B型肝炎ワクチン

「B型肝炎ワクチン」の定期接種は、すでに世界180カ国以上で導入されています。

なのに日本は、まだ任意接種。これこそワクチン後進国たるゆえんです。

その日本でもようやく、平成28年度には、B型肝炎ワクチンが子どもの定期接種に仲間入りしそうです。

定期接種の対象年齢(月齢)は「出生後から12カ月まで」。接種回数は3回。

純粋な医学的見地からは、なるべく早い時期の接種が推奨され、諸外国では出生直後から接種を始めます。

ところが厚労省は、「生後2カ月から」を標準とする方向です。その理由がいかにも日本的。

(1)出生直後より接種を行う他のワクチンがない

(2)出生直後に生じうる健康問題が副反応としてまぎれ込んで報告される可能性がある

まず(1)は、子どもの健康よりも、制度が煩雑にならない方を優先する、お役所的な発想。

じゃあ諸外国はどうして出生直後に接種ができているのか、ということを考え直してみましょう。

さらに(2)は、お役所の事なかれ主義の最たるもの。

いまHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は、副反応によって事実上、接種が停止した状態です。

ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンもかつて、副反応騒ぎによって、1カ月間接種が中断しました。

何か問題が起きるとワクチンに濡れ衣を着せて、その結果、子どもの予防接種を滞らせてきたのが日本です。

そこでB型肝炎ワクチンでは、はじめから安全策をとって、新生児期には接種を勧めないのがお役所のやり方。

子どもの健康よりも、マスコミにたたかれない方を優先する、これまで通りのスタンスです。

頓服をください

「頓服をください」と言う患者さんがいます。これは「熱冷ましをください」の意味です。

つまりこの方は「頓服=解熱剤」と思っているのです。

実は私もそうでした。大学で習う前までは「頓服=薬包紙に入った熱冷ましの粉薬」と思っていました。

だいたい「とんぷく」という語感には、少々まぬけな響きを感じます。「満腹」とか「転覆」とかと同じ。

しかもなぜか私の場合、この言葉には、苦い粉薬をお湯に溶かして飲むイメージがつきまとうのです。

「頓服」は「必要時に服用」という意味で用いますが、たしかにわかりにくい言葉です。

処方箋には、間違いのないように、「頓服 発熱時に」とか「頓服 吐き気のある時に」などと記載します。

頓服の意味を正しく知っている人は、5割以下だったという、国立国語研究所の調査もあります。

だいたい「頓」の字がなじめません。「頓挫」とか「頓死」とかに使うので、印象が悪い。

と思っていたら「整頓」がありましたね。調べてみると、「頓知(とんち)」にも使うじゃないですか。

「近年とみに・・・」などと言う際の「とみに」は「頓に」と書くんですね。これは知らなかった。

頓服という言葉を使うことで、かえってわかり難くなるのであれば、使わない方がいいかもしれません。

「頓服 発熱時に」よりも、単に「発熱時に飲む」の方が、むしろ分かり易いと思うのですが。

MRSAに効く抗生物質

「MRSA」に効く強力な抗生物質が、「iChip」という培養手法で開発されたと、いま話題になっています。

もちろんMRSAとは「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」のことで、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-396.html" target="_blank" title="抗生剤">抗生剤</a>が効きにくい細菌の代表格です。

画期的なのは「iChip」の方なのですが、それはまた調べておきます。今日は抗生物質の話。

なお「抗生物質」という言葉は少々古風で堅苦しく、同じ意味でも「抗生剤」の方が言い易くて今風です。

化学物質としては「抗生物質」を、医療用薬剤としてなら「抗生剤」という言葉を、私は使っています。

さて、ご存じ「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1172.html" target="_blank" title="Nature">Nature</a>」に発表された、その新たな抗生物質は、“teixobactin” と名づけられました。

