用医薬品(市販品類似薬)の「保険はずし」が、湿布薬にも拡大しそうです。

すでに現在、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-862.html" target="_blank" title="うがい薬">うがい薬</a>を「単独で」処方した場合には、保険適用外になります。自費診療です。

ところが、治療目的なら保険が利きます。これって、とても重要なことなのに、意味がよくわかりません。

厚労省は、解釈に困るような事例についての見解を、「疑義解釈資料」というQ&A集にまとめています。

治療目的による、うがい薬の処方については、以下のような問答を掲載しています。

(問)うがい薬のみ投与された場合、当該うがい薬に係る処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料が算定できない規定となったが、治療目的でうがい薬のみ投与された場合は算定できると考えてよいか?

(答)そのとおり。処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料は算定できる。

「そのとおり」っていう答え方が、いかにも「上から」です。もっとソフトにできませんかね。たとえば、

(問)うがい薬のみ投与された場合、当該うがい薬に係る処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料が算定できない規定となったが、治療目的でうがい薬のみ投与された場合は算定できると考えてよいか?

(答)ですね。

いいんじゃないの、今風で。

そもそも、うがい薬の処方って、治療目的でなくて何だっていうのでしょう。まさか、予防目的?

予防のために医薬品を処方するなど、うがい薬に限らず、もともと保険は利かないはず。

だから厚労省がことさらに「治療目的ならうがい薬は保険適用」って言うことの、意味がわからないのです。

割れ鍋に綴じ蓋

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1349.html" target="_blank" title="昨日のブログ">昨日のブログ</a>で、「なべぶた」とすべきところを「うかんむり」と書いてしまい、ご指摘を受けました。

あわてて訂正したのですが、投稿からおよそ6時間にわたって、恥ずかしい間違いを晒してしまいました。

しかし待てよ、と。鍋の蓋の形は本当に「なべぶた」型なのか。今日はわが家の鍋を、総点検してみました。

まず、落とし蓋以外のたいていの蓋は、湾曲しています。

蓋の辺縁は、鍋の密閉度を高めるために、鍋の縁にピッタリとフィットするような形状に加工されています。

しばしば、蓋は鍋の縁よりもわずかに外側にはみ出ており、縁の上端よりも下まで回り込むものもあります。

これではもはや、「なべぶた」というよりも「うかんむり」じゃないですか・・・

アホなことばかり書いてると、読者の皆様は「おかんむり」かもしれませんが。

恥の晒しついでに白状しますと、「割れ鍋に綴じ蓋」は、つい最近まで「閉じ蓋」だと思ってました。

「割れた鍋にも、それに合う蓋があるものだ」と理解していたのです。それでも、しっくりくるでしょう。

「割れた鍋には、繕った蓋が釣り合うものだ」が正しいと言われても、それじゃあ身も蓋もないですよ。

「資料を綴じる」などという言葉は、あまり使わなくなりました。今なら「ホッチキスする」でしょうか。

「卵でとじる」というときも、「綴じる」だそうですね。それは知らなかった。

具の上に卵汁をかけるので「閉じる」雰囲気もありますが、具をまとめる意味で「綴じる」なんでしょうね。

となると、卵とじ専用の鍋は「綴じ鍋」ということになり、その蓋は「綴じ鍋の閉じ蓋」ということですか。

その蓋を破損したので修理して使った場合には、「綴じ鍋を綴じ蓋で閉じた」ということになりますか。

たぶんいま、読者の皆さまは「おかんむり」だと思います。

つくりが気になる

<span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';">からだの各部を表す漢字には、「にくづき」という部首の字が多いです。「肺」とか「胃」とか「腸」とか。

これらの漢字は「旁(つくり)」の部分にこそ、その臓器の意味が含まれているはず。これは調べなくては。

と思った矢先、さっそく「肺」で引っかかってしまいました。そこでまずは、「杮」の話から。

「こけらおとし」を漢字で書くと「杮落とし」ですが、「こけら」は「柿(かき)」ではありません。

そんな常識をわざわざ偉そうに書くな、と思われた方。すみません。少々我慢してお付き合い下さい。

今日のブログは、字の</span><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';">区別が付きやすいように、明朝体にしています。</span><span style="font-family: 'ヒラギノ角ゴ Pro W3';"><a id="fck_paste_padding"></a>なるべく拡大してご覧ください。

ただし、表示フォントの関係で誤表示または文字化けした場合は、意味不明となります。ご容赦下さい。

「柿(かき)」の旁の「市」は、「なべぶた」と「巾」です。「巾」は「なべぶた」の下にあります。

「市」は、人が集まって物を売買する場所の意味。音読みは「シ」、訓読みは「いち」。画数は5画。

「杮(こけら)」の旁「巿」は、「一」と「巾」です。「巾」の縦棒が「一」も貫いています。

「巿」は「フツ」と読み、膝掛けのことだそうです。画数は4画。

これらについては、異説もあるようですが、手元の漢和辞典では、そのような説明になっています。

さて「肺」です。本来の旁は「巿(フツ)」だそうで、体内から呼気を出すという意味があるそうです。

座っているときに、自分の吐息が膝の上に吹きかかるイメージでしょうか。膝掛けと関連付けるのであれば。

ところが、です。字をよく見ると「肺」の旁は「巿(フツ)」ではなく「市(シ)」になっています。

これは「読み書きを平易・正確にする」ために、昭和24年の当用漢字字体表で「字体整理」されたためです。

漢字の成り立ちを保つことよりも、書きやすさ・読みやすさが求められ、文字が統廃合されていきます。

かろうじて、「杮(こけら)」が生き残っているのは、もともとあまり使われない漢字だからでしょうか。

こんな風に引っかかったものだから、なかなか「胃」や「腸」や「肝」に、たどり着けないでいるのです。

(追記)

