免許申請用の診断書

医師や看護師の国家試験に合格した人は、免許の申請手続が必要です。

そして申請に際しては、医師の診断書が必要です。いまの時期、その診断書を求めて来院する方が多いです。

診断書には一定の様式があり、以下の5項目について、医師が診断を下すことになります。

(1)視覚機能:目が見えない □該当しない □該当する

(2)聴覚機能:耳が聞こえない □該当しない □該当する

(3)音声・言語機能:口がきけない □該当しない □該当する

(4)精神機能:精神機能の障害 □該当しない □専門家による判断が必要

(5)麻薬、大麻又はあへんの中毒 □なし □あり

このうち(1)から(4)は「該当しない」に、(5)は「なし」に、チェックを記入するだけです。

ほぼ、儀式のような診断書です。かといって、まったくいい加減に診断しているわけではありません。

目の前の診断書を一緒に見ながら面談することで、それとなく(1)から(3)をチェックしているのです。

「麻薬やってませんか」と質問してみて、笑いが出るようなら、(4)と(5)もクリアしたと考えます。

この質問に対して、すごい剣幕で激高するようなら、(4)か(5)に問題ありと考えざるを得ません。

さいわいにして、いまのところ、そのような方に遭遇したことはありません。

牛乳街道をゆく

阿蘇外輪山の北側の尾根付近を走る県道が、通称「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1057.html" target="_blank" title="ミルクロード">ミルクロード</a>」です。

見渡す限り草原が広がる、絶好のドライブコースですが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1064.html" target="_blank" title="自転車で走れば">自転車で走れば</a>、天国と地獄の入り交じる道です。

今日は久しぶりに、車でミルクロードを走りました。目指すは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1241.html" target="_blank" title="ジャージー牛乳">ジャージー牛乳</a>の産地、小国町です。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1236.html" target="_blank" title="自家製ヨーグルト">自家製ヨーグルト</a>を作るのであれば、その原料たる牛乳は、産地で直接買うべきだと、そう考えたのです。

ミルクロードの最初の方は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1029.html" target="_blank" title="豊後街道">豊後街道</a>と一部重なります。沿線に<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1043.html" target="_blank" title="ハイテク工場">ハイテク工場</a>が点在する、普通の山道です。

その豊後街道に離れを告げる<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1187.html" target="_blank" title="二重峠">二重峠</a>のあたりから、いきなり視界が開けます。森が草原に変わります。

ただし今日の阿蘇は、ちょうど野焼きの後だったので、周囲一面、焼け野が原の真っ黒けでした。

「黒阿蘇」とでも表現しましょうか。独特の寒々しさを感じる、今だけの景色。私は嫌いじゃありません。

ミルクロードというぐらいですから、周囲には牧場が多く、よく見ると遠くにたたずむ牛の姿があります。

これは乳牛ではなく、肉牛のあか牛と思われますが、乳牛のジャージー牛は、外見があか牛と似ています。

外輪山をぐるっと4分の1周ほど回ったところで、南北に走る国道と交差します。

そこを左に曲がってミルクロードに別れを告げ、国道を北に進むとすぐ、南小国町。その北が小国町です。

戦後の畜産振興計画によって、一時は国内に3万頭近くいたジャージー牛ですが、高度成長期に激減しました。

ホルスタイン牛に比べて、乳量が少ないからです。質(乳脂肪率)よりも量の時代だったのです。

それでもかたくなにジャージー酪農を続けたのが、熊本の小国と岡山の蒜山(ひるぜん)だそうです。

いま小国と蒜山が、日本のジャージー牛乳の2大主要産地です。

同業者が次々に撤退していく事業を、創意工夫しながらあえて続けた経営判断が、実を結んだわけですね。

小国は北里柴三郎の生誕地。ジャージー牛乳を買ったあとで、北里柴三郎記念館にも立ち寄りました。

その話はまたいつか。

京都女の右のぼり

基本は、右足からである。

もちろんこれは、階段を昇るときの作法であって、階段を降りるときに足の左右を気にする必要はない。しかしそれを知らずに階段の降り口で立ち止まり、考え込み、挙げ句の果てに転落する事故が増えているという。

