滅菌作業の重要性

テレビドラマで外科手術のシーンを見ると、いちばんあり得ないは、無菌操作のいい加減さでしょう。

手術において、すべての物品は、清潔か不潔のどちらかです。中間はありません。

手術操作で言うところの「清潔」とは、無菌状態であることを意味します。

滅菌した手術器具や材料、消毒薬で消毒した皮膚と体内が清潔なのであり、それ以外はすべて「不潔」です。

清潔かどうか自信がない場合は、すべて不潔とみなします。

手術するときの外科医の手(素手)も、不潔の範疇にあります。だから滅菌手袋をはめるのです。

消毒薬で手洗いをしておく理由は、万一手術中に手袋に針が刺さって、穴が開いたときのためです。

さて、自家製ヨーグルトを作るときも、器具の滅菌作業が必要です。

東芝のヨーグルトメーカーの取扱説明書には、熱湯水に浸して滅菌するようにと書いてあります。

大鍋で湯を沸かし、その熱湯で滅菌するのですが、これがかなり面倒くさい。水道代も電気代もかかります。

ところが、東芝の製品のOEM元であるタニカ電器の「ヨーグルティア」の取説を読んでみると、違うのです。

容器に少量の水を入れて、電子レンジで90秒チンすればよいと。これはお手軽な滅菌法じゃないですか。

さっそく電子レンジで滅菌してみたところ、どうもヨーグルトの出来具合が良くない。家族にも不評です。

発酵が不十分だから、固まり具合が悪いのでしょう。

滅菌法を変えて発酵が悪くなったということは、雑菌の混入が疑われます。つまり、滅菌が不十分と。

これは元外科医としたことが、滅菌作業を手抜きしてしまいました。次回からは、沸騰水法に戻しましょう。

ヨーグルトも、結構デリケートなんですね。

テレビ番組全録生活

テレビ番組の、全チャンネル全時間帯録画、いわゆる「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1118.html" target="_blank" title="全録">全録</a>」のレコーダーが、次々と発売されています。

私は新しもの好きなので数年前に導入しましたが、視聴スタイルが一変しました。そのメリットは、

(1)見たい番組を必ず見ることができる

見たい番組を見逃しません。夜遅く帰宅しても平気です。録画予約も不要。

(2)見たかった番組を見ることができる

放送後に話題になった番組は、あとで見ることができます。「見とけばよかった」が無くなりました。

(3)見たい時に見ることができる

放送時間帯に縛られず、入浴などを優先して、生活リズムを保つことができます。

(4)見ていた番組を二度見できる

3日前に報道ステーションで繰り広げられたバトル (古舘 vs 古賀) も、じっくりと見直すことができました。

(5)視聴時間を短縮することができる

番組は基本的に録画したものを見るので、CMや不要な部分はスキップ。内容によっては<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-156.html" target="_blank" title="早送り">早送り</a>で見ます。

