インフル治療薬

お子さんにタミフルを処方すると、その副作用としての「異常行動」を心配される方は、まだ多いです。

もうインフルエンザはだいぶ下火ですが、今日は治療薬について、おさらいしてみます。

(1)イナビル(吸入薬)

1度の吸入で済むので便利です。ただし喘息発作が出ている人では使いません。

成人では私の第一選択薬です。子どもでも、上手に吸入できそうなら(おおむね6歳以上)処方します。

(2)<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-514.html" target="_blank" title="タミフル">タミフル</a>(内服薬)

1日2回、5日間内服するのが面倒ですが、吸入ができない5歳以下ではほぼ唯一の薬です。

いまだに10〜19歳への投与が、原則禁止されています。ひところ「異常行動」が問題となったからです。

(3)ラピアクタ(点滴薬)

胃腸症状や消耗が強く、点滴が必要な場合に、補液薬とともに点滴する場合があります。

点滴なので即効性がありますが、私の印象では、この薬単独では、あと一歩な感じです。

(4)リレンザ(吸入薬)

イナビル登場前までは、よく使っていましたが、1日2回、5日間、というのがネック。吸入法も面倒です。

(5)麻黄湯(内服薬)

インフルエンザの疑いがあるけど確定していない人などに、よく使う漢方薬です。

空腹時に、熱湯に溶かして飲むのが効果的です。この用法は「湯」の文字が付いた漢方薬の、共通事項です。

タミフルに限らず、リレンザでもイナビルでも、その使用後の異常行動が報告されています。

詳細な調査では、それらの薬を使わなくても、インフルエンザで異常行動が起きることが、わかっています。

私の経験でも、インフルエンザ発症直後に、薬を使う前から幻覚が見えたお子さんが、何人もいました。

つまり幻覚や異常行動は、インフルエンザの症状のひとつであって、薬の副作用ではないのです。

もちろん、副作用ではない、ということを科学的に証明することは、とても難しいことです。

結局、かつていちばん使われたタミフルが、その濡れ衣を着せられ、いまだに着せられっぱなしなのです。

予防接種と増税

毎月1日と20日は「ゆめタウンデー」。今日はクリニックのお隣のサンピアンも賑わっています。

そうでなくても<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-820.html" target="_blank" title="消費税増税">消費税増税</a>を前にして、小売店では「駆け込み需要」に沸いているようです。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-813.html" target="_blank" title="診療報酬">診療報酬</a>はプラス0.1%改定なので、消費税がアップするにもかかわらず、医療費はほとんど変わりません。

前にも書きましたが、増税分だけ、診療報酬は実質的にマイナス改定なのです。ココ大事です。

初診料などが少し上がりますが、医療費全体で見て、患者負担はほとんど変わらないでしょう。

しかし医療機関での支払いの中でも、自由診療には消費税がかかるので、増税の影響がもろに現れます。

たとえば予防接種の料金。定期予防接種は無料ですが、任意予防接種にはそれなりの費用がかかります。

何かの理由で定期接種を逃した方に、自費で接種を受けてもらう場合、そのあまりの高額に誰もが驚きます。

たとえばポリオワクチンは、定期接種なら無料ですが、任意接種なら4回で4万円ぐらいかかります。

そんなに高いなら、やめてしまおうかと、そう思う方が出てきても仕方ありません。

子どもたちを伝染病から守るためには、接種漏れの方への接種料金の助成制度が必要だと、いつも思います。

ワクチンの納入価格が4月から上がると、医療機関はその分、接種料金を値上げしなければなりません。

薬品卸に「増税分を値引きしてくれ」などと言うことは、法律違反なのでできません。

なので私は各社に対して、消費税とはまったく関係なく、「春の値引の見積」をお願いしているところです。

医師国家試験

2月に行われた医師国家試験の合格者が、昨日発表されました。8千人近い医師が、新たに誕生しました。

私が受験したのは1985年。その前年までは春と秋に行われていた試験が、この年から春の1回になりました。

ちょうど私の学年は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-611.html" target="_blank" title="共通一次試験">共通一次試験</a>が始まった年。試験改革の色んな荒波を、もろにかぶった学年なのです。

