病名と地名・人名

「新たな感染症の名称を定める際には、その中に、地域、国名、人名、動物の名称を含むべきではない」

WHOが先日発表した指針です。その例として「日本脳炎」などが挙げられています。

もちろん、すでに使われている病名を改称していく、という話ではありません。次からは、ということです。

しかし今後、名称変更を求める動きが起きれば、既存の病名が変わる可能性は、あるかもしれません。

動物愛護の精神からも、「狂犬病」などは、真っ先にやり玉に挙げられそうです。

「豚インフルエンザ」や「鳥インフルエンザ」も、動物虐殺につながるので、本来はNGだとされています。

地名で言うなら、「エボラ出血熱」や「ラッサ熱」などのウイルス性出血熱は、軒並みアウトですね。

胃腸炎を起こす「ノロウイルス」は、「ノーウォークウイルス(Norwalk virus)」の省略形です。

米ノーウォーク州で集団発生した胃腸炎患者から検出されたので、その名が付きました。

「ノロ」に略したので、ノーウォーク州民には好都合ですが、日本の「野呂」さんが黙ってはいません。

いや、冗談ではないのです。国際微生物学連合では「ノロウイルス」を使わないように求めています。

となるとこんどは、ノーウォーク州民が反発しそうです。

ノロと似たような胃腸炎を起こすものに「サポウイルス」があります。「サポ」の由来は「サッポロ」です。

札幌市で集団発生した胃腸炎患者から、検出されたウイルスだからです。生牡蠣などから感染します。

こちらはどう考えても、「サポウイルス」のままがよさそう。「サッポロウイルス」ではイヤでしょう。

「ウイルス」のかわりに「ビールス」と言ったものなら、「サッポロビールス」になってしまいます。