医療の現場では、医師は全面的に信頼されているのであり、その信頼に応えるのが医師の義務です。
そのために医師がなすべきことは、診療が正しく誠実であるか、ということに尽きると思います。
長年の経験と豊富な知識に裏打ちされた、真摯な態度、的確な判断、丁寧な説明が、診療に求められます。
しかし最近、私が反省しなければならないのは、最新の医学論文などを、あまり読まなくなったことです。
ましてや、学会活動(学会への参加、症例報告、研究発表など)も、ずっと怠っています。
学会で報告されたさまざまな新知見は、その1年後に論文となり、さらにその1年後に専門書に載ります。
書籍を読んで得る医学知識と、学会で目にする情報とでは、ずいぶんとギャップがあるのです。
そのようなことを反省しつつ、今年度は少しでも学術的な活動をしたいと、あらためて考えた次第。
ブログなど、ほどほどにしとけ、と言われそうですが、これについてはまあ、ご容赦を願います。
私と世の中(の一部)をつなぐ、コミュニケーションのひとつなので。
しかし、ブログにしてもメールにしても、外へ向けて発信する以上、その内容は正確でなければなりません。
いちど発信されたデジタル情報は、場合によってはどんどん拡散し、訂正も削除もかなわなくなります。
その意味で、私の文章の誤りや問題点に気付かれた方は、傷の浅いうちにどうぞ、ご指摘ください。
今後もいっそう精進しつつ、当ブログもできるだけ中断しないように頑張ってまいります。
長くなりますが、ここで敢えて、今年の東大教養学部の卒業式での、石井学部長の式辞をご紹介します。
昔、東大総長が語ったとされる「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」という発言に触れています。
じつはこの「名言」は、次の3つの点で誤りであると。受け売りですが、かいつまんで書くとこうです。
(1)もともと東大総長のオリジナルではなく、引用文だったのに、マスコミが総長の発言のように報じた
(2)オリジナルの文と総長の原稿は、表現も内容もかなり異なっていた
(3)総長は原稿のこの部分を読み飛ばしていたのに、マスコミは総長の発言ではなく、原稿文を元に報じた
総長のオリジナルでもなければ、そもそも発言すらしていない「名言」が、一人歩きしたというわけです。
「必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること」学部長のこの言葉が、私にも刺さりました。