「ホクナリンテープ」は、胸や背中に貼って気管支拡張剤を経皮吸収させる、テープ剤です。
薬を飲むのが嫌いな子どもには重宝します。どうせなら、ほかの薬も全部、テープ剤にしてほしいものです。
ホクナリンテープの薬効成分「ツロブテロール」は、「アドレナリン」と同様の作用があります。
<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-871.html" target="_blank" title="以前も書いた">以前も書いた</a>ように、アドレナリンは、生き物が危機的状況に直面したときに分泌されるホルモンです。
気管支を拡げて呼吸をしやすくするのも、その作用のひとつ。この働きを喘息治療などに使うわけです。
このホクナリンテープを「咳止めのシール」と呼ぶ患者さん(の保護者)が、結構多いです。
「咳止め(鎮咳剤)じゃないんですよ」と訂正するのですが、当たらずしも遠からず、かもしれません。
気道が拡がって呼吸が改善し、痰の喀出も容易となり、結果的に咳が鎮まるわけですから。
ホクナリンテープを開発したのは、呼吸器薬に強い「北陸製薬」と、粘着テープメーカー「日東電工」です。
北陸製薬が作った、アドレナリン類似成分の薬、ということで「ホクナリン」です。
私が研修医の頃には存在していた北陸製薬ですが、その後ドイツの化学会社「BASF」の傘下に入りました。
北陸製薬はその後「アボット」の傘下へと変わり、さらに「アボット・ジャパン」となって現在に至ります。
ちなみにBASFと言えば、昔の安いカセットテープの製造元の思い出が私にはあって、イメージが悪いです。
一方で日東電工から、乾電池・磁気テープ事業が独立してできた会社が、のちの「日立マクセル」です。
これまたカセットテープではお世話になりました。
今はもう、カセットテープは使いませんが、かわりによく使うのがホクナリンテープと、そういうオチです。