パイロット不足

ピーチ・アビエーションの大量欠航で明るみに出てきた、パイロット不足問題。

日経記事によると、ANAは今春から、パイロットの飛行時間を月55時間から60時間に増やしたとのこと。

パイロットが足りなければ、一人一人をもっと働かせようと、そういう発想です。

こういった話を聞くと、いつも<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-634.html" target="_blank" title="パイロットと医者">パイロットと医者</a>(とくに外科医)を比較してしまいます。

どちらも、人の命を直接あずかる仕事であり、その専門性には似た側面があるからです。

しかし、そのパイロットの飛行時間が、月に55時間とか60時間というレベルだとは、まったく驚きました。

なぜなら外科医の手術時間は、月に100時間から多いときは150時間以上なんてのも当たり前だからです。

医師がパイロットと違うのは、自分の体力の続く限り、求められた診療を行うことができるということです。

しかしそのような過酷な条件で長時間労働しているのに、その結果責任だけを責め立てられてしまいます。

不足しているのは医師の総数ではなく、外科や救急や小児科や産婦人科など、忙しい診療科の勤務医です。

ドラマでは華やかに描かれるこれらの勤務医が、現実ではどれだけヘトヘトになって働いていることか。

アホらしいので、外科医はもう月に60時間しか手術しませんよ、なんてことになったらどうしますか。

パイロットの疲弊に理解があるのなら、勤務医の問題も、メディアはもっと真面目にとりあげるべきです。

メールの自動転送

失敗談を書かなければなりません。メールの転送に関する、恥ずかしい話です。

ある臨床系のメーリングリスト(ML)でのこと。

一応説明しますと、ML宛にメールすると、全メンバーに一斉送信される仕組みになっています。

特定のメール宛に返信してもまた、全メンバーに一斉送信されるので、全員が読むことができます。

届いたメールをあとで必要に応じて参照できるように、私はEvernoteに保存するようにしていました。

設定は簡単。メールソフトで、MLのメールをEvernoteに自動的に転送するようにしておけばいいのです。

ところがEvernoteには、1日の間に受信できるメール数に上限があります。プレミアム会員だと250通です。

通常、1日に250通を超えることはありません。

しかし何らかの設定ミスによって、メールの「再転送」が起きると、この上限を超える可能性があります。

おそらくそうなのです。私がうっかり、メールを再転送してしまい、上限を超えてしまったのでしょう。

そこで何が起きたか。

メール数が上限を超えて転送できない場合、エラーメッセージが返信されます。

これが私宛に返信されるのならよかったのですが、おおもとのML宛に送信されてしまったのです。

ML宛のメールというのはつまり、全メンバー宛のメールということです。

このようにして、私のミスによるエラメッセージが、全メンバー宛に、一斉送信されてしまったわけです。

しかも、何度も何度も一斉送信されたようです。他のメンバーにとっては、迷惑メールそのものです。

皆様、たいへんご迷惑をおかけしました。

なんでも自動化していると、こういう落とし穴があるということですね。

フェルミ推定

Googleは、その社員採用試験で「フェルミ推定」と呼ばれる種類の設問を、これまでに出題してきました。

突拍子もないモノの数量を、知識と理屈によって推論するものです。よく知られている過去問を挙げると、

(1)シカゴにピアノの調律師は何人いるか?

(2)1台のスクールバスにゴルフボールは何個入るか?

この手の問題、私は嫌いじゃありません。むしろ好き。

調律師の場合、シカゴの人口からピアノの数を推定し、調律頻度などを仮定していき、算出します。

ゴルフボールなら、バスの容積を概算し、ボールの詰め込み方を考慮しながら、割り出します。

いずれも、仮定に仮定を積み重ね、極めて誤差の大きい結論に到達しますが、それはかまわないのです。

適切な知識で妥当な推論がなされているかどうかが重要であり、試験官はその思考過程を評価するわけです。

驚くのは、この試験が口頭試問(面接)ってことです。このややこしい問題に、即答しなければなりません。

ところが最近Googleは、フェルミ推定のような設問は人材選別には効果がなかった、と発表しました。

そりゃそうでしょう。何をいまさら、って感じです。

採用試験での奇問は、Googleという会社のユニークさをアピールするのが目的ではなかったのですか?

