隔離用の待合室

全国保険医団体連合会が、「新規開業医の手引・改訂版」というのを出版したので、1冊入手しました。

いまさらですか、などと言わないでください。初心を忘れないためにも、あれこれ再確認してみたいのです。

どうやら、不要な確認をして後悔するのが私の悪い癖。確認したいという好奇心には勝てません。

たとえば電器店で何かを買うと、帰宅後にその価格が適正であったかどうか、通販価格を調べてしまいます。

それなら、買いに行く前にネットで確認しとけよ、って話ですけどね。

さて、冒頭で紹介した手引の「待合室」についての記載をみると、通り一遍のことしか書かれていません。

「圧迫感が無く開放的で落ち着いた雰囲気をつくること、十分な採光と広さを確保できるように考慮します」

これではさすがに、手引きとしては不十分でしょう。感染症患者の隔離について、触れていないからです。

それこそ、いま私の頭を悩ませているのが、まさに隔離の問題なのです(毎年この時期の悩みです)。

インフルエンザを疑う症状の患者さんが3人いても、その3人を同室で待たせるわけにはいきません。

2人がインフルエンザで、あとの1人は別の感染症、という可能性もあるからです。

大勢の発熱者が来院すると、隔離するための部屋が足りないので、次のような工夫で切り抜けています。

(1)予約制を徹底し、診療の進捗状況をわかりやすくして、順番ギリギリまで自宅で待てるようにする

(2)クリニックに到着しても、診察の順番が来るまでは、駐車場の自家用車内で待ってもらう

(3)院内では、隔離室として使える4カ所の部屋を、要領よく使い回す

ぜひ手引に記載してほしいのは、小さな隔離用待合室をいくつも準備すること。これは切実な問題です。

メルボルンでの快挙

テニスとサッカーの両方で、日本が勝利しました。くしくも、同じメルボルンで今日行われた試合です。

休診日だったので、今日はテレビの前に張り付いていました。さらに勝ち進むことを期待します。

錦織圭選手の試合の合間のニュースで、柔道家の斉藤仁氏が死去したと報じられました。

斉藤氏といえば、弟子の石井慧選手の、北京オリンピック金メダル獲得時の名言が忘れられません。

「オリンピックのプレッシャーなんて、斉藤先生のプレッシャーに比べたら、屁の突っ張りにもなりません」

なかなか面白い発言ですが、「屁の突っ張り」という言葉を誤用しています。「屁」だけでよかったのに。

ところでメルボルンは、オーストラリアではシドニーに次いで2番目に人口の多い都市です。

首都をめぐって両都市が争った結果、計画都市キャンベラが造られたことは、よく知られています。

2大都市が争う構図は、日本にもあります。

たとえば、長野県の長野市と松本市。歴史的経緯が複雑で、両都市の不仲はいまだに続いているとか。

長野市は県庁所在地で、人口も最大。一方で松本には、日銀の支店や信州大学の本部と医学部があります。

福岡県では、かつて最大の都市は北九州でしたが、私が大学生になったころ、福岡が第1位に躍り出ました。

両都市のその後の繁栄と衰退は好対照で、人口にも1.5倍ほどの差がついてしまいました。

効率の良さばかりを求めると、今現在繁栄している都市にますます、人口や産業が集中してしまいがちです。

その最たるものが、東京一極集中であり、将来70%の確率で<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-188.html" target="_blank" title="大地震">大地震</a>が起きるというのに、集中は続きます。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-200.html" target="_blank" title="首都移転">首都移転</a>の話も、なかなか現実味を帯びません。既存の地方都市に移転しようとするから、進まないのです。

100年後、200年後を考えて、キャンベラのような計画都市を、ゼロから設計するのが面白いと思います。

インフルエンザと高熱

インフルエンザが流行しています。毎日多くの方が、節々の痛みを伴う急な発熱を訴えて来院されます。

あまりに熱が高くて心配になる方も多いですが、熱はウイルスの仕業ではなく、体の防御反応です。

このことは<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-461.html" target="_blank" title="2年前">2年前</a>にも書きましたが、高熱でも安心していただくために、発熱の機序をおさらいしましょう。

