ここか、そこか

子どもの腹痛はたいてい、ウイルス性胃腸炎が原因ですが、虫垂炎や便秘やその他の疾患も念頭に置きます。

腹部をあちこち触わって「硬さ」を診たり、少し押さえてみて「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-236.html" target="_blank" title="圧痛">圧痛</a>」の有無を探ります。

「ここ痛い?」「うん」「ここも痛い?」「うん」と、どこを押さえても痛いと言う子どもがいます。

でも、あまり痛そうな顔ではありません。

こんどは同じ場所を押さえて、「ここ痛くない?」と聞くと、やはり「うん」という返事だったりします。

そんなときは、最後にもう一度「どこが痛かった?」と尋ねると、「ここ」と教えてくれる場合もあります。

「ここ?」と再確認すると、小さな子どもはたいてい、「ここ」と答えます。

ここです、今日言いたいのは。いわゆる「こそあど言葉」、「ここ」「そこ」「あそこ」の使い分けです。

自分に近い場合「ここ」、相手に近い場合「そこ」、両者から遠い場合「あそこ」を使うと、習いました。

おなかを押さえながら私は、「痛むのはここ?」と尋ねます。

相手のおなかではあるけれど、そこを押さえている時点では、その場所は私に近いと考えているからです。

これに対して大人は「そこです」と答えます。

自分のおなかではあるけれど、私が「ここ?」と尋ねたことで、私サイドに視点を移して答えたわけです。

ところが小さな子どもは「ここ」と答えます。押さえられている場所は、あくまで自分のおなかだからです。

視点を相手側に移すことができるようになると、「そこ」と答えるようになるのでしょうね。

何歳からなのでしょう。調べてみることにします。

勤務医の過重労働

病院勤務医の過労死や過労自殺が、ときどき起きて問題となります。人手不足による過重労働が原因です。

その勤務医の実体を十分に把握していながら、厚労省はなかなか有効な手を打てません。なぜなら、

(1)勤務医の人数が現状のままで、残業だけを制限したら、診療が成り立たたない

(2)厚労省の官僚自体が、長時間の残業をしているので、他人に厳しく言いにくい

中央官庁のなかでも、残業の長さでは厚労省が断トツだそうで、「強制労働省」と揶揄されています。

その厚労省が今年、残業問題を解決しようと、動き始めています(動き始めているように見えます)。

(1)残業の多い民間企業への、監督・指導を強化する

(2)厚労省職員の、22時以降の残業を原則禁止する

厚労省のサイト内に、「先輩30人に聞きました」という面白いページを見つけました。

回答者のうち4分の3の厚労省職員が、平均的な退庁時間は22時以降と答えています。

その厚労省がはたして、自らの22時以降の残業を禁止できるのか。実効性に疑問はあります。

塩崎恭久厚労相曰く、「まず隗(かい)より始めよ」だそうです。

厚労省の残業が減らなければ、病院を指導しにくいでしょうから、期待するしかありません。

まづゎ、こんにちゎ

「それでゎ」とか「じつゎ」などの、小さい「ゎ」が、おもに若者の間で使われています。

調べてみたら私も1年前、ブログで「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-905.html" target="_blank" title="まずゎ">まずゎ</a>」を使ってました。いま思えば、「まづゎ」にすべきでした。