新聞などはこれを「テイクソバクチン」と表記していますが、その「テイクソ」が、引っかかります。

この抗生物質の標的は、細菌の表面を構成する脂質の一種 “teichoic acid” です。

これは学生時代に「タイコ酸」として習いました。ノリスケさんの奥さんではありません。

“Teixobactin” の名が “teichoic acid” に由来することは明らか。ならば「タイクソバクチン」とすべきです。

それはともかく、新たな抗生物質が登場すれば、細菌もまた身を守るべく進化します。耐性菌です。

テイクソバクチンは、細菌の変異が起きにくい部位に作用するので、耐性の出現まで数十年かかるとのこと。

それでも、使えば耐性が現れ、使わなければ現れない。抗生剤というのは、安易には使わないことです。

ブログを本にして出版

氾濫するネット情報とは異なり、書籍には、集積、統一性、重み、労力、時間、哲学を感じます。

しかしその本を、最近はあまり読みません。たとえ読んでも、なかなか最後まで読み進むことができません。

読んでいて気になった箇所があると、すぐに読書を中断し、ネット検索してしまいます。

検索があまりにも容易になったので、ついつい脇道にそれてしまうのです。

馴染みのない熟語とか表現、書いてある内容自体に興味が湧いた際にも、読書を中断することになります。

そしてひとたびネットに向かうと、元の本に戻る機会を逸してしまうのです。

ネットは混沌とした情報の海原であり、広く眺め回すことはできても、個々の情報の重みはどうしても軽い。

枝葉にも探りを入れるうちに、情報はいくらでも拡大・発散して、当初の目的をほとんど見失います。

しかもこのような作業で得られるのは、「へえ〜」か「ふ〜ん」だけ。ほとんど時間のムダです。

しかし、ほとんどムダだけど全部ではない。まれにチラッと、珠玉のページやお宝情報に遭遇します。

作りが良く、文章も読みやすく、主義主張が一貫していて、研究も奥深い。そのまま本にできそうなページ。

こういうサイトを作れる人が、どうして本を出さずに無料のブログを続けるのか。サービス精神?

このようなことを思うのも、最近知人(後輩)が自身のブログを書籍化して、けっこう売れているからです。

でも考えてみれば私のブログには、統一性、重み、哲学が無い。無料だからギリギリ許容されるんでしょう。

いや、許されているかどうかもわかりません。まさか本にするなど、考えたこともありませんよ。

食品への異物混入

チキンマックナゲットへの「ビニール片」混入騒ぎが相次いだと思ったら、こんどは「ヒトの歯」ですか。

さらにアイスクリームにプラスチック片とか、ホットケーキに金具とか、新たな情報が次々に出てきます。

もちろん、これら全部が製造工程や調理過程での混入なのかどうか、まだ断定はできません。

そういえば私も、以前レストランで食べたフライドポテトの中に、割り箸片が入っていた経験があります。

ポテトを噛んだとたんに、歯茎に何かが突き刺さり、それを指で引き抜くと、木片が血に染まっていました。

どうやら、ポテトを揚げるときに使っていた割り箸が裂けて、その切れ端がポテトの中に混ざったようです。

店長は平身低頭。料理代がタダになったので私は満足しましたが、いまの私なら、それじゃ済ませませんよ。

またある時は、小倉の中華料理店で、シュウマイのせいろの底に、小さな虫を見つけたこともありました。

虫の名前は書きませんが、このときの店の対応は、シュウマイを取り替えただけ。いまの私なら・・・

研修医時代、救急病院で当直のバイトをしていたときのこと。近所のファミレスの店員さんが来院しました。

包丁で手を切って、血が止まらないと。見れば指の先っぽが、数ミリそげて、なくなってます。

指の先っぽは、ハンバーグの材料の中に混ざってしまったのか、探しても見つからなかったそうです。

インフル治療のタイミング

熊本でも年末から、インフルエンザが流行しています。これまでに当院で診断したものは、全部A型です。

いまの流行はAH3亜型(A香港型)だそうです。昨年は、同じA型でもAH1(豚由来)が流行しました。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-899.html" target="_blank" title="治療薬">治療薬</a>の主流は、内服薬の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1170.html" target="_blank" title="タミフル">タミフル</a>、吸入薬のリレンザ、イナビルという「ノイラミニダーゼ阻害薬」です。

