腹腔鏡手術問題

東京女子医科大学病院と群馬大学医学部附属病院は、「特定機能病院」の承認が取り消されるようです。

女子医大の取り消し理由は、昨年の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1005.html" target="_blank" title="プロポフォール問題">プロポフォール問題</a>」です。この件は、前に書きました。

プロポフォールを小児の集中治療で使うことが、本当に責められるべきものなのか、私には疑問です。

それよりも、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-37.html" target="_blank" title="平成13年">平成13年</a>の、心臓手術での執刀医のミスを、別の医師になすりつけてカルテを改ざんした問題。

あのときの特定機能病院取り消しこそ、永久取り消しにしてもいいほどの、大問題だったと思います。

群馬大学の取り消し理由は、最近話題の「腹腔鏡手術問題」です。

これはしかし、1人の執刀医の問題と、病院としての問題の2つに分けて考えなければなりません。

そして後者(病院)の問題が大きいとの判断から、特定機能病院取り消しになるわけです。

このニュースを聞くたびに私は、「腹腔鏡」を「ふくくうきょう」と発音していることが気になります。

でもこれはマシな方。なにしろ何年か前までは「ふくこうきょう」と言ってましたから。

医療従事者は「ふっくうきょう」と言います。それ以外の言い方を、医療現場で聞いたことがありません。

考えてみて下さい。「腹筋」は、「ふくきん」ではなくて、「ふっきん」と促音で読むのが普通です。

であるならば当然、「腹腔」は、「ふくくう」ではなくて、「ふっくう」と促音で読むのが自然です。

メディアはどうしてそんなことが、わからないのでしょうね。

ギックリ腰

芸能ニュースでは、柳沢慎吾のギックリ腰が話題かもしれませんが、その前に、私がギックリ腰です。

昔、ギックリ腰だと思った<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-279.html" target="_blank" title="腰痛">腰痛</a>は、その数年後に、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-143.html" target="_blank" title="尿管結石">尿管結石</a>であったことが判明しました。

だから今回が、私の生まれて初めてのギックリ腰なのです。

先週某日、洗顔中のこと。前屈みになったとき突然、腰に「ギッ」という電気が走りました。

瞬時に私は、ギックリ腰と察知し、直ちに腰を伸ばしたため、電気はそこでストップ。

私の腰痛は、ギックリ腰には至らず、「ギッ腰」または「ギック腰」程度で済んだかに、思えました。

ところが痛みは徐々に強まります。さいわいその日は休診日。さっそく某整形外科に行きました。

レントゲン検査で異常なし。診察もそこそこに、コルセット装着と鎮痛剤・湿布薬の処方を受けたのでした。

その後腰痛は、3,4日でほぼ消失。コルセットも内服薬も中止できるまでに改善しました。

さて、腰痛でも肩関節痛でも、急性期を過ぎたらこんどは、適度なリハビリが必要となります。

患部を動かし、筋肉をストレッチし、局所の血流を改善して、病状の回復を促すわけです。

その、血流改善という部分に着目し、それならばと一昨日、深酒に臨んでみたのですが、これが大失敗。

アルコールによる血流改善はどうも、疼痛には逆効果のようです。どうしてなんでしょうね。

医者モノのドラマ

医者モノのTVドラマは、昔と違って、手術シーンなどにそこそこリアリティーがあります。

おそらくそれは、専門用語をあえてそのまま飛び交わせ、ドラマがテンポ良く展開するからでしょう。

その意味でのリアリティーを私が感じたのは、「ER緊急救命室」が最初だったかもしれません。

専門用語の意味は解説しませんので、想像で補いながら見てください、ということなのです。

だからたまに、専門用語を説明するような口調のセリフが出てくると、リアリティーぶち壊しです。

実際の医療現場で、そのようなわざとらしい会話などありません。用語はテロップで解説すればいいのです。

「DOCTORS2」も「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1127.html" target="_blank" title="Doctor-X">Doctor-X</a>」も「医龍」も、主人公はスーパー外科医です。

そんなヤツはおらん、という人物ばかりですが、まあそれがドラマだからしょうがない。

ツッコミどころ満載でも、面白ければヨシとしましょう。

「Dr.倫太郎」は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-788.html" target="_blank" title="堺雅人">堺雅人</a>主演なので期待して見ましたが、どうも私の趣味ではありませんでした。

