「頓服をください」と言う患者さんがいます。これは「熱冷ましをください」の意味です。
つまりこの方は「頓服=解熱剤」と思っているのです。
実は私もそうでした。大学で習う前までは「頓服=薬包紙に入った熱冷ましの粉薬」と思っていました。
だいたい「とんぷく」という語感には、少々まぬけな響きを感じます。「満腹」とか「転覆」とかと同じ。
しかもなぜか私の場合、この言葉には、苦い粉薬をお湯に溶かして飲むイメージがつきまとうのです。
「頓服」は「必要時に服用」という意味で用いますが、たしかにわかりにくい言葉です。
処方箋には、間違いのないように、「頓服 発熱時に」とか「頓服 吐き気のある時に」などと記載します。
頓服の意味を正しく知っている人は、5割以下だったという、国立国語研究所の調査もあります。
だいたい「頓」の字がなじめません。「頓挫」とか「頓死」とかに使うので、印象が悪い。
と思っていたら「整頓」がありましたね。調べてみると、「頓知(とんち)」にも使うじゃないですか。
「近年とみに・・・」などと言う際の「とみに」は「頓に」と書くんですね。これは知らなかった。
頓服という言葉を使うことで、かえってわかり難くなるのであれば、使わない方がいいかもしれません。
「頓服 発熱時に」よりも、単に「発熱時に飲む」の方が、むしろ分かり易いと思うのですが。