痛風の患者さんや尿酸値の高い方には、「プリン体」を多く含む食品を控えるようにお話ししています。
TVのCMなどで、プリン体オフのビールという言葉も聞かれるので、その名前はよく知られています。
しかし実際に、プリン体がどのような食品に多く含まれているかについては、誤解も多いです。
老婆心ながら申し添えますが、食べ物のプリン(pudding)とプリン(purine)体とは別物ですよね。念のため。
まず、理科の復習から。生物の遺伝情報は通常、DNAを構成する4つの塩基の配列によって決まっています。
その4つとは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)。このうちAとGがプリン塩基です。
2本のDNAが絡み合い、AとT、GとCがそれぞれ結合して塩基対を作り、二重らせん構造を形成しています。
理論上、AとT、GとCはそれぞれ数が同じなので、プリン塩基は全塩基の50%を占めることになります。
ひとつの細胞にはひとつの核があり、その中の染色体の数とDNAの長さの合計が、塩基対の数を規定します。
ヒトでは、23対の染色体があり、塩基対の合計は約32億。プリン塩基は32億個あることになります。
このプリン塩基が代謝された分子など、プリン骨格という構造を持つものはすべて、プリン体に含まれます。
ある生物由来の食材を考えたとき、そこに含まれるプリン体の量は、細胞数にほぼ比例することになります。
異なる生物で比較した場合には、遺伝情報が多いほど(高等生物であるほど?)プリン体が多いはずです。
レバーにプリン体が多いのは、肝臓の細胞がとても小さく緻密なためです。細胞数が驚くほど多いのです。
干物は水分が抜けているため重量当たりのプリン体が多く、いりこだしにはプリン体がたくさん出て来ます。
白米や小麦粉のプリン体含有率はレバーの1,2割ですが、レバーの5倍10倍の量を食べたら同じことです。
蒸留酒にプリン体が含まれるわけがありませんが、醸造酒には少し含まれます。しかし多くはありません。
とくにビールは痛風の敵と考えられていますが、ご飯よりもずっと少ない程度。ただし飲み過ぎ注意です。
魚卵は細胞の塊のように思えますが、細胞が一粒一粒目に見えるぐらいですから、その数は多くありません。
粒の小さな明太子はまだしも、イクラであれば、いくら食べてもプリン体はごくわずか。
鶏卵ともなると、あれ1個で細胞数はたったの1個。プリン体の含有量はほぼゼロと言ってよいでしょう。
牛乳にはそもそも、細胞が含まれていません。なのでカスタードプリンのプリン体はゼロです。