「医師たちの恋愛事情」は、外科医が主人公らしいですが、タイトルがもうダメです。

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-978.html" target="_blank" title="総合診療医ドクターG">総合診療医ドクターG</a>」は、ドラマじゃないのに、ドラマのように展開するところが面白いですね。

手術という見せ場のある外科医とは異なり、内科医の診察過程は地道ですが、興味深く見せてくれます。

メスを手にした真剣勝負が手術なら、病因を追い求める診察は頭脳戦。

外科医がアクションドラマの主人公なら、内科医は推理ドラマの名探偵というわけです。

病児・病後児保育連絡票

いわゆる紹介状(診療情報提供書)には、診療報酬が250点ほど算定できます。これが診療情報提供料です。

ただし、紹介状を書いて報酬を得る(お金を取る)からには、守るべきルールがあります。

(1)診療に基づいていること(ちゃんと診察してから紹介状を書け)

(2)紹介する必要性があること(不要な紹介はするな)

(3)患者の同意を得ること(勝手に紹介して金取るな)

(4)診療状況を示す文書を添えること(名刺の裏に、よろしく、だけでは不可)

(5)紹介先医療機関ごとに、患者1人につき、月に1回限り算定できる

このうち(1)から(4)までは、当たり前のことばかり。問題となるのは(5)です。

というのも、小児の「病児・病後児保育連絡票」が、診療情報提供書と同じ取扱いだからです。

子どもなんて、月に2度3度と、風邪引いたり、おなかこわしたり、熱を出したりするもの。

そんな時、お母さんがたびたび仕事を休まずに済むためにあるのが「病児・病後児保育」制度です。

そしてその保育のために必要な書類が、「病児・病後児保育連絡票」というわけです。

そころがその大事な書類なのに、月に1回しか保険が利かないって、いったいどういう了見なのでしょう。

市役所に問い合わせたところ、2回目の病児・病後児保育連絡票の話となると、なぜか口が重いのです。

担当者曰く、2回目の連絡票は、次のいずれかの方法で対処してくださいと。つまり、医療機関に丸投げです。

(A)料金は患者さんに全額自費請求する(高額なのに?)

(B)料金は医療機関が負担する(つまりサービスしろと?)

(C)連絡票そのものを書かない(そりゃひどい)

このうち(A)は混合診療となるので、厚生局が難色を示しています。

さらに(B)は割引診療となり、これも厚生局に目を付けられかねません。

しかし(C)は、医師の良心に反する行いです。

結局、前述した(5)の制限が、医療現場の実情に合わないということです。

「かかりつけ医」を増やそうという政策であるのなら、病診連携を妨げる規定を作らないでいただきたい。

レモンジーナ騒動

サントリー食品がまた、新発売の飲料「ヨーグリーナ」の供給が需要に追いつかず、出荷停止騒ぎです。

先日は「レモンジーナ」で、同じように出荷停止したばかり。もう、ちゃんとしーな、と言いたくなります。

需要予測を誤ったのは、発売前にSNS等で知名度が上がったことが原因だと分析されています。

副社長は「ネット時代における新製品の需要予測は、改めて研究し直さなければならない」と間抜けな発言。

いまや新製品の宣伝は、テレビや雑誌などの従来メディアだけでなく、ネットを利用するのが当たり前です。

それを、宣伝にかけては最も定評のある企業であるサントリーが、「改めて研究」するとは驚きます。

むしろ、ネットをフルに利用して、大衆を扇動するぐらいの広告を打つのが、サントリー流じゃないの?

と思ったら、ヨーグリーナもレモンジーナも、発売前から積極的にキャンペーンを展開してたようですね。

見事にそれが当たって、情報がネットで拡散し、発売前から買い気配ムンムンの状態になっていたわけです。

メーカーにとって、これほど嬉しい盛り上がりはないでしょう。初期の大ヒットは、約束されたも同然。

それなのに、品不足。アホですか。清涼飲料ぐらい、大慌てでちゃっちゃと作りなさいよ。

一昨日発売されたばかりのApple Watchも、Apple新製品の例にたがわず、品不足です。

「品薄商法」と揶揄されても仕方ないですが、需要予測を誤ったサントリーとは理由が違います。

Appleは製品の完成度を上げるために、ギリギリまで改良を加えるものだから、生産が間に合わないのです。

意外とAppleも、きわどいことやってますよね。

ガンジー牛乳を求めて

朝晩食べている自家製ヨーグルトの原料は、いつも「阿蘇小国ジャージー4.5牛乳」です。不満はありません。

不満はないけど変化がほしい。人間の欲望にはキリがありません。となると次は「ガンジー牛乳」でしょう。

ガンジー牛とジャージー牛の原産地は、ともに英国海峡の、それぞれガンジー島とジャージー島です。

Googleマップで見るとこれらの島々は、フランス寄りに位置しています。ていうかほぼ、フランス沿岸。

なのにフランス領ではなく、かといって英国領でもない。英王室の直轄地だそうです。何それ?