(6)保存しておきたい番組を保存できる

見終わったあとで保存しておきたいと思ったら、その番組を保存できます。

では、全録生活で毎日テレビ三昧かといえば、違います。テレビを見る時間など、限られているからです。

もはや放送をそのまま、だらだらと見てはおれません。だから私にとって、いちばん助かるのは(5)です。

全録が普及すると、CMの視聴率が減るでしょうね。そのことが将来は、問題になるかもしれません。

桜と鰻と腕時計

桜の花は今が見頃。今朝からの雨も上がり、今日から2,3日が花見のラストチャンスかもしれません。

勤務医の頃は、毎年のように花見に行っていましたが、開業してからは、ずっと遠ざかっています。

自宅の前の中学校の敷地には、立派な桜の木が何本もありましたが、昨年全部、切り倒されてしまいました。

給食室を拡張するためらしいですが、なんとも残念でなりません。

さいわい、職場周辺や通勤路(豊後街道)にも、桜の並木があります。

今日は帰宅中に車窓から桜をしっかりと目に焼き付けた後、その記憶を頼りに、自宅で花見酒としました。

鰻屋の前を通りかかった後に、その匂いの記憶を頼りに自宅でご飯を食べるのと、同様の手法です。

花見といえば、苦い思い出があります。醜態をさらしたわけではありません(記憶している範囲では)。

10年ほど前の花見で、腕時計をなくしたのです。どこででも時計をはずす癖があったのが、災いしました。

じつは、その前の時計も、そのまた前の時計も、やはり紛失してきた歴史があります。

なくすたびに、次はなくさないようにと、より高額の時計を買うのですが、その効果はありませんでした。

どんどん値段が高くなり、紛失したときのダメージも、ますます大きくなります。

なので、いま持っている時計は、過去最高額のものですが、めったに使わないことに決めています。

来月買う予定のApple Watchは、たぶんiPhoneと同様に、所在地を探す機能がありそう。たすかります。

ダイレクトメール

職場に届いたダイレクトメール(封書)への、私の対応を大別すると、次の3つです。

(1)開封して、中身を読む

(2)開封しても、ろくに読まずに捨てる

(3)開封もせぬまま、ゴミ箱にポイ

このうち(2)か(3)かを決める基準は、言うまでもなく、差出人です。

宛名を指定せず、一定地域の全戸に郵便局がポスティングする「タウンプラス」というサービスがあります。

これを悪用したとも言える、巧みなダイレクトメールが、昨日届きました。その表書きの文面はこうです。

【裏】中高年の男性へお知らせです

【表】タウンプラスは『郵便局』が地域の皆さまへ役立つ情報をお届けするサービスです。

最初に裏面を見た私は、即座に(3)と判断、思わず捨てようとしました。

ところが表を見ると、どうやら郵便局からのお知らせらしい。ならば読んでみようかと、開封したのです。

しかし中身は、郵便局とは何の関係もない通販業者からの、高麗人参の広告。なんじゃこりゃ。

表の文言からは、郵便局から届いた情報という印象を与えますが、それが罠でした。

「郵便局から届いた情報」とは、郵便局から配達された情報ですよ、という意味だったのです。やられた。

ちょうど「消防署の方から来ました」という消火器販売業者と似た手口です。

航空機事故の原因

航空機事故の続報と、大塚家具の株主総会で、報道番組から目が離せない一日でした。

ジャーマンウイングス機の事故は、「副操縦士が故意に墜落させた」という、衝撃的な展開です。

でも本当にそうなんでしょうか。副操縦士が何もしゃべっていないことが、どうしてもひっかかります。

(1)自殺なら

自責の念なり、自暴自棄な発言なり、詫びなり、遺言なり、最後に何か叫ばないでしょうか。

それに、他にもっと穏便な自殺法はいくらでもあるはず。多数の乗客を巻き込むなど、どうしても疑問です。

(2)テロなら

最後の瞬間に、自分が信じる宗教や国家や団体に対する、何がしかの発言がありそうなものです。

(3)精神疾患なら

かつて日航機を逆噴射して墜落させた機長のような、意味不明な発言があるはず。

(4)恨みなら

航空会社か、乗客の誰かか、または世の中に対して、恨みつらみをぶちまけなければ意味がありません。

以上から、私は、

(5)急病

という可能性を、どうしても払拭できません。

急に意識を失って倒れ込み、その手で降下ボタンを押し続けてしまう。とても不運な事故だった可能性です。

何も証拠は無いのに、「故意に墜落させた」などと断じて報道されているのが、少し怖いです。

多数決の原理

大塚家具の株主総会は明日。どうでもいい話なんだけど、興味が無いわけでもありません。

株主総会に限らず、さまざまな重大局面で、多数決による決定が行われます。

最大多数が全体の意思を決定するのが、民主主義の大原則。なので少数意見が軽視される問題があります。

例外的に、ある少数意見を尊重しようということになったとしても、そのことを決定するのは多数の意見。

これは結局、少数意見がそのまま採用されたのではなく、多数派が考えを改めただけに過ぎません。

二者択一を迫られたとき、つねに少数意見の方に従う「少数決」という言葉を目にしたことがあります。

もちろんギャグです。よく考えてみれば、あり得ない設定です。

なぜなら、少数決の結果に誰かが異議を唱えたら、こんどはその意見に従わざるを得なくなるからです。

どのような少数決の判断も、つねに別の少数意見によって覆され、何も決定できません。

多数決で怖いのは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1251.html" target="_blank" title="前にも書いた">前にも書いた</a>ように、「悪」が多数になったときに「善」が挽回できないということ。