ウイルス表面のノイラミニダーゼに作用して、感染した細胞の外にウイルスが出られなくする薬です。

細胞外に出られなければ、ウイルスが次々と他の細胞に感染を拡げることができず、増殖できなくなります。

迅速検査等からインフルエンザと診断した患者さんには、原則として前述の薬のいずれかを処方しています。

ただし、発症から3日以上を経過して、すでに下熱して元気な人には処方しません。無意味だからです。

インフルエンザウイルスに感染すると、ウイルスはどんどん増殖し、発熱の48時間後ごろピークに達します。

その時期以降に、ウイルスの増殖を防ぐノイラミニダーゼ阻害薬を投与しても、もはや役に立ちません。

一般論はそうですが、病状によっては発熱の3日後でも、ノイラミニダーゼ阻害薬を処方する場合があります。

高熱が3日以上続いているとき、その熱が最初からインフルエンザの熱だという確証が無いからです。

普通の風邪の途中からインフルエンザを発症したと思われるケースも、実際にはかなり経験します。

なので、「だらだらと熱が上がってきたので、インフルエンザじゃない」とは言い切れませんのでご注意を。

年賀状準備のドタバタ

最近の年賀状は、元日の朝早くから届きますね。郵便局も仕事が早い。

そしてそれ以上に感心するのは、元旦の配達に間に合うように、早めに年賀状を投函した方々です。

翻って私の場合、裏面印刷は外注して早々に出来上がっているのに、宛名印刷がどうしても遅くなります。

年末の休診日の初日(12月30日)、宛名印刷ソフト最新バージョンの、インストール作業から始めました。

もっと早くインストールしとけよ、というご批判は甘んじて受けます。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-818.html" target="_blank" title="昨年">昨年</a>とは異なり、作業は順調でした。

さて次は、プリンタの準備。ここで、自宅のプリンタが故障しているという事実を知って愕然としました。

大慌てで近所のベスト電器まで急行。シンプルなインクジェットプリンタを、もちろん値切って購入。

梱包から出して、セッティングして、プリンタドライバをMacにインストールして・・・

ありゃ、ハガキをセットするカセットが、小さすぎるじゃないですか。これじゃ印刷がはかどらない。

結局、クリニックまで大型のプリンタを取りに行き、自宅に持ち帰る羽目になってしまいました。

印刷を終えたのは夕方。コメント書いて、北郵便局に持ち込んで投函。郵便局が自宅の近所でよかった。

宛名印刷に要する時間など、正味1,2時間なのに、どうしてあと1週間早く準備できないのでしょうかね。

締切が迫らないと、やる気が出ないのか。でも毎年これじゃあ進歩が無い。次回はもっと早く準備しよう。

とか思っていたら、熊本市内の方には、私の年賀状は元旦に届いたとのこと。なんだ、間に合ったのか。

また油断しそう。

もう渋滞はこりごり

Uターンラッシュは今日も続いているようですが、ピークは昨日、1月3日の夕方だったそうです。

そしてまさに、昨日のその時間帯、九州自動車道上り線で大渋滞に巻き込まれた車の中に、私はいました。

これまでの人生で私は、帰省やUターンの向きがいつも、世の大多数の人々の移動とは逆方向でした。

なので昨日の午後、高速で熊本から福岡方面に向かおうとしたのも、渋滞経験の無い私の未熟さゆえでした。

まず熊本インターに入ろうとすると、一般道からの入口に車列ができています。ここでようやく渋滞を認識。

並んで待っていると、救急車やら消防車やらが脇を追い越して、高速に入っていきます。暗雲立ちこめます。

やっと料金所に着くと、事故で大渋滞なので福岡方面は菊水インターから乗ってください、とのアナウンス。

あわてて料金所ゲート手前をUターン。2つ先の菊水インターまで、延々と一般道を走ります。

ふとスマホでNEXCO西日本の道路交通情報のサイトを見ると、事故現場は熊本と植木の間らしい。

なんだそれなら、次の植木インターから乗ればいいじゃん。さっそく方針変更。これは見事正解でした。

しかしNEXCOのサイトは、知らなくてもよい情報も与えてくれました。

少し先の南関付近が渋滞し、その先の鳥栖からは太宰府インターまでは大渋滞中と、たたみかけてきます。

おまけに目的地の、鞍手インター付近も事故で渋滞中。これから合計3つの渋滞が、私を待ち受けているのか。

その予想は、悪い方向に裏切られました。渋滞がさらに広がって、南関から古賀までつながったからです。

結局、通常2時間の距離を、7時間以上かけてドライブすることになりました。

今日ニュースを見て知ったことは、昨日のその時間帯のその区間の渋滞は、60kmに達していたそうです。

これで私も、渋滞経験者の仲間入りです。もう、1月3日の午後に高速に乗るような、バカなマネはしません。

御嶽山も阿蘇山も活火山

年末のテレビ番組で、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1089.html" target="_blank" title="御嶽山噴火">御嶽山噴火</a>の映像をたびたび目にしました。その御嶽山はかつて「死火山」でした。

