御堂筋の暴走事故は、やはり危険運転致傷に問われることになりました。原因は「低血糖」だったようです。
インスリンを注射している糖尿病患者さんでは、つねに低血糖の危険がつきまといます。
血糖値は、安定しているように見えても、実は微妙なさじ加減によって絶妙にコントロールされています。
体調が悪かったり、激しい運動をしたり、食事の量や内容が変動しただけでも、血糖値は大きく動きます。
5月20日に施行されたばかりの「自動車運転死傷行為処罰法」が、今回初めて低血糖症に適用されました。
この法律により「特定の病気により正常な運転に支障が生じる恐れがある状態で運転」しても罰せられます。
「特定の病気」とは、「自動車運転死傷行為処罰法施行令」によって、以下の6つが規定されています。
(1)統合失調症(*1)
(2)てんかん(*2)
(3)失神(*2)
(4)低血糖症(*1)
(5)そううつ病(*1)
(6)睡眠障害(*3)
それぞれの病気には、下記*1、2、3のような限定条件が付きます。
*1:安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くおそれがあるもの
*2:再発するおそれがあるもの
*3:重度の眠気の症状があるもの
法律が適用されるかどうか、判断が難しい事例も出てきそうで、拡大解釈の心配もあります。
しかし今回のような事件があると、少なくとも低血糖については、今後は厳しい対処となりそうです。
インスリン治療中の方は、低血糖にならないような注意と、低血糖時の適切な対処が必要です。
御堂筋の運転手は、低血糖を感じて、どら焼きを食べてジュースを飲んだそうですが、効果不十分でした。
患者さんの治療状況によっては、「甘い物(砂糖)」を食べても血糖値がすぐ上がらない場合があります。
低血糖時に必要なのは「ブドウ糖」です。万全を期して、ブドウ糖を常に携行する必要があるでしょう。