(1)インフルエンザウイルスが体内に侵入すると、まず鼻やノドの粘膜の細胞に感染し、増殖を始めます。

(2)感染した細胞から「サイトカイン」という化学物質が分泌され、周囲に異変を知らせます。

(3)免疫細胞が寄ってきて、ウイルス感染した細胞を食べ、ウイルスの特徴を他の免疫細胞に広報します。

(4)それと同時に、また別のサイトカインを分泌して、脳の体温調節中枢に対して発熱を要請します。

(5)脳の指令により、皮膚血管が収縮して熱放散を抑え、骨格筋がふるえて熱産生し、体温が上がります。

(6)免疫細胞はどんどん増殖し、あるものは感染細胞を食べ、あるものは抗体という飛び道具を放ちます。

ウイルスは低温を好み、38.5度以上になるとあまり増殖できなくなります。

免疫細胞は高熱を好み、38.5度以上になるととても活発になります。

最終段階(6)で免疫細胞の力を最大にするための準備として、(5)の発熱があるのです。

インフルエンザウイルスは、普通の風邪のウイルスよりも、はるかに急速に増殖します。

そのため(4)の段階のサイトカイン量は多く、結果として急な高熱が出ます。

高熱はつらいですが、免疫細胞がガンガン戦うための準備が整った状態だと、前向きに考えましょう。

センター試験の出題ミス

入学試験の出題ミスは、受験生の合否にさえ影響を与えかねない一大事。出題者の責任は重大です。

正解が2つあるような設問が見つかった場合、その両方を正解とみなす、という解決法がとられます。

しかし、ムダに悩んだ受験生の、時間の浪費や精神的ストレスに対しては、どうやって穴埋めしてやるのか。

昨日の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-473.html" target="_blank" title="センター試験">センター試験</a>「世界史B」でミスがありました。渋川春海が作成した「貞享暦」についての設問です。

その設問文を、読点(、)の部分で改行して4行に分けて記載すると、以下のようになります。

(1)貞享暦は、

(2)中国『ア』の時代に、

(3)『イ』によって作られた授時暦を改訂して、

(4)日本の実情に合うようにしたものである。

出題者の意図は、「中国・元の時代に、授時暦が作られた」という知識を、問うことだったと思われます。

一方で貞享暦は、「中国・清の時代に、日本の実情に合うようにしたもの」であることもまた事実。

設問文の(2)が(3)にかかるのか(4)にかかるのかの解釈によって、『ア』の答が異なるわけです。

このような、読み方によって答が変わるような設問を作るなど、出題者の国語力に問題アリです。

この際、どうせ知識を問うのであれば、いっそのこと、もっと単純な設問にしたらどうですか。たとえば、

(問1)授時暦を作ったのは誰か。次から選べ。

(問2)授時暦ができたのはいつの時代か。次から選べ。

設問はひどく無機質ですが、求める知識は同じ。まったく誤解を与えない、率直な問い方じゃないですか。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-1117.html" target="_blank" title="知識偏重">知識偏重</a>だと批判されるのを嫌ってか、問題文をヘンに長ったらしくするから、オカシなことになるのです。

いくら工夫を凝らしたところで、尋ねているのは単なる知識。ならばもっと簡潔な設問にすべきです。

ワクチンのテレビCMを

日本脳炎ワクチンは、平成17年5月30日から平成22年3月31日まで、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-610.html" target="_blank" title="接種が差し控え">接種が差し控え</a>られていました。

その後、勧奨接種が再開し、差し控えによって接種機会を失った方への「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-635.html" target="_blank" title="特例接種">特例接種</a>」が始まりました。

これらの経緯については、何度も書いてきましたが、厚労省にしては太っ腹な暫定措置といえるものです。

ところが、日本脳炎第1期接種に対する特例接種の積極的勧奨が、今年度末で終了することになりそうです。

対象のお子さんがいるご家庭以外には、まったく興味も無ければ、意味不明な話かもしれません。

しかし、対象者であっても、このような予防接種の方針変更については、何も知らされないのが現状です。

自治体の広報誌や医療機関の掲示物などを、積極的に見るようにしなければ、最新情報は得られないのです。

一方で、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-846.html" target="_blank" title="成人用肺炎球菌ワクチン">成人用肺炎球菌ワクチン</a>は、メーカーのテレビCMをよく見かけます。西田敏行が出るやつです。

しかし本来、行政こそが、このようなCMを打つべきでしょう。小児の全ワクチンでやってくれませんかね。

厚労省は最近、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-358.html" target="_blank" title="麻しん/風しん混合(MR)ワクチン">麻しん/風しん混合(MR)ワクチン</a>第2期接種の接種率の、中間評価を発表しました。