日本語の乱れを嘆くのは簡単ですが、なぜ「わ」ではなくて「ゎ」なのか、それを考察してみました。

まず(まづ)、「ゎ」には、語尾を小さな音量で話すような、力の抜けたイメージがあります。

語尾の強さの順に並べると、「それでは」>「それでわ」>「それでゎ」、みたいな感じです。

言葉の発音はどうも、長い間のうちにだんだんと、エネルギーを使わない方向に、変わっていくようです。

アクセントの「平板化」も、原理は同じなのかもしれません。

「こんにちは」と書いて、なぜ「コンニチワ」と発音するのか、という問題にも通じるものがあります。

「今日(こんにち)はご機嫌いかがですか」などの、挨拶言葉が省略されたものが「こんにちは」です。

元々はそれを、字の通りに発音していたのだけれど、昔の「は」の発音は「ファ」だったそうですね。

つまり「こんにちは」の発音は「コンニチファ」です。それが「コンニチワ」に変化したといわれています。

「ファ」の発音にはエネルギーが必要なので、力が抜けて、発音しやすい「ワ」になったという流れです。

しかし、「コンニチワ」という読みが定着しても、表記は「こんにちは」が正しいとは、不合理な話です。

若者が書く文章は、メールやLINEなど、その実体は会話文。だから発音通りに書くことには、一理あります。

「現代仮名遣い」の規則など気にせず、「こんにちわ」と表記し、さらに脱力して「こんにちゎ」なのです。

やがて「ヮ」も脱力して「ァ」になるのでしょう。「まづゎ」は「まづぁ」を経て「まざ」になりそうです。

骨太の方針

経済財政諮問会議が、 いわゆる「骨太の方針」の素案を発表しました。

内閣府のサイトで、素案の資料を見てみると、そのタイトルにはこうあります。

「経済財政運営と改革の基本方針2015(仮称)(素案)」

「骨太の方針」が通称なら、「経済財政運営と改革の基本方針」は仮称のようです。正式名称は何ですか?

