骨太の少子化対策

「骨太の方針」という言葉が使われるようになったのは、いつからでしょうね。

基本骨格を整えるかわりに、肉や皮膚は多少犠牲にしますよ、というニュアンスを感じます。

昨日示された、骨太の方針原案のなかで、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-149.html" target="_blank" title="少子化">少子化</a>対策として挙げられたのは2つ。

(1)50年後も1億人の人口を保持

(2)第3子以降の出産・育児・教育を重点支援

人口目標はともかくとして、要となるのは出産・育児対策でしょう。で、それが「第3子」支援ですか。

そりゃこども3人以上となると、まず育児が大変だし、あとでジワジワと教育費の問題が起きてきます。

しかし、少子化対策の重点を第3子対策に絞り込むような考え方には、賛同できません。

政府はもう、未婚化対策はあきらめて、既婚者の子だくさんに期待しようというのでしょうか。

たとえそうでも、まず第1子と第2子が生まれなければ、第3子も生まれません。

素直に考えるなら、第1子にこそ、重点的な支援を行うべきでしょう。

2人3人と増やすかどうかは、親の考え方や職場環境・経済状況など、多くの個人的要因が影響します。

しかし少なくとも第1子は、どのような個人環境であっても、産みやすく育てやすくあるべきです。

出産・育児・小児医療・義務教育にかかる個人負担をすべてゼロにする、なんて骨太な方針は出ませんかね。

精神疾患の病名

日本精神神経学会が、精神疾患の病名に関する新しい指針を発表しました。

アメリカ精神医学会が作成した診断マニュアル(DSM)の、最新版(DSM-5)を翻訳したものです。

その翻訳における基本方針は、差別感・不快感を減らし、わかりやすい表現にすることだったそうです。

不可逆的状態と誤解させる「障害」という表現は、単なる症候を表す「症」に置き換えたりしています。

しかしそのおかげで、ヘンテコリンなことが起きています。たとえば、

(1)「言語障害」→「言語症」 意味不明、ていうかむしろ逆に感じます。「認知症」と同じ過ちです。

(2)「学習障害」→「学習症」 極度のガリ勉ですか? やっぱりおかしいでしょう。

(3)「パニック障害」→「パニック症」 これは許容範囲。むしろ改善。元がおかしかった。

元々のDSM-5で使われている「Disorder」という言葉は、普通に訳せば「障害」とか「不調」です。

それをなぜ「症」にしてしまったのか。「意味が反対になるよ」という意見は出なかったのでしょうか。

「認知症」という悪しき前例を踏襲したのか。「障害」がダメならせめて「機能障害」にしてほしかった。

(4)「アルコール依存症」→「アルコール使用障害」 これもまた、意味不明な日本語になっています。

毎日長時間パソコンをさわっている私などは、さしずめ「パソコン使用障害」となるのでしょうか。

しかし私としては、人並みにパソコンを使いこなせてると思っているので、「使用障害」は不本意です。

それに「障害」は使わないのでは? それこそ「パソコン使用症」のほうが、まだマシ。

セット割引

そろそろ蚊の季節。当院でも表玄関と裏口付近に、虫除けを設置しています。

昨年、勝手口用に「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-627.html" target="_blank" title="虫コナーズ">虫コナーズ</a>」を購入したのですが、玄関用にはより強力な虫除けを買いました。