全国平均で59.6%という、残念な数字です。都道府県別や主要都市ごとの数値も、分析されています。

しかしそんなデータを厚労省のサイトの奥深くに眠らせるよりも、どうしてテレビで発表しないのでしょう。

「年長児のいるご家庭の皆さん、MRワクチンの接種期限は、3月末ですよ」

こういったメッセージを、テレビCMで分かり易く面白く伝えたら、どれだけ接種率が上がるかと思います。

誕生日のお知らせ

メールを受信すると、その情報が即座に、Macの画面の右上隅に表示されます。

このような「プッシュ通知」機能は、iPhoneにもあります。たぶんWindowsにもあるのでしょう。

その日のスケジュールや、知人の誕生日なども、指定したタイミングで通知されます。

これらの情報はクラウド(iCloud)で管理され、すべての端末で通知される仕組みです。

さて元日のこと。Macを開くと、誕生日の通知が私を待ち受けていました。ところがこれが、1人じゃない。

ズラズラっと大勢の、覚えのある名前が並びます。その表示が消えると、また別の人たちが誕生日との通知。

まあ、元日生まれの知人の、多いこと多いこと。揃いも揃ってこの人たちは、誕生日が1月1日だったとは。

んなわけ、ないでしょう。何かが間違ってますね、明らかに。

「カレンダー」アプリを開くと、1月1日にはなんと、549人分の誕生日が登録されていました。

詳しく見ると、その生年月日は、1998、2000、2003、2005、2006年のいずれかの1月1日なのです。

この誕生日情報の大元は「アドレスブック」です。それがクラウド経由で、カレンダーに転送された模様。

私の推測はこうです。

アドレスブックの電話番号情報の多くは、以前の携帯電話(ガラケー)からiPhoneに受け継いだものです。

ケータイの電話帳に誕生日の情報はないので、iPhoneに転送したときに、誕生日欄は空欄になるべきでした。

ところが実際には、空欄ではなく1月1日として登録してしまったのではないかと。

1998、2000、2003、2005、2006年というのはちょうど、これまでに5台のケータイを購入した年です。

誕生日情報のないアドレスには、そのケータイの購入年の1月1日を割り当てたと考えると、ピッタリです。

そういうわけで、私の知人の多くは、何台目のケータイの時に登録した人物かが、すぐにわかります。

Macがブラックアウト

診察室のメインで使っているMacのディスプレイが突然、真っ暗になるトラブルが、先月から続いています。

いわゆる「ブラックアウト」。診療中に何度も起きるので、仕事になりません。その解決までの顛末です。

(1)Macの電源が切れているのか

いやよく見ると、電源ONを示すLEDが点灯しています。電源は入っているようです。

試しに、ディスプレイケーブルを抜き差しして見ると、何事も無かったかの様に元の画面が現れました。

(2)ではなぜ突然、ディスプレイの電源が落ちるのか

ファームウェアの問題、ケーブルやコネクタの不良、そしてディスプレイそのものの不具合が考えられます。

こういった場合、Appleのサイトにある「Apple サポートコミュニティ」を見ることにしています。

Macユーザーたちが、真剣かつ紳士的にディスカッションしているところが好ましく、参考になります。

(3)そこには「ブラックアウトがディスプレイのSMCリセットで改善した」という情報あり

コミュニティ内を検索すると、私とまったく同じトラブルが詳しく報告されていました。なになに。

あるユーザーは、1年間悩んだ末にアップルに電話したら、「SMCリセット」するように言われたとのこと。

SMCとはシステム管理コントローラのこと。そのリセット法は、電源ケーブルを15秒以上抜いておくだけ。

(4)メモリ増設後など、Macの構成を変えたあとなどには、SMCリセットをするのが基本らしい

たしかに最近、メモリを増設しました。でもその時には電源を切るので、SMCリセットはできているはず。

あ、いやまて、ディスプレイのSMCリセットまではしてなかった。もしかして、それか。

というわけで、ディスプレイの電源をしばらく切ってみたところ、ブラックアウトしなくなりました。

電気製品のトラブルにおいては、まず、電源を抜き差ししてみる。これが基本ですか。覚えておきます。

ストーリー性のある名前

「虎もハエも一緒に叩く」と明言した、習近平・中国国家主席による、共産党幹部の腐敗取締りが続きます。