「京都女の右のぼり」とは、着物の女性が、後ろから見られていちばん艶やかに見える階段の昇り方を言うが、戦後には忘れられている概念だ。

現代の京都女性が、階段を右足から昇るのか左足から昇るのか、もしもそこに明らかな差があれば、戦前からの風習が無意識のうちに、京都の女性の中に息づいていると、そう結論することもできよう。

どのような風俗研究においても、その調査は対象者の観察を基本とする。

京都駅構内の階段下で現地調査を行っていた、某大学の男子学生はしかし、観察開始のわずか20分後に、警官に拘束されることとなった。

物的証拠があった。学生が手にしていたスマホには、階段を昇ろうとする女性達の下半身が多数、撮影されていたからである。

もちろん彼が猛然と反論したことは言うまでもない。これは実地調査であり、風俗研究であり、文化人類学であると。しかしそういう言い訳は、あとから何とでも言えるものだ。

犯罪行為かと疑われるような調査には例外なく、警察への事前通知が必要なのである。

もちろんこの調査計画を、あらかじめ警察に通知したところで、やめろと言われるのがオチではあるが。

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※おことわり

「基本は」で始まる別役実風の文を書いてみろ、という注文を受けたので、今日は実験的創作文です。

記述したような事実、作法、風俗およびその研究は、実在しません。

ATOKは毎年更新

日本語変換システム「ATOK」のMac用の最新版が、今ならキャンペーンでお買い得だとメールが来ました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1011.html" target="_blank" title="ベネッセ">ベネッセ</a>の顧客情報流出先としても知られる、ジャストシステムの製品です。

ATOKは「エイトック」と読み、「Advanced Technology Of Kana-Kanji transfer」の頭文字だそうです。

昔は、ジャストシステム発祥の地にちなむ「阿波・徳島」の頭文字だと、まことしやかに言われていました。

毎年、新バージョンが発売されます。こういうのは新しいのが好きなので、私は毎年買い換えています。

もったいない気もしますが、最新のMacのOSに対応させようとすると、ATOKも最新版が最適なのです。

それに、ダウンロード版はわりと安いし、複数台のMacへのインストールも可能なのでオトクです。

日本語変換が年々賢くなっているところも、評価できます。

入力ミスしても、正しく変換してくれます。「はっっしょう」と入れても「発症」が出てくるという具合。

今回の最新版では、たとえば「サンデーサン」と入力したら「ジョリーパスタ」に変換されるとのこと。

知りませんでした。サンデーサンがジョリパになっていたとは。ATOKのおかげで、勉強にもなります。

敬語の誤りや、慣用句の間違いや、重ね言葉にも、チェックが入るそうです。

「思いがけないハプニング」と入れたら、変換候補には「思いがけない出来事」が出てくるとか。

「頭痛が痛い」とか「馬から落馬した」と入力したら、どうなるんでしょうね。気になります。

ほらこんな具合に、最新版を買いたくてウズウズしてきました。これがジャストシステムの作戦なのです。

イノベーター理論

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1253.html" target="_blank" title="Apple Watch">Apple Watch</a>は、買おうと思っている人が少ないようだ、などというイヤな話をよく目にします。

信者として弁護するなら、iPodのときもiPhoneのときもiPadのときも、同じように言われていました。

私はApple信者である前に、基本的に「新しもの好き」です。なのでApple Watchは買いますよ、きっと。

有名な「イノベーター理論」によると、新製品に対する人々の購買態度は、次のように分類できるそうです。

(1)イノベーター(革新者):すぐに飛びつく人。Apple製品なら、私もこれです。

(2)アーリーアダプター(初期採用者):流行に敏感な人。一般の家電なら、私はこの位置。

(3)アーリーマジョリティー(前期追随者):やや慎重に、新しいものを取り入れる人。

(4)レイトマジョリティー(後期追随者):大多数が買ったのを見て、ようやく買う人。

(5)ラガード(遅滞者):世の中の動きに関心が薄く、伝統主義的な人。

イノベーターに共通する、そして私もそうである思いが、いくつかあります。

「伝道師になる」

とにかくその製品を、広めたい。そのことで何の見返りも求めません。広まることが、嬉しいのです。

「進んで人柱になる」

パソコンやソフトで人柱というのは、軽い意味で使います。喜んで失敗する覚悟のことです。

昨日、iPhoneをアップデートして「iOS 8.2」にしたら、「Apple Watch」なるアプリが組み込まれました。

「Apple Watchをお持ちの場合、ここでiPhoneとペアリングすることができます」だと。

まだ発売してないのに、気が早い。こうやって、イノベーターを誘い込むんでしょうね。

中国人は仕事が早い

中国製の、Apple製品の模倣品には、驚くとかあきれるよりも、もはや感心してしまいます。

なにしろ、早い、安い、上手い、の3拍子が揃ってますから。

新製品が出るたびに、本家に先んじて、箱までそっくりなコピー商品が発売されてきました。

このような模倣品は、山賊を意味する言葉を使って「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-652.html" target="_blank" title="山寨機">山寨機</a>(さんさいき)」とも呼ばれます。