もう一つは、わずかに半数を超えただけで、その勢力が全体を制するということ。

衆院選の小選挙区でも、このことが問題になります。

最近の話題は、中国主導で設立準備が進んでいる「アジアインフラ投資銀行」でしょう。

中国が資金の50%超を出資すれば、議決権の過半数を手にして、思いのままで運営できる仕組みのようです。

半数を制すれば、全体を制するという、民主主義の原理を悪用したわけです。

とても民主的な国家とは言えない中国が、こういうところだけは、民主主義です。

手先の器用さと外科医

手先は器用だったはずなのに、細かい手作業をしようとすると、手よりも視力が追いつかなくなりました。

勤務医(外科医)時代には、「器用じゃないと、手術はできないんでしょう?」と、よく言われたものです。

「まあそうですかね」と答えたあとで、「器用さだけじゃないんだけどな」と、いつも思っていました。

外科医であるための必要条件は、器用さ以外にもたくさんあります。

病態を熟知し、治療戦略を練り、手術をデザインし、先を読み、臨機応変に対処できなければなりません。

その上で、自分のイメージした通りに、手が動かなければなりません。

たとえばある局面では、3ミリ幅の部分に、極細の糸を、0.5ミリ間隔で6針縫合する必要があったとします。

針を刺す場所が、イメージよりもわずかにズレると、あとで縫合部から出血してしまうかもしれません。

ズレに気づいて針を指し直せば、こんどは針穴が出来てしまい、それも出血のリスクです。

止血しようと繕えば繕うほど、縫合部がいびつになり、変形し、仕上がりがどんどん悪くなります。

仕上がりの出来不出来は手術の成否にも影響し、心臓手術の場合には生命の危険にも直結します。

外科医にとって、イメージ通りの手術操作ができるか(手が動くか)どうかは、あまりにも重要なことです。

手術中には何度も、一針入魂の重要局面が訪れます。器用さだけで乗り切れるものではありません。

だから「器用じゃないと、手術はできないんでしょう?」などと言われると、少々がっかりするのです。

年度末の予防接種

定期予防接種の規則等に変更があるとき、保健所が「予防接種説明会」を開催します。昨日がそれでした。

そのため当院は、通常よりも1時間早い午後6時に、診療を終了させていただきました。

年度末の予防接種説明会は、定期予防接種における、次年度からの変更点や注意点の周知徹底が中心です。

しかし、まだ今年度が1週間残っています。喫緊の課題は、残る1週間における注意点の周知徹底でしょう。

なので今日は、あと1週間で接種期限が切れる、いくつかのワクチンについて、注意喚起をしておきます。

(1)麻しん/風しん混合(MR)ワクチン 第2期定期接種

対象年齢は「5歳以上7歳未満の者であって小学校就学前の1年間の間にある者」、つまり「年長児」です。

いま、駆け込み接種の方がたいへん多いワクチンです。

昨日は「もう卒園したのですが」というご相談も受けましたが、3月末までは年長児扱いです。大丈夫。

(2)成人用肺炎球菌ワクチン 定期接種

対象年齢は、本年度に65、70、75、80、85、90、95歳および100歳以上の誕生日を迎える(迎えた)方。

この制度は、平成30年度までの5年間限定です。平成31年からの対象年齢は、その年度の65歳の方だけ。

今回はパスして、5年後に接種しようと考えている方はいませんか。5年後はありませんよ。

いま対象年齢の方は、あと1週間が、生涯にわたってのラストチャンスなのです。

(3)水痘ワクチン 定期接種

対象年齢は「生後12 月から36 月に至るまでの間にある者」、つまり1歳と2歳のお子さんです。

