外科医が主人公のTVドラマは、ツッコミどころ満載なので、見ていて笑えるか腹が立つかのどちらかです。
毎週見ている「Doctor-X」では、手術シーンの中途半端なリアリティーが、なかなか面白い。
主人公の女性外科医・大門未知子は、以下のように形容されています。
「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器…」
あ〜、わかってない。専門医がなんたるかを。
専門医の資格は、一定の指導医のいる特定の病院で、一定数の規定手術を執刀して初めて、獲得できます。
群れの中で、権威の下で、束縛された環境で経験を積んで、外科医は専門医のライセンスを得るのです。
だから大門未知子のようなフリーランスの外科医が(いるとすれば)、専門医であるはずはありません。
専門医はまた、その資格を維持するために、定期的に更新を行わなければなりません。
私も開業前までは心臓血管外科専門医でしたが、開業後には更新要件をクリアできず、資格を失いました。
一般に、ベテランの外科医でも、手術の一線を退けば新たな手術実績がなくなり、資格更新ができません。
この「メスを置いた外科医」が、専門医の資格を持ち続けられるようにしよう、という動きが出てきました。
ベテランの外科医では手術実績要件を免除して、実質的に終身の専門医にしてしまおうというわけです。
その趣旨は理解できます。しかし、専門医が現役バリバリであることの指標なら、終身制度は疑問です。
専門医が、誰のための何のための制度なのか。それをもう一度考え直す必要がありそうです。