先月摘発された最高幹部のひとり、周永康氏の資産は、1兆5000億円以上といいます。想像を絶する額です。

そんな巨額を、どうやったら蓄財できるのか。どうにかすれば1兆円貯まるところが、じつに不思議な国です。

同様に、年末に失脚した令計画氏にも、不正蓄財が7100億円あると報じられました。

なぜか京都に2つ持っている豪邸の価格が、総額600億円だそうです。意味がわかりません。

しかし令氏で驚くのは、蓄財だけではありません。令氏の同胞の名前の方が、むしろ最近の話題です。

5人きょうだい(4男1女)の名前は、上から順に、令路線、令政策、令方針、令計画、令完成、とのこと。

路線を定め、政策を決め、方針を決定し、計画を立て、完成する。

最初から目論見通りの命名だったとしたら、まあ用意周到な家族計画と言えます。

しかし今となっては、もしも遅れて6人目の末っ子が生まれたなら、令失脚という名前がピッタリでしょう。

日本では近年、キラキラネームが流行っていますが、ただの当て字にも、そろそろ飽きてきました。

少子化対策に何人も産み育てるなら、令氏のようなストーリー性のある命名も、いいかもしれません。

ここで、何か命名例を挙げてみせればよかったのですが、気の利いたのを思いつきませんでした。

(追伸)そういえば「のぞみ、かなえ、たまえ」っていうのを思い出しました(古い)。

隔日投与の解釈

医療用医薬品の多くは、1日3回毎食後、だとか、1日1回就寝前、などという「用法」で処方します。

内服の回数とタイミングは、その薬の効能や作用持続時間、薬理作用等によって、決められています。

薬によっては、「隔日投与」、つまり1日おきに飲んでもらう場合もあります。

ただし、この「1日おき」の実践法については、個人差があるので、よく注意しなければなりません。

(1)内服日をあらかじめカレンダーに書き込む人

(2)偶数日とか奇数日のように日付で決める人

(3)月・水・金のように曜日で決める人

几帳面さで言えば、(1)>(2)>(3)です。そして(1)のような方はたいてい、血圧が高いです。

骨粗鬆症の薬など、週に1回だけ飲む薬があります。これは、毎週月曜日、のように曜日で決めて内服します。

ときどき、月曜に飲み忘れたので火曜に飲んだが、来週は何曜日に飲むのか、などと尋ねる方がおられます。

この場合、月曜でも火曜でもかまわないのですが、どちらでもいいと答えてはなりません。

どちらでもかまわないようなことを悩んでいる方には、どちらか一方に決めてあげる必要があります。

前述のケースなら、月曜日の方が良いです、とお答えすることになるでしょう。医学的根拠はありません。

最初に月曜と決めたのなら、ずっと月曜にしておいた方が覚えやすい、というだけの理由です。

診療人数を制限します

いくら夜遅くなっても断らない。受診者が途切れるまで診療する。それが当院の基本姿勢でした。

しかしこの時期、インフルエンザが流行り出すと、朝いちばんからネットや電話による予約が殺到します。

午前中のうちに、夜7時診療分までの予約が埋まってしまうことなど、当たり前。

とくに日曜・祝日は、本来の診療時間は午後5時までなのに、実際にはしばしば、夜の9時10時になります。

勤務医時代のことを考えれば、深夜までの仕事など屁のカッパのはずが、最近はそうもいきません。

私だけならまだしも、他のスタッフのこともあります。どこかで線を引かなければ、キリがありません。

何年もの間、葛藤してきましたが、昨日初めて、予約の受付を途中で打ち切りました。断腸の思いです。

午後3時の時点で、予約者が80人。私の診療ペースだと、11時までかかる計算でした。

結局、途中でキャンセルが出るなどして、診療の終了は10時半でしたが、それでもヘトヘトです。

深夜11時過ぎに帰宅した後に家事が待っているスタッフ(ほとんどが主婦)もまた、たいへんです。

診察を求める患者さんがいるのに、受付を拒否することは、厳密に言えば、医師の応召義務に反します。

しかし世の診療所の多くは、一定の時刻に診療が終わるように、受付の段階で制限をかけています。

私と職員の健康のためにも、当院もそろそろ、エンドレス診療の方針を撤回することにします。

さっそく祝日の今日は、定時よりも2時間半オーバーの、午後7時半までで診療を終了しました。

受付をお断りした患者さんには、申し訳ありませんでした。

しかし今後も、このような方針で参ります。どうかご理解のほど、お願い申し上げます。