いまのGoogleが採用基準として最優先するのは「学習能力」だそうです。なかでもとくに重要な資質は、

「新しいモノを見つけ、すぐに習得し、バラバラの情報から共通点を見出し、発展させる能力」だとのこと。

「情報を迅速に統合して応用する力」と言うこともできるでしょうか。

この能力を問う試験としては、フェルミ推定の設問も、あながち見当違いではないかもしれませんが。

ハッシュ関数

「ハヤシライス」という食べ物を、私はあまり好きではありません。

味が単調だし、明らかにカレーライスの二番煎じであるところがイヤなのかもしれません。

カレーのCMで南利明が「ハヤシもあるでよ〜」と言っていたように、あくまでも二番手なのです。

「ハヤシ」の語源には、人名説など諸説ありますが、「ハッシュドビーフ」由来との説が有力です。

ならば「ハッシュド」とはなんぞや。「hash」という動詞の意味を、手持ちの英和辞典で調べてみると、

(1)(肉などを)細かに切る、(2)ごた混ぜにする、(3)徹底的に討議(吟味)する

ここからが本題です。最近「ハッシュ関数」という言葉をよく耳にしますね(耳にしませんか)。

あるデータから、一定の演算によって、固定長の数値(ハッシュ値)を生成することです。

元データを細かく切って、ごた混ぜにして、徹底的に吟味して算出した数値ということなのでしょうか。

データの改ざんの有無を見つけ出すのに有効な手法であり、セキュリティーの要です。

厚労省が、レセプト情報と特定健診情報を統合する際に、データの匿名化に使ったのもハッシュ関数でした。

保険者番号や氏名、生年月日等の情報から計算したハッシュ値によって、両者を「名寄せ」する算段でした。

ところが元データに全角と半角が混在していたため、ハッシュ値も異なり、名寄せ不可能となりました。

たしかにレセプト上では、保険者の記号番号には全角の数字が使われています。いまどき全角の数字です。

何億もかけて構築したシステムが、こんな時代遅れのしきたりによって、あっさり役立たず。

いつも思うことですが、レセプトに限らず、お役所は全角数字に固執しすぎです。

心臓出血

穏やかではないタイトルで失礼します。

いま問題になっている「ハートブリード(Heartbleed)」を直訳したまでです。

ネットでよく使われている暗号化の仕組み「OpenSSL」で発見された、重大な脆弱性のことを指します。

「https://」で始まるURLのサイトは、SSLが使われており、そのうち6割以上がOpenSSLだそうです。

日本のサイト(JPドメイン)のうちの半数近くが、その影響を受けるといわれ、一大事になっています。

私が使っている三菱UFJニコスカードの情報も、一部漏洩したと報じられました。身近なゆゆしき問題です。

暗号化の仕組みに問題があったのでは、もう何を信じて良いのやらわかりません。

今回バグが見つかったのは、OpenSSLの「ハートビート(heartbeat)」という機能だそうです。

自分(=ネットワーク機器)が生きている(=稼働している)ことを、定時連絡する信号の仕組みです。

これを心臓の鼓動にたとえて、heartbeatと名付けたのです。まあ、そこまではヨシとしましょう。

しかし、心鼓動(心拍動)の不具合に対して、心出血(Heartbleed)と命名するセンスはどうかと思います。

鼓動の不具合なら不整脈(Arrhythmia)でしょう。鼓動が乱れても血は出ません。

この問題点が公表されたのは、ちょうど1カ月前の4月7日のこと。

しかしそれよりずっと前から、米国家安全保障局(<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-612.html" target="_blank" title="NSA">NSA</a>)はこのバグを知っていた、という話があります。