島を領有していたフランスのノルマンディー公が、後にイングランド王になった、というのが経緯らしい。

脇道にそれてしまいました。ガンジー牛乳を求めて、久住まで車でドライブした話をするのでした。

昨日は晴天。ミルクロードを快走すると、野焼き後の「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1263.html" target="_blank" title="黒阿蘇">黒阿蘇</a>」はすでに、新緑に覆われていました。

遠くには中岳からの噴煙が立ち上り、東にたなびいていました。草を食む、たくさんの赤牛も見かけました。

ドライブが快適すぎて、ミルクロードから阿蘇スカイライン方向に曲がり損ねましたが、かまわず直進です。

話はすぐ脇道にそれるくせに、運転は頑固一徹。何があろうと後戻りはせず、ひたすら前に進みます。

その直進路には、マゼノミステリーロードという名前が付いていました。いつか自転車で来てみたい道です。

曲がり損ねたために、だいぶ大回りになりましたが、小国から東に曲がって、黒川温泉経由で久住に到着。

雄大な景色で、阿蘇とはまた趣の異なる久住高原に、目的地・ガンジーファームがありました。

ガンジー牛乳は1本(900ml)1,080円(税込み)と、なかなかのお値段。常用にするのは無理。

わずかに黄色味を帯びていて、濃厚な味をイメージしますが、とてもまろやかでコクがある。美味です。

もちろんヨーグルト(自家製)は、得も言われぬ上品さとなめらかさを併せ持つ、絶品に仕上がりました。

首相官邸のドローン

ドローンが、首相官邸の屋上で発見された事件が、波紋を広げています。

関与を認める男性が、福井県警小浜署に出頭したとか。原発政策への抗議だったとも、報じられています。

出頭したのがオバマ署というところが、訪米前の安倍首相へのメッセージだったのかどうかは不明です。

日本はいつも、先進技術に関わる対応が後手後手。ようやく今後、ドローン規制の法整備が加速しそうです。

これからドローンで悪事を働こうと考えていた方にとって、今回の一件は、まずい事案です。

とは言え、テロや犯罪行為にドローンを使う人間には、ドローンを法律で規制しても影響は少ないでしょう。

どっちみち、法に反してドローンを使うからです。

直接影響を受けるのは、仕事でドローンを使う人。使用や所有が、許可制や免許制になるかもしれません。

もっと困るのは、趣味や遊びでドローンを飛ばしている人たちです。免許制は敷居が高い。

従来のラジコンも含めて、無線コントロールによる飛行体はすべて、規制されてしまうことでしょう。

法整備が出遅れたものだから、逆にやみくもに厳しく規制するようなことも、あり得ます。

さて、どこまでが規制対象になるのでしょう。

(1)無線操縦による飛行体:間違いなく対象

(2)自律飛行をする飛行体:ドローンには違いないので規制対象でしょう

(3)有線操縦による飛行体:昔なつかしい「Uコン」とか、それこそ凧もヘリウムガス風船も含まれるかも

おそらく有線は対象外でしょう。でもうっかり風船から手を離すと、違法行為とみなされるかもしれません。

ヒモはしっかり握りましょう。手を離す予定の風船には、自律飛行体運用許可申請手続等が必要です。

使用上の注意の改訂

医薬品には「使用上の注意」という重要な情報が、「添付文書」に記載されています。

市販後に報告された副作用などの情報が、随時盛り込まれるので、たびたび改訂されます。

改訂されるたびに医薬品メーカーは、「使用上の注意改訂のお知らせ」という文書を、送ってきます。

全国約11万の医療機関と、約5万5千の薬局すべてに、おそらくその文書は郵送されているはずです。

そして、そのような文書は、ほぼ毎日のように、各医薬品メーカーから、送られてきます。

使用上の注意だけではありません。薬の箱のバーコードやシールに変更があれば、いちいち連絡してきます。

当院は院外処方なので、そのような医薬品の箱など見ることもないのですが、とにかく文書が届きます。

どれだけ膨大な文書の数なんでしょう。メール配信で済ませるわけにはいかないのでしょうか。

印刷や送付作業がムダ、郵送料も余計なコストだし、紙もムダ、ゴミも出る。