今年度に限り特別に、3歳と4歳のお子さんも接種対象です。この「経過措置」が、あと1週間で切れます。

期間限定で、しかも過去に水痘ワクチンを任意接種したことのない子ども限定の、ケチな経過措置です。

ともかく、水痘に罹ったことのない3歳4歳児は、ワクチン接種のラストチャンスです。急ぎましょう。

石臼を回るラクダ

「ごま油をしぼるために、石臼のまわりをグルグル回るラクダは、なぜ目隠しされているのか」

という質問をいただきました。日ごろブログのネタに困っている私としては、うれしさ3割、困惑7割です。

そのようなラクダの存在など知らないし、ましてやラクダが目隠しされているなど、思いもよらぬことです。

ネット検索するとたしかに、目隠しをされたラクダが石臼を回している画像があります。初めて見ました。

(1)「動揺病を防ぐため」これが最初に思いついた答です。

動揺病というのは、乗り物酔いのような、からだの動きに伴う病的な自律神経症状のことです。

内耳にある、半規管や耳石器などの加速度センサーによって、体の動きが感知されます。

体の空間認知は、その内耳からの加速度情報と、視覚情報と、体性感覚などを照合して行われています。

それらの情報が一致しないと、脳は異変を感じて、自律神経を刺激することになります。

石臼をグルグル回していると、目の前の景色は横に流れるのに、内耳は回転加速度を感知し続けます。

そのギャップによって脳は混乱し、異常事態を宣言し、ついに嘔吐中枢を刺激する。

これを回避するためには、視覚情報を遮断すればいい。だからラクダは目隠し。そんな理屈でどうでしょう。

(2)「同じ場所をグルグル回ることに嫌気が差すのを防ぐため」これは、とんち回答。

ラクダでも人間でも、単純労働はつらいもの。どこか目的地に向かって歩いていると思わせる作戦です。

(3)「悲しみに満ちた瞳を人間が見たくないから」というのが出題者の模範解答。

ひどく狭い部屋で、休憩もなく10時間以上グルグル回り続けるとか。動物愛護の精神からも疑問です。

でもそんなに長時間、回り続けることができるのだから、(1)も(2)も正解かもしれません。

診察イスを選ぶ

考えてみると、診察室で私が座る診察イス(ドクターチェア)というのは、とても大事なものです。

仕事(診療)中のほとんどの時間を、そのイスの上で過ごしているわけですから。

途中で他の部屋に移動したりはしますが、おそらく毎日12時間ぐらいは、同じイスに座っています。

クリニック開院に際して、診察イスについては、かなり時間をかけて選びました。

自分で座ってみなければ、イスの具合がわからないので、あちこちの家具店を巡りました。

最終的には、いま話題の大塚家具で買いました。その選定基準は、

(1)長く座っても疲れないこと

(2)作りがしっかりしていて、耐久性があること

(3)高そうには見えないこと(たとえ本当は高額であっても)

7年半使ってきましたが、肘掛けがひび割れたり、どこのネジかわからないものが外れたりしてきました。

いま思えばこのイスは、

(1)毎日12時間も座れば、どっちみち疲れる

(2)7年半も使えば、あちこち壊れる

(3)安っぽく見える(たとえ本当は高額であっても)

というわけで、このたびついに、診察イスを買い換えることにしたのです。

家具店を2,3当たりましたが、良いものに出会えず、思い切って通販カタログで選びました。

患者用のイスは変わらないのに、医者用のイスだけ新品にするとは何事か、とか言わないでください。

診察中に、皆様は5,6分座るだけでしょうが、私は毎日12時間座っているのです。