最初、「なべぶた」と書くべきところを間違えて「うかんむり」と書いてました。訂正しました。

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ピロリ三次除菌

また出ました、ピロリ君(菌)。私の話です。いままで2度も除菌治療をしたのに、しぶといヤツです。

3度目の除菌(三次除菌)をすることになりました。

ピロリの除菌は通常、「胃酸分泌抑制剤+抗菌剤」で行います。

除菌そのものは抗菌剤の働きですが、胃が酸性だと抗菌剤が効きにくいので、胃酸分泌を抑制するのです。

胃酸分泌抑制には、「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」という、強力な制酸剤を使います。

抗菌剤は、ペニシリン系の抗生物質と、別系統の抗菌剤の2剤を併用します。

一定の病状(病名)と検査所見があれば、ピロリ除菌療法は保険適用となります。ただし2回目まで。

私のように3回目となると、保険が利きません。自費診療です。薬代は1週間分で約2万円。高い。

三次除菌には、なるべく強い胃酸分泌抑制剤と、とくに強い抗生剤を使います。

しかも、これらの薬剤はいずれも、通常の用量の倍量を服用します。副作用の心配も、大いにあります。

なので除菌中は、一次の時も二次の時でもそうですが、断酒が必要です。

強力な薬剤の代謝(解毒)を受け持つ肝臓を、それ以上酷使してはならないからです。

というわけで、今晩から断酒しています。1週間のガマンです。こんな季節に、悔しいです。

うっかりビールを飲みたくならないように、しばらくは、梅雨のジメジメした天気が続いてほしいものです。

武蔵ヶ丘

昨日の豪雨がウソのように、今日の熊本はよく晴れて、真夏日となりました。

宮本武蔵は、その晩年を熊本で過ごしました。あ、天気の話はもう、終わっています。

武蔵が眠るとされる墓は何カ所かありますが、私の通勤路のそばの、武蔵塚公園もそのひとつ。

死後も藩主を見守りたいという遺言により、その豊後街道に面した場所が墓所(武蔵塚)となったわけです。

これにちなんで、武蔵塚から東に少し進んだ辺りが、「武蔵ヶ丘」という地名になりました。

その「武蔵ヶ丘」はしかし、熊本市北区武蔵ヶ丘と、熊本県菊池郡菊陽町武蔵ヶ丘とに分かれています。

熊本市の武蔵ヶ丘には「武蔵小学校」があり、そのすぐ近所には菊陽町の「武蔵ヶ丘小学校」があります。

菊陽町の方が先に学校名を決めたので、熊本市の方は武蔵ヶ丘小学校にできなかったそうです。

熊本市の「武蔵中学校」と菊陽町の「武蔵ヶ丘中学校」も、ごく近所です。名前の由来も同様でしょう。

それらの地名の「武蔵ヶ丘」には、カタカナの小さい「ヶ」が使われています。

しかしその字は本来「ヶ」ではなく、「箇」の略体「个」、または「箇」のタケカンムリの片方だそうです。

少し前まで「2歳3ヶ月」などにも「ヶ」を使っていましたが、現在では「カ」か「か」を使うのが原則。

小さい「ヶ」は、地名などの固有名詞で使われるだけになったようです。

幼少期に住んでた防府市の、「石ヶ口(いしがぐち)」という地区名を思い出します。通称「いしけろ」。

「けろ」という、カエルっぽいのが面白くて、私たち小学生はもっぱら「いしけろ」と呼んでいました。

ところが最近、ふと地図を見たら「石が口」になってました。

どうやら固有名詞の「ヶ」も、淘汰されつつあるようです。おかげで「いしけろ」も消滅です。

緊急速報のアラーム

熊本地方は、今朝から豪雨です。大雨洪水警報が発令されています。

大雨による避難勧告の緊急速報が、何度も私のiPhoneに届き、そのたびにアラームがmax音量で鳴りました。

診療の邪魔になるので、2度ほど警報を経験したところで、マナーモードに切り替えました。

ところが、そんなのはお構いなしです。3度目の速報は、マナーモードでも大音量で鳴り響きました。

マナーよりも警告優先なのです。緊急時に、マナーもへったくれもないのです。

でも、私の所在地には直接危険のない速報だっただけに、どうにかならんかな、と思った次第。

思いつくのは映画館です。電源を切らずマナーモードにしていたら、今朝のアラームは鳴っていたはず。

みんなが鳴ればお互い様かもしれませんが、きちんと電源オフにしていた人は、ムカついたでしょうね。

地震の多い関東地方ではどうなのか。ネットを見たら、震災直後にそのような話題が頻発していたようです。

多くの皆さんは慣れているのか、電源は切らず、アラームは鳴らし、映画は見続ける、との意見でした。

一部の映画館では、携帯電話等の電波をブロックする「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-175.html" target="_blank" title="通信機能抑止装置">通信機能抑止装置</a>」を備えているそうです。

この際、すべての映画館でこの装置を導入し、緊急速報への対応には映画館が責任を持つ、で良いのでは。