毎日毎日、いくつもの封筒を開封して、中身をチラ見して、ゴミ箱に捨てる、こちらの身にもなってほしい。

一定の形式のメールで送ってくれば、閲覧は簡単だし、保存管理もしやすいのに。

希望する医療機関にだけ文書を郵送し、それ以外の機関にはメールだけ配信する。それがエコでしょう。

もちろん、メール配信の機関には、送料等のコストが浮いた分、なにがしかの特典もあってしかるべきです。

負けず嫌い論

私が「負けず嫌い」だと<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1290.html" target="_blank" title="先日">先日</a>書いたところ、知人から次のようなご意見を頂戴しました。

「負け嫌い」ではなく「負けず嫌い」。どうして「ず」が付くのか。納得のいく説明をせよというのです。

面倒くせえ、とは思いながらも、この際、考えをまとめてみました。

手元の辞書には「『負け嫌い』と『負けじ魂』などの混同」とあります。誤用が定着したというわけです。

実につまらない説明です。だいいち、そのように思って、われわれは「負けず嫌い」を使ってはいません。

似た表現に「食わず嫌い」がありますが、「負けず嫌い」とは明瞭な違いがあります。

食わず嫌いは、食べてもいないのに嫌い、という意味であって、まだ食べてない。でも、食べる前から嫌い。

負けず嫌いは、負けたのにそれを認めたがらない、という意味でしょう。もう負けたけど、その状態が嫌い。

負けを認めたくない、自分は負けていないと思う余り、勢い余って打ち消してしまった、そんな感じです。

つまり、「負けず」+「負け嫌い」=「負けず嫌い」というニュアンスです。結局、辞書と同じでした。

次回は「食べず嫌い」と「おかず嫌い」の違いについて考察します(うそ)。

飲んではいけない薬か

また週刊文春が、「飲んではいけない<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1151.html" target="_blank" title="ジェネリック">ジェネリック</a>医薬品」などという、挑発的な記事を出しています。

「ジェネリックに変更したとたんに、薬疹が出た。その薬を止めたら、薬疹がおさまった」

このようなセンセーショナルな事例を、記事の冒頭に再び掲げています。

たしかにそのようなケースがあったのでしょう。当事者にとっては、それが事実なのでしょう。

しかし、数少ない事例のインパクトを利用して、ジェネリック全体をおとしめるやり方は、いかがなものか。

これはちょうど、衝撃的な副作用映像を報じて、子宮頸がん予防ワクチンをバッシングした手法と同じです。

たとえ、その薬に何らかの問題があったとしても、それを立証するには、統計学的手法を用いるべきです。

先発品と後発品(ジェネリック)の内服患者を、おおぜい比較検討してこそ、正しくモノが言えるからです。

「ジェネリック薬のほうが、薬疹が出やすいという印象を持つ医師や薬剤師は少なくない」

こんな非科学的な文章を平気で書くから、週刊誌の地位が、いつまでたっても上がらないのです。

「印象」という主観的な評価を、「少なくない」医師や薬剤師が持ったところで、何も立証できません。

医学は科学です。ジェネリックは先発品より劣っているのか、そうでないのか、先入観なく評価すべきです。

たしかに、製法やドラッグ・デリバリー技術など、先発メーカーには優れたノウハウが蓄積しています。

しかし個々の医薬品となると、ジェネリックの方が、先発品よりも優れているケースもあります。

たとえば、ある子ども用の抗生剤は、味の良いジェネリックの方でなければ飲めない子どもがいます。

先日TVで観た映画「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」では、興味深いシーンがありました。

薬を飲み始めて体が痒くなった患者が、薬をジェネリックに変えたら、痒みが消えたというエピソード。

冒頭の、週刊文春の記事とは真逆の事例です。このような経験は、実際に私にもあります。

そんなシーンをあえて盛り込んだのは、原作者である海堂尊氏からのメッセージなのかもしれません。