「どこでもベープ未来150日間」というフマキラー社の製品です。「未来」の意味は、わかりません。

電池で作動するファンが内蔵されていて、薬剤カートリッジから有効成分を拡散する仕組みです。

新シーズン用に、取替え用の薬剤カートリッジを買おうと、Amazonで検索してみたところ、

「どこでもベープ未来150日取替え用1個入」税込価格998円(参考価格1,207円)。

「どこでもベープ未来150日セット」    税込価格973円(参考価格1,512円)。

なんと、カートリッジ単体よりもセット価格の方が安い。売れ筋商品の値引率を大きくしたためでしょうか。

当然私は、安い方のセットを買いましたが、明らかに省資源の精神には反します。

このやりかただと、使いみちのない本体(薬剤拡散装置)がどんどん溜まってしまいます。

それで思い出したのが、某大学に勤務していた頃の、学食での話。

日替わり定食の味噌汁の味が嫌いだったので、いつも食堂のおばちゃんに味噌汁を断っていたのです。

この場合の料金は、ご飯とおかずと漬け物の単品価格の合計になります。そしてそれが定食代より10円高い。

定食代から味噌汁代を差し引くのならわかりますが、逆に10円高くなることには納得がいきません。

ある先生が言うには「10円やるから味噌汁を飲めということでしょう」と。

なるほど、バランス良く栄養を摂らせるためのインセンティブということか。

あるいは、食堂の作業の流れを妨げる行為に対してのペナルティーなのかも。

救急車有料化

「救急車有料化」は、ときどき話題になるテーマです。

救急指定病院のうちの46.2%が有料化に肯定的で、否定的に考えているのは29.2%だったそうです。

また別の調査では、88%の医師が有料化が良いと答えています。

そもそも、救急車を利用することのメリットは何でしょう。

(1)病院到着までの所要時間が短いので、早期に治療が開始できる

(2)救急救命士による初期治療も期待できる

(3)治療が優先的に受けられる

(4)交通費が不要

本来の目的は(1)でしょうから、迅速な治療が必要な病状の場合、救急搬送は必須です。

迅速な治療が必要かどうか、その判断に迷うようなら、ためらわず救急車を呼ぶべきでしょう。

蘇生を要する状態の場合、救急救命士が駆けつけてくれることは大きなメリットです。救命率は上がります。

意識の無い患者を見たら、心臓マッサージと救急要請が最初にすべきことです。

多くの救急病院では、救急車で来院したかどうかによって、初期対応が大きく異なります。

しかしこのことを「悪用」して、外来診察の順番を早めるために救急車を利用するのは、言語道断です。

それと同様に、タクシー代わりに救急車を利用するなら、タクシー代を払えということになるでしょう。

経済的理由があったとしても、それは別の制度によって救済されるべきで、救急車を使うのは間違いです。

軽い病状による救急搬送件数を減らし、救急医療は重症患者に集中させるべきです。

ただ、病状が重症かどうかを正しく判断して救急要請しろ、というのも無茶な話です。

軽症なのに救急車を呼んだら有料、重症なら無料、という規則を作るのは、実際には難しいでしょう。

楽曲の配信停止

「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があります。さらに言うなら「仮に人を憎んでも作品を憎まず」です。

「CHAGE and ASKA」の昔のヒット曲を、現在の罪によって販売停止とするのは、どうなんでしょう。

ASKAが覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されると、ASKAが関わっている楽曲の販売が止められました。

CD販売会社は出荷を停止し、CDショップは回収(または完売)、一部の配信会社は配信を停止しました。

私はこの報道を聞いて、すぐに「iTunes」を見たところ、まだ配信を行っていました。

万一に備えて、とりあえず「SAY YES」をダウンロード購入。それが正解でした。

その直後に、ASKAの曲の配信が、ついにiTunesでも止められてしまいました。

配信停止までの2,3日の駆け込み需要によって、iTunesのJ-POP部門で「SAY YES」は1位だったそうです。

その中にはもちろん、私の購入分も含まれています。

こういうことになるなら、アルバムごと購入しておけばよかった。

ちなみに「先輩」ミュージシャン槇原敬之の場合、逮捕の約1年後には音楽活動を再開しています。

その3年後には「世界に一つだけの花」が大ヒット。きちんと罪を償えばこうなれる、という見本です。

混合診療の禁止

「混合診療」とは、保険が適用される「保険診療」と、保険適用外の「自由診療」を併用することです。

保険が利く従来の医療を3割負担で受け、それ以外の医療を自分の希望によって選択し、組み合わせる。

素直に考えれば、そんなの併用できた方がいいにきまってるでしょう、ってことになります。

私もそう思います。混合診療の禁止など、まったく理不尽で融通の利かないな規則なのです。

例えば以前にも書いた「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-836.html" target="_blank" title="ノロウイルス検査">ノロウイルス検査</a>」。