しかし私が学校で習った「休火山」や「死火山」という言葉は今はなく、「活火山」に一本化されています。

それなら全部、ただの「火山」でいいじゃん、ていう話ですが、そうでもないらしい。

いま活火山の定義は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」だそうです。

この「1万年」というのも、だんだんと伸びてきた年数ですが、本当に1万年で十分なのか。

わが家の近所の阿蘇山は、30万年前から9万年前までの間に、4度の大噴火を起こしたことがわかっています。

最近も噴火して、火山灰で車が汚れて困りましたが、9万年前の火山灰は北海道にも10cmほど積もったとか。

たかだか1万年前ぐらいのところに線を引いて、活火山かどうかを決めることに、意味があるのでしょうか。

阿蘇山は、大噴火でマグマが大量に放出された分、山自体が大きく窪みました。これが「カルデラ」です。

外輪山によってグルッと取り囲まれた阿蘇カルデラの径は、南北25km、東西18kmと巨大です。

水が溜まって「カルデラ湖」になっていましたが、外輪山の西側が決壊したので、いまは湖ではありません。

なぜ決壊したかといえば、健磐龍命(タケイワタツノミコト)が蹴破ったから、ということになっています。

カルデラの内部に田畑を造るために、外輪山を決壊させて、湖の水を抜いてしまえ、というわけです。

蹴りを入れた際に尻餅をついて「立てぬ!」と叫んだので、その場所が「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1071.html" target="_blank" title="立野">立野</a>」と呼ばれるのは有名な話。

しかし健磐龍命が最初に蹴った場所は、破れませんでした。山が二重だったからです。いまの二重峠です。

自転車で豊後街道を走るときに、外輪山を越える二重峠が最大の難所だったことは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1064.html" target="_blank" title="以前にも書いた">以前にも書いた</a>通り。

なのでひどく疲労したサイクリングの帰路では、平坦な立野を走ります。健磐龍命のおかげで楽ちんです。

子宮頸がん予防はどうなる

「子宮頸がんワクチン、予防か安全性か 問題点をおさらい」とは、今朝の朝日新聞デジタルの見出しです。

さんざん「危険だ」「問題だ」と言ってきた朝日が、いまさら何を、おさらいしようというのでしょう。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1028.html" target="_blank" title="新事実が出てきたわけでもない">新事実が出てきたわけでもない</a>のに、正月早々この話題を出してくるのには、理由がありそうです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1019.html" target="_blank" title="何度も書いてきました">何度も書いてきました</a>が、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の問題は、日本人独特のものです。

日本で使っているHPVワクチンは、世界中で使われているものと同一の製品、つまり輸入品です。

同じワクチンなので副作用も同じ。日本で起きた<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-840.html" target="_blank" title="複合性局所疼痛症候群(CRPS)">複合性局所疼痛症候群(CRPS)</a>は、海外でも起きています。

しかし他の国々では今も平然と接種が続けられているのに、日本だけが大騒ぎして接種を自粛する不思議。

国内で毎年3,000人以上という子宮頸がんの死亡数が、ワクチンの普及で1,000人以下になるといいます。

その多数の人命が助かるワクチンであっても、副作用が心配だから接種したくないというのが日本人。

しかし、海外で子宮頸がんが激減する時代が来た時、日本ではまだ多数が命を落とすようなことでいいのか。

それもこれも、マスコミの責任です。副作用発症者の映像を繰り返し報じて、反ワクチン世論を煽りました。

ワクチンに反対する個人や団体が、持論を展開するのはかまいませんが、マスコミには客観性が必要です。

何年か後に日本人は、一時期HPVワクチンの接種を差し控えていたことを、反省するときが来るでしょう。

接種機会を失ったために子宮頸がんを発症した、という人たちが、国に賠償を求める可能性もあります。

マスコミは一転して、なぜ国は、ワクチンの勧奨接種を継続しなかったのかと報じるでしょう。

そうなりそうな雲行きを察知して、徐々にスタンスを変え始めたのが、今回の朝日の記事かもしれません。