脈を診るのは診察の基本ですが、初診の方を除くと、あまりじっくりと触診していないことに気付きました。
これは反省しなければなりません。脈の診察は、脈拍数やリズムを知るためだけではないからです。
動脈の弾性や脈拍の性状や変動などを診ることで、動脈硬化や心機能や肺の状態などを知る助けになります。
脈拍数にしても、頻脈や徐脈が気になる状況でもなければ、正確に数えることが少なくなりました。
これは胸部聴診時の心音や、血圧測定時の音で、ある程度把握できるからです。
もちろん不整脈が疑われる場合には、話でもしながらある程度長時間、脈を触れ続けます。
脈拍数を数えるときには、15秒間だけカウントして、その数を4倍するのが一般的です。
ただしこの場合には、身近に秒針のある時計が必要です。
私は日ごろ腕時計をしていないので、診察室の掛け時計を見上げるという、やや格好悪いことになります。
研修医時代の話です。当時はちゃんと腕時計をして、その秒針を睨みながら脈を数えていました。
あるとき、脈の触診中に、腕時計をしていないことに気がつきました。どこかに置き忘れてたんでしょうね。
しょうがないので掛け時計を見上げると、これがなんと、秒針がない。
そのとき、ひらめいたのです。患者さんの腕時計があるじゃないか。われながら、よく思いつきました。
横目でその腕時計を見ながら、無事脈拍数をカウントしたのでした。
ま、しかし、診察中に腕時計は必要でしょう、やはり。というわけで、Apple Watchなのです。そう来る。