しかもタイトルの下には、「平成27年6月22日(一部調整中)」とあります。

おそらく、正式名称でもめているのでしょう。

さて、次のページを見ると、目次です。いちばん上に書いてあるのは、もちろんこうです。

「経済財政運営と改革の基本方針2015(仮称)(目次)」

どうしても(仮称)は、はずせません。律儀です。(仮称)まで含めての、正式名称かもしれません。

方針の内容は、4つの「章」からなります。もっともページが割かれている第3章のタイトルは、こうです。

「『経済・財政一体改革』の取組 ー 『経済・財政再生計画(仮称)』」

これも(仮称)です。細かい名称など、重要ではないのです。骨太なのです。小骨は要りません。

問題は、その「方針」の中身ですが、それはまたいつか考察します。とりあえず今日は、骨だけです。

洗濯機閉じ込め

ドラム式洗濯乾燥機に閉じ込められた7歳の男の子が、窒息して亡くなるという、悲しい事故が起きました。

うっかりした行為で生命を奪うような機器が、どこの家庭にもあることに、あらためて気付かされました。

洗濯機は、その日に届いたばかり。業者が設置する様子を、男の子は興味深そうに見ていたそうです。

その年頃の男の子の、好奇心をかき立てるには余り有るほどの、最新装置だったのです。

午後11時に寝かしつけられたはずの男の子が、なぜか真夜中に、事故に遭いました。

夜中に目覚めた時、その洗濯機を見たくてたまらなくなったのでしょうか。

寝たふりをして、母親が眠りに付くのを、じっと待っていたのかもしれまん。

男の子は、洗濯機のドラムの中に入りました。

探検だったのです。そこに入ってみたら、どんな具合なんだろう。男の子はみな、そう思うものです。

ドラムに入り、ドアを閉めました。

秘密基地のような空間では、より完全に密閉されてみたくなります。男の子がドアを閉めるのは当然です。

ドアは内側からは開けられない構造のため、男の子は脱出することができなくなりました。

ここです。唯一最大の問題は、この構造だと思います。

「ドラムの蓋は必ず閉めておく」「子どもからは目を離さない」「危険であることを子どもに教える」

こんな精神論では、ダメです。うっかり蓋を閉め忘れることもあるでしょう。子どもの行動も読めません。

何が起きても、どのように間違えても、最悪の事態だけは避けられる仕組みにしなければなりません。

ドラム式洗濯乾燥機であれば、それは、内側からロックを解除できる機構に尽きます。

海外でも同様の事故が相次ぎ、韓国では、内側からドアを開けられるようにしたそうです。

今回の洗濯機が日本製かどうかは不明ですが、日本のメーカー各社は、直ちに対策を講ずるべきでしょう。

血圧を一日中測る

高血圧症の方も、そうでない方も、自分の血圧をときどき測ってみることには、大いに意味があります。

その絶対値だけでなく、朝晩の違いとか、最近上がってきてないかとか、そういう変化を知るのも重要です。

毎朝毎晩、血圧を測ってノートに記録して、グラフにして、毎月持参する、几帳面な方が多いです。

一方で、体調が良かったのでこの1カ月間、血圧はまったく測らなかった、という方もいます。

少なくとも高血圧で薬物治療中の方は、薬の強さが適正かどうかを確認するためにも、血圧測定が必要です。

医療機関で月に1回だけ測ったのでは、あてになりません。日頃の血圧測定が大事です。

「白衣高血圧」という言葉があるように、医者や看護師の前では、緊張して血圧が高めになったりします。

その逆に、診察時には日頃よりも低くなって、正常な血圧に見える現象を「仮面高血圧」と言ったりします。

どちらの呼び方も、私は好きではありません。白衣の有無にかかわらず、血圧は変動するものなのです。

起床時、仕事中、入浴後、飲酒後など、血圧はけっこう上がり下がりしています。

血圧の日内変動が大きい人の場合はとくに、毎日いろんなタイミングで血圧を測る必要があります。

夜間睡眠時も含めて、血圧を一日中測定する「24時間自由行動下血圧測定」という検査法も有効です。

Apple Watchに、今回は血圧測定機能が盛り込まれなかった(間に合わなかった)のは、少々残念でした。

次のモデルで血圧測定ができるのであれば、また購入したくなります。

でも考えてみたら、夜間睡眠時に装着して血圧を測るとなると、いったいいつ充電するのでしょうね。

かかりつけ医の報酬

高齢化社会の進展をにらみ、厚労省は「かかりつけ医」と「在宅医療」を推進しようとしています。

在宅医療にも、さまざまな問題(ドタバタ)があるのですが、今日は「かかりつけ医」のドタバタ話です。

昨年導入された「地域包括診療料」は、まさにその「かかりつけ医」を作るためのインセンティブでした。

医者が「かかりつけ医」になると、通常の診療報酬に、地域包括診療料を上乗せすることができます。

患者1人あたり、毎月1,503点、つまり15,030円という、大盤振る舞いです。

もちろん、地域包括診療料を算定する医療機関には、24時間の患者対応などが求められます。

対象疾患も限られ、常勤医師3人以上の在籍が必要など、厳しい条件があります。

一方で患者が「かかりつけ医」にかかると、3割負担でも毎月4,500円ほど、出費が増えることになります。

制度導入の3カ月後(昨年7月)、地域包括診療料を届け出た医療機関は、全国でわずかに122施設でした。

全国に何万とある医療機関のなかで、この数字です。熊本県内だと2施設しかありません。

それから約1年たち、届け出ている医療機関は、121施設。昨年より1施設減りました。熊本は3施設。

たとえ届け出ても、実際には地域包括診療料を算定していない施設も目立つようです。

つまりこの「かかりつけ医」制度は、実質的に稼働していないのです。原因はわかりきっています。

医療機関にとって、算定要件が厳しいだけでなく、報酬の金額が大きすぎて患者に請求しにくいのです。

「かかりつけ医」を作ろうとしたものの、その過大なインセンティブが、逆効果になったというわけです。

厚労省の方、こういうのを何て言うかご存じですか。「絵に描いた餅」って言うんですよ。

最初の3カ月は無料

発表されたばかりの、定額音楽配信サービス「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1344.html" target="_blank" title="Apple Music">Apple Music</a>」は、日本でも6月30日から始まるようです。