嘔吐や下痢などの胃腸炎症状に苦しむ患者さんが、ノロを検査して欲しいと来院されることは多いです。

その検査結果で治療法が変わることはありませんが、周囲への感染拡大を考慮すれば、知りたい情報です。

しかし、この検査への保険適用は、3歳未満か、65歳以上か、癌の患者さんなどに限られています。

もしも検査するなら、自由診療つまり自費診療となります。当院での価格設定は3,000円です。

「じゃあ3,000円払いますから、検査をお願いします」となるかと言えば、そういうわけにはいきません。

ノロの検査という自由診療を受けるのであれば、その他の診療もすべて、自由診療扱いとなるからです。

たとえば初診料や処方せん料や薬代など、通常は3割負担で受けられるものが、全額自己負担となります。

これが、混合診療を禁止している現行制度の、おかしなところです。

それがイヤなら診察や会計を先に済ませ、院外に出て、再び来院してノロの検査だけ受ける必要があります。

いいえもっと厳格には、保険診療と自由診療は、別の日に受けなければならないという解釈すらあります。

こんなおかしな制度なのに、たとえば医師会などは、混合診療の全面解禁に反対しています。

混合診療自体が悪いのではありません。その解禁後に、なし崩し的に起こりうることを心配しているのです。

さて、本題はむしろここから。怒濤の後編を待て。(つづく?)

クーデター

タイで3日前にクーデターが起きました。2006年9月以来、約8年ぶりです。

これに関連して「クーデター」の語源についての記事を、このところ新聞コラム等でよく目にします。

元はフランス語です。文字化けを避けるためカタカナで分割して書くと「クー ド エタ」となります。

「クー」は一撃とか打撃、「ド」は英語の「of」、「エタ」は国家という意味だそうです。

この話を掘り下げればけっこう面白いのですが、受け売りを長々と書くのも芸がないので、やめておきます。

「一撃」を意味する「クー」は、医学用語として、頭部外傷(外傷性脳損傷)の表現にも使われています。

交通事故などで頭部に打撃を受けた場合、その部位の脳に起きた損傷を「クー損傷」といいます。

その打撃で揺さぶられた脳が、反対側の頭蓋骨に衝突して起きる損傷は「コントラクー損傷」といいます。

「コントラ」は英語の「カウンター」と同じで「反対」を意味する言葉です。

受傷部位や方向によっては、コントラクー損傷の方が致命的であることも、珍しくありません。

ところで、前回2006年のクーデターの1カ月後に、私は学会発表のためにタイに行く予定だったのです。

テレビ報道を見ると、バンコク市内を戦車が走っています。こんな国に渡航して、はたして大丈夫か。

当初はそのような心配をしていましたが、治安は比較的安定しており、市民生活もすぐに平常に戻りました。

どうやらタイでは、クーデターという形で、軍が仲介して政権交代を行うことも珍しくないようです。

最終的に、軍司令官がプミポン国王の支持を取り付けて事態が沈静化するのが、いつものパターンなのです。

おかげで私も無事、バンコクでの学会発表を行い、アユタヤではゾウの背中に乗ることもできたのでした。

「山の日」法案

再来年から、8月11日が国民の祝日「山の日」となるようです。

「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案」が可決、成立しました。

これを含めて昨日は、参議院本会議で9つの法律案が、押しボタン式投票によって採決されました。

(1)金融商品取引法等の一部を改正する法律案・・・・・・・・・・(賛成223、反対12)

(2)保険業法等の一部を改正する法律案・・・・・・・・・・・・・(賛成223、反対12)

(3)健康・医療戦略推進法案・・・・・・・・・・・・・・・・・・(賛成209、反対27)