試験会場は、福岡の親不孝通りにあった予備校でした。おそらく水城学園か、そうでなければ九州英数学舘。

いまとなっては、どちらの予備校も姿を消し、親不孝通りの名称すら失われてしまっています。

私の頃の医師国家試験は4月上旬に行われ、合格発表は5月下旬でした。

その合否もわからぬうちに、4月から病院研修がスタートしました。無資格なので見習いみたいなものです。

しかし見習いとはいえ、診察・採血・回診準備・手術の助手・標本整理などで、多忙な日々を過ごしました。

そのような暫定研修医生活が1カ月ほど経ったころ、ようやく、国家試験の合格発表の日が訪れました。

万一不合格となると、その日をもって病院勤務は終わり、翌日から受験勉強に戻るという、過酷な運命です。

自己採点の感触で、まあ合格しただろうと思ってはいても、発表当日は、ひどく緊張したものです。

研修医仲間と、奪い合うようにして見たのは、その日の夕刊だったでしょうか。合格者名の一覧です。

探しました、「鶴原由一」の4文字を。しかし、何度見ても無いのです。

ただそこに、「鶴田由一」という、ソックリな名前は、ある。きっと誤植だろう。そうに違いない。

翌朝いちばんに、厚生省に問い合わせてみると、やっぱり新聞社のミスでした。しっかり仕事しろ、新聞社。

禁煙啓蒙CM

増税(=<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-43.html" target="_blank" title="タバコ値上がり">タバコ値上がり</a>)前ですが、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-856.html" target="_blank" title="禁煙外来">禁煙外来</a>を新たに受診する方は、思ったほど多くはありません。

テレビでJTのCMを見ていても、分煙とかマナーの話ばかり。まさかJTが禁煙を推奨するはずがありません。

そのJTに遠慮してか、日本ではタバコの害を正面から取り上げたCMがありませんね。

一方で外国の禁煙啓蒙CMを見てみると、激しいですね。グロいですね。オーストラリアとかカナダとか。

タイのCMはその点、心情に訴える作品で、なかなか泣けます。基本的に、タイのCMは泣けます。

健康上の問題は疑う余地もない喫煙ですが、「自己責任」という理屈によって、合法とされています。

しかし受動喫煙は、周囲の人間に健康被害をもたらすものであり、その意味では違法でしょう。

外国の調査で、両親が喫煙する家庭で育った子どもに、動脈硬化が起きていることが明らかになりました。

この研究によると、そのような子どもの血管年齢は、そうでない子どもより3.3歳「老けている」そうです。

問題なのは、このような病的変化が不可逆的であり、その子の成人後まで続くということです。

ところで面白いことに、片親だけが喫煙者の場合には、前述したようなリスクが認められなかったそうです。

両親が喫煙者の場合、子どもの前で堂々と吸い、一方だけだと、離れて吸うからだと推測されています。

わが子に受動喫煙させてしまうことへの罪悪感は、夫婦がともに吸うことでぼやけてしてしまうようです。

アスピリン

インフルエンザなどに罹ったお子さんには、なるべく解熱剤を使わないようにしてもらっています。

どうしても必要なとき、使えるのは「アセトアミノフェン」(商品名はアンヒバやカロナール)だけです。

「アスピリン」は「ライ症候群」を引き起こす可能性があるので、小児の解熱に使ってはなりません。

しかしアスピリンは、成人では「血液サラサラ」の薬として、たいへんよく使われています。

もともと、解熱鎮痛剤としてアスピリンを開発したのは、ドイツの化学会社「バイエル(BAYER)」です。

当初はバイエルの商標だったアスピリンですが、ドイツが一次大戦で敗れた後には、普通名詞になりました。

米国人はアスピリンが好きらしく、映画でその錠剤をむさぼり食うように飲むシーンを、よく目にします。

アスピリンには、出血が止まりにくくなるという「副作用」がありました。

血小板の働きを抑制する働きがあることが、後にわかりました。

これを逆手に取り、「抗血小板薬=血液サラサラの薬」として用いられるようになったわけです。

ただし、一般の解熱鎮痛剤に含まれるアスピリンの量では多すぎて、抗血小板薬としては逆効果でした。

ちょうど良い投与量が、「小児用バファリン」に含まれる81mgという、少量のアスピリンだったのです。

そこで、心臓病の患者さんなどに、小児用バファリンを1日1錠投与することが始まりました。

私もかつて「小児バファリン 1錠1x 朝食後」などという処方せんを、数え切れないほど書いたものです。

しかし成人に「小児用」の薬を流用するこの方法は、正式に認められた処方ではありませんでした。

正式な抗血小板薬として現在は「バファリン配合錠A81」と「バイアスピリン」が発売されています。

前者は「バファリン」の名を残し、アスピリン含有量は81mgを維持。

後者はバイエルの「バイ」を冠し、アスピリン含有量は100mgにアップ。どっちが良いのやら。

それでは、いま市販の小児用バファリンを飲んでも血液サラサラ効果があるのかというと、それは違います。

「小児用バファリン」とか「キッズバファリン」という名称の薬に、アスピリンは含まれていないからです。

冒頭で触れたような理由から、小児用解熱鎮痛剤の成分は、アセトアミノフェンに切り替わっているのです。

論文撤回反対

その存在までもが疑われ始めた「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-889.html" target="_blank" title="STAP細胞">STAP細胞</a>」ですが、こうした状況になると、私は異を唱えたくなります。