欧米では月額9.99ドル。国内価格は未定ですが、980円という予想外に安い価格情報が飛び交っています。

ま、いくら安くても、私はやりませんよ。だって、980円の元を取れるほど、音楽聴く時間無いし。

Apple Musicは、最初の3カ月は無料という戦略が話題を呼びましたが、これが大問題でした。

その3カ月間、Appleは音楽会社・アーティストに楽曲使用料を支払わない方針だったからです。

初期の顧客獲得のために、アーティストに負担を押しつけて、Appleは損をしないやり口なのです。

これにはさすがにApple信者の私としても、疑問を感じました。Appleにしては、せこい話でしょう。

無料期間中の楽曲使用料など、Appleが全面的に負担するという、太っ腹な態度を見せてほしかった。

案の定、米国の歌手テイラー・スウィフトが、Appleに抗議して楽曲提供を拒否しました。

最悪なのは、これが他のアーティストにもどんどん広がること。Apple Musicの成否にもかかわります。

そのことを心配していたら、Appleは即日、方針を改めました。無料期間中も、楽曲使用料を支払うと。

テイラー・スウィフトからの抗議を受けて、わずか半日後の決定です。

「過ちては改むるに憚ること勿れ」を地で行く、迅速な対応には驚きます。

しかし、かえすがえすも惜しい。最初からそうしとけば、もっとカッコ良かったのに。

好きな勉強、好きな本

医学でも宇宙でも歴史でも数学でも昆虫でも音楽でも、いま知りたいことを勉強するのは楽しいもの。

知りたい医学知識を補強し、興味ある分野なら何にでも首を突っ込み、面白いと思った本を読む毎日です。

しかし、学校でやった勉強は、試験のため、成績のため、進学のため、という側面がありました。

勉強は手段であって、その結果何らかの目的を達成し、それがまた、別の目的のための手段となるわけです。

例えて言うなら、健全な肉体をつくるために、好き嫌いを言わず、何でもバランス良く食べるようなもの。

では、成人の肉体がそれなりに出来上がったとしたら、じゃあこんどは、何を食べる?

そりゃもちろん、好きなものでしょう。好きなときに、好きなだけ食べる。嫌いなものは、残す。

読んでる本が面白くなくなったら、途中で投げ出すので、読みかけの本が山ほどあります。

あとで興味が湧けば、また読み始めたりもします。買っただけで、まったく読んでない本も多数あります。

では、例の、又吉直樹の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1354.html" target="_blank" title="火花">火花</a>」はどうだったかというと、純文学にしては珍しく、短時間で読了しました。

書評は控えます。ネガティブなことは言いたくないので。

麻薬の小分け

トヨタ自動車の役員が、麻薬成分「オキシコドン」の錠剤の輸入を行った容疑で、逮捕されました。

ネックレスと偽って「輸入」された錠剤は、いくつかの包みなどに「小分け」されてあったとのこと。

「麻薬及び向精神薬取締法」を見てみると、禁じている行為は、以下の10項目のようです。

「輸入」「輸出」「製造」「小分け」「譲り渡し」「譲り受け」「交付」「施用」「所持」「廃棄」

まず、「小分け」「譲り渡し」「譲り受け」の3つは、漢字2文字の熟語にしてほしかった。

「分割」「譲渡」「譲受」にすれば、ずいぶんスッキリします。次の国会で、ぜひ改正してもらいたい。

それにしても、どうしてわざわざ法律で「小分け」が禁じられているのでしょうね。

「譲り渡し」「譲り受け」「所持」が禁じてあれば、「小分け」を禁じなくてもいいような気もしますが。

「小分け」が麻薬拡散の手段だからなのか。「小分け」されると見つけにくいから困るのか。

トヨタの役員が怪しいのは、オモチャのネックレスで偽装して、しかも錠剤を小分けしていたことです。

罪悪感もなく、医療用医薬品を持ち込むだけなら、隠す必要も、小分けにする必要もないはず。

驚くべきは、その国際宅配便のパッケージから、麻薬を発見したことです。麻薬犬のお手柄でしょうか。