じゃあ、あれですか、ネットを駆け巡る暗号通信はみな、NSAに筒抜けですか。

Bloombergにスクープされたこの情報はしかし、NSAがきっぱりと否定しています。

まあ、NSAの否定なんて、世界中の誰も信じませんけどね。でもこういう陰謀話って、私は好きです。

虫と植物で創薬

この季節、雑草の伸びが激しいので、久しぶりに庭の草取りをしました。

1本1本抜いたのではラチがあきません。生垣用の電動ヘッジトリマーを使って、刈り取りです。

こういった作業中には、さまざまな虫たちに出遭います。

芝生の上で無数に跳ねる、名も知らぬ小さな虫が、バンバン目に跳び込んで来ます。

湿った区画には、思った通りナメクジが潜んでいます。いつ見ても、地味で陰気な生き物です。

イモムシは、ナメクジに比べれば圧倒的にカラフルでです。

触るのも平気ですが(しかしできれば軍手で)、庭木に害がありそうなので、見つけたら駆除します。

おおむね害虫のイモムシですが、遺伝子組み換えによる製薬原料として、人類の役に立っています。

子宮頸がん予防ワクチン「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-570.html" target="_blank" title="サーバリックス">サーバリックス</a>」は、イラクサギンウワバという「青虫」っぽいのを使います。

多量の<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-935.html" target="_blank" title="生糸">生糸</a>を作るカイコの能力を利用して、インフルエンザワクチンを作ろうという動きもあります。

鳥インフルエンザのパンデミックが起きた場合、急いで多量のワクチンを作るには、最適な方法だそうです。

同様の組み換えワクチンを、植物を利用して作る方法も開発されつつあるようで、今後発展しそうです。

田辺三菱製薬が昨年買収したカナダ企業は、遺伝子組み換えタバコによるワクチンの生産を研究しています。

なぜタバコがいいのかよくわかりませんが、きっと発育が早くて生産しやすいのでしょう。

このカナダ企業は、田辺三菱とPhilip Morrisが共同で買収したようです。できればJTに頑張ってほしかった。

USBメモリの問題

東京医大の職員が、脳神経外科の患者データを記録したUSBメモリを、学会出張中に紛失したとのこと。

この事件には、いろんな観点から、問題点が含まれています。

まず第一に、患者の個人情報を院外に持ち出したこと自体が、医療従事者の常識に照らせば、規則違反です。

学会発表は通常、PCプレゼンテーションで行われますが、その時に使うパソコンにも、注意が必要です。

個人情報を含む資料は、どのような形態であっても、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-680.html" target="_blank" title="紛失と盗難">紛失と盗難</a>の可能性を常に考慮しなければなりません。

