ギニアから到着した女性も、リベリアから帰国した男性も、さいわいエボラウイルスは陰性でした。
しかし、この60歳の男性の行動に関連して、さまざまな問題が浮き彫りになりました。
水際作戦の一環として、ギニア、リベリア、シエラレオネからの帰国者には「健康監視」が行われています。
その内容は、潜伏期を最大に見積もって21日間、体温や健康状態を毎日朝晩、行政に報告させることです。
万一発熱などの症状が出た場合には、医療機関を受診せず、まず保健所に連絡する手順になっています。
しかし男性は、帰国の2日後に発熱しても行政に報告せず、その翌日、自宅近くの医療機関を受診しました。
おまけに、リベリア滞在歴を申告せずに診察を受け、扁桃炎と診断されて帰宅しました。
医師が患者のノドを念入りに診察する際、患者の唾液の飛沫等が、医師の手や顔に付着することがあります。
男性がエボラの疑いを自覚していながら、医療従事者を危険にさらしたとすれば、大問題です。
しかしおそらく男性に悪意はなく、単に自分は感染していないはずだという自信があったのでしょう。
帰国後に発熱しただけで、大げさに隔離されたのではたまらない、という思いがあったのかもしれません。
医療機関で診察を受ければ、エボラではないことが確認できると、そう甘く考えたのかもしれません。
申し訳ないですが、発症直後のエボラ出血熱の症状なんて、風邪か胃腸炎か扁桃炎と似たようなものです。
医師がエボラを積極的に疑う理由がなければ、エボラの可能性なんて考えるはずもありません。
そのエボラを疑う理由とは、渡航歴の有無だけです。だから渡航歴を隠されたのでは、お手上げなのです。
もちろん、ここで個人攻撃をしている場合ではありません。個人の問題ではなく、システムの問題なのです。
まず、啓蒙活動が足りません。行政はもっとメディアを使って、国民に情報を提供すべきです。
健康監視対象者については、IT機器などを使ってもっと緻密に、動静を把握できないのでしょうか。
エボラ上陸の予行演習が3回続きましたが、もうそろそろ、本番が来ますよ。