ブランドバッグのコピー商品と違い、Apple製品のコピーは、起動させるとすぐ、ニセだとわかります。

なぜなら、iOSではなくAndroidが立ち上がるからです。しかし、そこがまた、ある意味「特別仕様」で貴重。

正規品にもない「便利な」機能が盛り込まれていたりもします。もちろん、激安です。

名称も楽しい。「iPed」とか「HiPhone」とか「iPnoho6」とか、笑わせてくれます。

来月24日の発売を、首を長くして待っているApple Watchですが、模倣品はもうすでに、発売されています。

「AW08」とか「IWATCH」がそれ。かなりよく似てるし、当然、激安。200元(4000円)台から。

ブランドバッグのニセモノは、物を入れて持ち運ぶという機能においては、オリジナルと同等です。

これで外見がそっくりなら、欲しがる人がいてもおかしくはありません。それは、見栄のためだからです。

Apple製品の偽物は、起動すればニセモノとわかるのに、作る人がいて、売る人がいて、買う人がいます。

ホンモノかどうかなど問題ではなく、ホンモノに見えるかどうかが、大事なのでしょうね。

ホワイトデー

「義理」チョコをもらった男性は、1カ月後には、女性にお返しをしなければならないシステムです。

「人情」に厚い私は、昨日、丹精込めて作った自家製ヨーグルトを、女性スタッフにお届けししました。

バレンタインのチョコは、手作りのものが最上位。なので自家製ヨーグルトなら、最高のお返しでしょう。

昔は「マシュマロデー」と言ってたような気もするのですが、いまは「ホワイトデー」が一般的です。

菓子業界としては、キャンペーン対象品目をマシュマロ以外にも拡大したかったのでしょう。

マシュマロのスペルを調べたら「marsh mallow」でした。植物の「ウスベニタチアオイ」の意味だとか。

「marsh」は沼地、「mallow」はアオイ科の植物を指すらしく、マシュマロは「沼地のアオイ」ということ。

米国では昔、この花からとった粘液で菓子を作っていたそうです。それが、マシュマロの原型になったと。

しかしこれを調べる前は、「mashed marrow」ではなかろうかと、私は勝手に予想していました。

「すりつぶした骨髄」という意味になりますか。「豚骨(とんこつ)」を連想したりもします。

その豚骨が、どうマシュマロに結び付くのか、その詳細を知りたくて辞書を引いたのですが、違いました。

それにしても、どうしてチョコのお返しがマシュマロなのか。誰がマシュマロデーと言い始めたのか。

諸説ありますが、そのひとつが、銘菓「鶴乃子」を作っていた博多の和菓子屋「石村萬盛堂」説です。

マシュマロ生地で餡をくるんだ鶴乃子の、売上げを伸ばそうと考えたのが、マシュマロデーだったと。

さらに、幅広くバレンタインデーのお返し文化を創ろうと、あえて「ホワイトデー」という名称に変えたと。

石村萬盛堂のサイトに、そう書いてあります。話半分に聞いといてください。

デッドセクション

本日開業した北陸新幹線は、東京、中部、東北、北陸の、4つの電力会社の電力供給地域にまたがっています。

そのために走行途中で、架線の交流電流の周波数が3回変わる、などというトリビアが新聞に出ていました。

もちろん周波数切替地点では、特別な工夫がなされているので、電気が途切れることはありません。

しかし電気の電圧が変わるとか、交流と直流が切り替わるような場合には、給電が途切れる区間ができます。

これをデッドセクション(無電区間)と呼びます。電車はその区間を、惰性で走ることになります。

全国の鉄道の、どこにどのようなデッドセクションがあるかは、鉄道ファンの方ならよくご存じでしょう。

残念ながら、私が知っているのは、常磐線の取手ー藤代間の1カ所のみですが、そこはよく知っています。

高1のとき、夏期講習を受けるため、茨城県の藤代にある親戚宅から都内まで、2週間ほど通ったからです。

古い記憶なのでやや不正確ですが、そのときの様子や心境を、思い出してみます。

