東京女子医大の、鎮静剤「プロポフォール」使用による2歳の子の死亡事故問題が、波紋を呼んでいます。
この問題は、2つに分けて考えなければなりません。
(1)東京女子医大固有の問題
(2)小児医療における薬剤使用の問題
プロポフォールは、全身麻酔の際に用いられる、かなり一般的な薬です。
手術中の麻酔だけでなく、集中治療においても、鎮静の目的でしばしば用いられています。
一般に、呼吸や循環が不安定で高度な全身管理を行っている場合には、十分な鎮静が必要となります。
手術中と同程度かそれ以上に緊迫した重篤な状況では、プロボフォールで鎮静するのは適切な医療行為です。
プロポフォールが危険なのではなく、生死をさまようような危機的状況だからこそ、この薬を使うのです。
使った結果だけが問題視されますが、別の薬を使った場合と比較しなければ、正しい評価にはなりません。
医薬品は、成人における治験は行われても、小児での治験は難しいものです。とくに乳幼児はそうです。
治験はしていないけれど、成人での使用経験を踏まえて、乳幼児にも流用しているのが現状です。
使用上の注意には「乳幼児での安全性は確立していない(使用経験がない)」とのお断りが書かれています。
そのように書かれていても、重篤な小児には、必要があれば使うしかないのです。
ところが、何か悪い結果が起きると、「使用が認められていない薬」を使ったことが、問題になります。
このたびのプロポフォール問題は、小児の集中治療を明らかにやりにくくしたと、私は思っています。
なお女子医大の問題は、別の意味で根が深く、このブログで書ききれるものでもないので今回は触れません。