(4)独立行政法人日本医療研究開発機構法案・・・・・・・・・・・(賛成209、反対27)

(5)国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案・・・・・・・(賛成213、反対15)

(6)地方自治法の一部を改正する法律案・・・・・・・・・・・・・(賛成223、反対12)

(7)難病の患者に対する医療等に関する法律案・・・・・・・・・・(賛成235、反対1)

(8)児童福祉法の一部を改正する法律案・・・・・・・・・・・・・(賛成236、反対0)

(9)鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(賛成223、反対12)

反対票数には5パターンあり、その票数によって反対議員の顔ぶれもほぼ、決まるようです。

(A)反対27票=みんな+社民+共産+山本太郎氏

(B)反対12票=共産+山本太郎氏

(C)反対1票=山本太郎氏

(D)反対0票

(E)反対15票=維新・結い(一部)+みんな(一部)

山の日法案(5)の反対議員(E)はやや例外的ですが、それ以外の法案での反対者はわかりやすいですね。

キーパーソンは山本太郎氏です。彼が賛成したのは2法案だけ。とくに(7)は彼一人が反対しています。

氏のブログによると、法案の一部に問題があるので、それを提起するために反対票を投じたとのこと。

難病指定が広がるかわりに、それぞれの患者さんの自己負担が増えることを問題視しているようです。

その山本氏も、祝日が増える山の日法案については、賛成票を投じています。

一方でアントニオ猪木氏は山の日法案に反対しています。氏のブログを見ても、その理由は不明です。

人の命と地球

福井地裁が、関西電力大飯原発3,4号機の運転差し止めを命じる判決を下しました。曰く、

「生命、身体、精神、生活に関する利益は人格権であり、これを超える価値を他に見出すことはできない」

「原子力発電所の稼働は経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権よりも劣位に置かれる」

この判決を聞いて思い出すのは「人の命は地球より重い」という命題です。

数式で書くと、(1)「人の命>地球」 となります。

ここで右辺を、(2)「地球=人の命+人の命以外」 と分割することができると仮定します。

(1)と(2)より、「人の命>人の命+人の命以外」 となります。

その結果、「人の命以外」が負の値をとることになり、常識に反します。

よって背理法により、式(2)の仮定は誤りであると証明されます((1)は正しいとの前提で)。

つまり、人の命は、地球には含まれていないということです。

これによって、(3)「地球=人の命以外」 ということがわかります。

冒頭の命題を、(4)「人の命>人の命以外」 と書き換えれば、論点がはっきりしてきます。

判決文の趣旨を突き詰めると、この命題になるのかもしれません。

不発弾

宮崎市のマンション建設現場で昨日、基礎工事の掘削作業中に不発弾が発見されたとのこと。

場所を調べたら、宮崎駅の真ん前じゃないですか。怖い話です。

米国製の500キロ爆弾、信管付き、長さ135cm。ずいぶんとデカイのが出てきたものです。

処理方法や日程を、自治体と自衛隊などが検討中とのこと。近所なら見に行きたいところです。

奇しくも昨日は厚木市でも、住宅地のゴミ集積所から回収したゴミの中から、不発弾が発見されたそうです。

いまだにそんなものがあちこちから出てくるとは、驚きです。

こちらは地中から出てきたのではなく、何者かがゴミ集積所に出したという点が問題。

危険物と知った上での投棄は、犯罪行為でしょう。

発見された船子地区のゴミ収集カレンダーによると、昨日の水曜日は、缶・びん・もえないゴミの日です。

月曜日のもえるゴミの日に出さなかっただけでも、犯人には一抹の良心があったのかもしれません。

あるいはその不発弾が「もえない=爆発しない=危険物ではない」と判断して投棄したことのアピールか。

不発弾を発見したゴミ回収作業員の方は、それを「助手席にそっと置いて運んだ」とのこと。

危険を感じながらも、役目を果たそうとする、そのプロ意識とでも言いましょうか。心打たれます。