デッドセクションに来ると、車内照明が切れ、空調が止まり、モーター音も消え、妙な静寂に包まれます。

惰性だけで進んでいる電車が、線路の摩擦で徐々に減速していくのがわかります。皆が息をのむ瞬間です。

なんとかこのまま、デッドセクションを抜けきって欲しい。乗客の願いはひとつ。思わず力が入ります。

と、パッと照明が点灯、モーターが音を立て、加速力が回復。みんなが安堵の表情で、肩をたたき合います。

ま、こんな感じ。

もしも、何かのトラブルで電車が急ブレーキをかけ、ちょうどデッドセクションで停車したらどうなるのか。

私は常磐線に乗るといつもそのことが心配で、デッドセクションに近づくたびに、ドキドキしていました。

善玉と悪玉の中身は同じ

コレステロールには善玉と悪玉がある、ということになっていますが、誤解を招きやすい表現です。

善玉も悪玉もありません。コレステロールという物質は、ただの1種類しかありません。

コレステロールは脂質の一種で、細胞機能や細胞膜の維持には必須の、たいへん重要な分子です。

脂質は水(血液)に溶けません。なので血中を運搬するときには、水に溶けやすい専用ケースに収納します。

全身に送り届けるときのケースがLDL、余分なコレステロールを回収するときのケースがHDLです。

ご存じのように、過剰なコレステロールは血管の動脈硬化を引き起こし、生活習慣病の原因となります。

そのコレステロールを運んで来るのはLDL。なのでLDLに収納されたコレステロールを、悪玉呼ばわりです。

その反対に、余剰コレステロールを回収するHDLに収納されたコレステロールは、善玉と称してあがめます。

医学用語では、たとえば良性腫瘍とか悪性腫瘍というとき、そこには明確な、医学的定義があります。

ところがコレステロールの場合は決して「良性」「悪性」とは言いません。あくまで「善玉」「悪玉」です。

同じコレステロールを、善悪2つの側面から見た呼び方、というニュアンスで考えればよいのでしょう。

大事なのはバランスです。LDLが多くてHDLが少ないのはいけません。一般的にはその考え方です。

しかし面白いことに、コレステロールは、高くても良い、とか、高い方が良い、などの意見もあります。

さまざまな<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-943.html" target="_blank" title="学説">学説</a>や俗説に加え、メディアの取り上げ方にも偏りがあるので、臨床現場は混乱気味です。

脈を数える

脈を診るのは診察の基本ですが、初診の方を除くと、あまりじっくりと触診していないことに気付きました。

これは反省しなければなりません。脈の診察は、脈拍数やリズムを知るためだけではないからです。

動脈の弾性や脈拍の性状や変動などを診ることで、動脈硬化や心機能や肺の状態などを知る助けになります。

脈拍数にしても、頻脈や徐脈が気になる状況でもなければ、正確に数えることが少なくなりました。

これは胸部聴診時の心音や、血圧測定時の音で、ある程度把握できるからです。

もちろん不整脈が疑われる場合には、話でもしながらある程度長時間、脈を触れ続けます。

脈拍数を数えるときには、15秒間だけカウントして、その数を4倍するのが一般的です。

ただしこの場合には、身近に秒針のある時計が必要です。

私は日ごろ腕時計をしていないので、診察室の掛け時計を見上げるという、やや格好悪いことになります。

研修医時代の話です。当時はちゃんと腕時計をして、その秒針を睨みながら脈を数えていました。

あるとき、脈の触診中に、腕時計をしていないことに気がつきました。どこかに置き忘れてたんでしょうね。

しょうがないので掛け時計を見上げると、これがなんと、秒針がない。

そのとき、ひらめいたのです。患者さんの腕時計があるじゃないか。われながら、よく思いつきました。

横目でその腕時計を見ながら、無事脈拍数をカウントしたのでした。

ま、しかし、診察中に腕時計は必要でしょう、やはり。というわけで、Apple Watchなのです。そう来る。