私はかつて、臨床データ解析用のファイルでは、個人名等を省いてカルテ番号だけで管理していました。

しかし今思えば、この方法でも不十分でしょう。カルテ番号にも暗号化が必要です。

そうでなければ、USBメモリや携帯型HDDのようものには、個人情報を入れないことです。

突き詰めれば、紛失・盗難が許されないデータは、紛失・盗難が起きうる状態にするな、ということです。

USBメモリの記憶容量はどんどん大きくなり、値段は安く、本体のサイズは小さく、便利になりました。

その意味では、データ漏洩の危険性はますます高まっています。

私は数年前から、USBメモリはアプリの移動等の場合にのみ使用しています。データは入れません。

クラウドの時代ですから、そもそもデータの運搬は必要ないのです。

USBメモリみたいなちっこいものに、重要なデータを入れることは、もう止めるべきでしょう。

健診の基準値

日本人間ドック学会が、健診における血液検査などの「基準範囲」を発表したのは、つい1カ月前のこと。

「基準値が大幅に緩和された」と、マスコミはおおむね好意的に報じました。

その裏では「従来の基準は、医者や製薬会社が儲けるために、わざと厳しくしていたのだ」と言わんばかり。

ところがここに来て、専門学会等が反発し、マスコミもやや慎重な論調に転じています。

ひとことで言うなら「緩い基準値だけが一人歩きすると、治療が遅れる危険がある」というものです。

健診の意義は、健康上の問題点を早めに察知して、生活習慣の改善や早期治療に結びつけることです。

あくまでも、予防医療がその目的なのだから、基準は多少厳しめの方が理にかなっているはずです。

予防医療の総本山ともいうべき人間ドック学会が、なぜこのような発表をしたのか、理解に苦しみます。

さらに私がもっと問題だと思うのは、健康な人から得たデータをそのまま「基準値」と位置づけたことです。

「健康な人を調べたらこのような数値だった」ということに過ぎません。

「このような数値だったら健康です」というわけではないのです。逆は真ならずです。

たとえば、こう考えてみましょう。

健康な喫煙者を集めてみたら、1日の喫煙本数は30本以下だったから、30本までは吸ってもOKでしょうか。

たとえ20本でも10本でも、喫煙を続けるうちにさまざまな健康問題が生じてきます。

健康な男性のLDLコレステロール値が178以下だったから、178まではOK、とは言えないのは明らかです。

基準値は、健康リスクの有無を知るための指標であり、健康習慣改善のきっかけとなるべきものです。

人間ドック学会の発表内容は、臨床現場に混乱を招きかねません。ていうか、すでに混乱しています。

IEに緊急パッチ

Microsoftのインターネットブラウザ「Internet Explorer」の、緊急セキュリティパッチが配布されました。

PCを乗っ取られる恐れがあるほどの深刻な脆弱性が、先週発見されたためです。

対岸の火事と言うわけにはいきません。私のMacにも、Windowsをインストールしているからです。

慌てて手動で更新プログラムを実行してみると、ダウンロードされたプログラムの数がなんと150個。

前回の更新作業から約1年の間に、Windowsは150回もアップデートされていたということなのでしょうか。

インストール作業には、だいぶ時間がかかりそうなので、その間にこのブログを書いているところです。

修正プログラムはしばしば「パッチ」と呼ばれます。

パッチとは、セキュリティーの抜け穴をふさぐ「つぎ当て」であり、衣服の穴をふさぐパッチと同じです。

この言葉にはどうも、貧乏くさい響きがあります。その場しのぎ的なニュアンスも感じます。

プログラムにおいても、全面改訂ではなく、取り急ぎ必要な部分だけの修正ということなのでしょう。

しかし、外科とくに小児の心臓外科手術において、パッチは日常的に用いる用語でした。

たとえば心室中隔欠損症という疾患で、その欠損部を閉じる術式を「パッチ閉鎖術」と呼んでいたからです。

専用の特殊な布を、文字通りパッチのように穴に当てて、周囲の組織に専用の糸で縫着します。

この疾患にとっては、いちばん標準的な「根治術」であり、けっしてその場しのぎではありません。

とか言ってる(書いてる)うちに、インストール作業が終わりましたが、気になるアラートが出ました。

「1個の更新プログラムはインストールに失敗しました」と。詳細不明。こういうのがいちばん困る。

旅行中のブログ

本日までの5日間の連続休診によって、地域の皆様方にはご迷惑をおかけしたことと思います。

明日からは、通常通りの診療に戻ります。祝日診療が3日続きます。

昨日までの3日間、熊本を離れていました。連続2日以上の旅行は、開院以来初めてのことです。

このブログに関連して言えば、旅行中の執筆をどうするのか、というのが問題でした。対処法は3つ。

(1)旅先で書く

インターネットの時代ですからそれは可能です。可能ですが、そんな旅ってどうなの、ってことです。

(2)書かない

ブログの中断です。連続更新記録が止まってしまいます。これは、避けたい。

(3)書いておく

ブログには「予定投稿」の機能があります。あらかじめ下書きして、掲載日時を指定しておきます。

というわけで、私は今回(3)を選択。

旅立ちの前夜、当日分も含めて、4本のブログを書きました。おかげで睡眠時間は3時間でした。

今読むと、推敲が足りていません。後日こっそりと、微修正するかもしれませんが、お許しください。

ていうかこのブログは、その日思ったことや考えたことを書くのが基本です。

あらかじめ書いておくのは、本来の趣旨に反します。やっぱり(1)にすべきだったのかも。