へそ曲がりなのでしょうか。どうも日本中が、間違った方向に進みそうな気がしてなりません。

STAP細胞の論文は、さんざん叩かれ、理研も小保方さんも撤回の意向のようです。

その一方で共著者のバカンティ教授は、撤回されるべきではないとコメントしています。曰く、

「比較的軽微な間違いや外部からの圧力によって無視するにはあまりに重要な論文だ」

( the findings presented in these papers are <a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-400.html" target="_blank" title="too significant to disregard">too significant to disregard</a> based on relatively minor errors or external pressures)

これほどの画期的発見を、著者の不手際や外野の批判ごときでフイにしてたまるか、てな感じでしょうか。

世界中の多くの科学者は、おそらくいまの段階では、STAP細胞を捏造と決めつけてはいないと思います。

あまりにも画期的な発見は、往々にして最初は叩かれやすいことを、歴史から学んでいるからです。

ところが日本国内の報道は、論文を撤回してまた一からやり直すべきだと、論じています。

一見、潔い考え方ですが、早い話が、STAP細胞をつぶしにかかっているのです。臭いものには蓋なのです。

なにか「コト」が起きると、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-72.html" target="_blank" title="一斉に反対に向いてしまう">一斉に反対に向いてしまう</a>、日本人の悪しき体質そのものです。

極小論文

きのう書店で立ち読みしていて、久しぶりに驚くべき記述を目にしました。

朝日新聞の夕刊のコラム「素粒子」の執筆者だった、轡田隆史氏が言うには、

「100行を書いて、3行に削る」

どんだけ推敲するんですか。簡潔な文章を書くのが職業の方とは言え、さすがに削りすぎでしょう。

長短だけでもないですが、読みやすい文章は書くのが難しく、簡単に書けた文章は読みにくいものです。

で、思いついたのが、入学試験や就職試験などでよくおこなわれる「小論文」です。

なにかテーマを与えて、80分で800文字とか、100分で1000文字とかの文章を書かせるという試験。

あれって、採点が大変だろうなと思うのです。論文の評価が難しいし、なにより、読むのに時間がかかる。

だいたい、短い時間で規定の文字数まで膨らませようと苦労して書いた文章など、贅肉だらけです。

それに、テーマが一つでは、受験者に運不運が生じやすいのも問題です。

それよりも、短くて引き締まった文章をたくさん書かせる「極小論文」試験はどうでしょう。

たとえば5個のテーマを与えて、200字の文章を5つ書かせる、とか。ツイッター風に140文字でもいいかも。

この方法なら、受験者の知識や思考力を多角的に評価できるし、なにしろ採点が楽ですけどね。

緊急地震速報

未明に地震がありました。震源地は伊予灘で、最大震度5強。熊本県内でも震度4の場所があったようです。

睡眠中の地震でも、たいてい私は敏感に目覚めますが、もちろんそれは、大きく揺れ始めた後です。

ところが今日は、地震の直前に目覚めることになりました。緊急地震速報の警報が鳴ったからです。

夜中の2時過ぎといえば、もっとも眠りが深いころです。

装着していた「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-649.html" target="_blank" title="UP by Jawbone">UP by Jawbone</a>」の睡眠記録を見ると、その時間に突然覚醒した記録が残っていました。

緊急地震速報の警報音は、私には初めての経験でしたが、まあそれにしても、けたたましいですね。

いったい何が起きたのか、とにかく枕元の何かが、大音響が鳴り響いています。

枕元にあるモノと言えば、iPhone、電話の子機、インターホンの子機、目覚まし時計、保湿剤。

そのうちどれが鳴っているのか、状況がつかめない中で、「地震です」との音声ガイダンス。

これでようやく、少し状況が飲み込めました。と思ったら次の瞬間、揺れが始まりました。

気象庁では、午前2時07分2.9秒に地震波を検知して、その7.7秒後に警報を発表したとのこと。

通信会社はそれを受けて、対象地域に向けて配信したわけです。

警報から主要動到達までの時間は、気象庁のHPによると、わが家付近では約20秒だったようです。

配信処理に多少のタイムロスがあったとしても、15秒程度は、身を守るための時間が与えられたわけです。

ただしその15秒間、わたしはただ、ベッドの上であたふたしていただけでした。

コピペ論文

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-889.html" target="_blank" title="おととい">おととい</a>「予言」したように、STAP細胞騒動では、小保方さんへの人物・人格攻撃が始まっています。

過去の論文どころかSTAP細胞の論文すら、「コピペ」だらけで書かれていることが、明らかになりました。

論文を手書きしていた時代なら、もう少し上品に「真似る」ところですが、いまや完全コピーが可能です。

あちこちのサイトが、小保方さんの論文と他の論文を比較検証し、その驚くべき類似性を示しています。

似ているなんてものじゃなく、他人の論文を、あたかもテンプレートのように使っています。

このような事実は、小保方さんが過去に書いたすべての論文の信頼性を損ねるものです。

しかしそれでも、敢えて言うなら、論文はしょせん、真実を説明する道具に過ぎません。

極論すれば、たとえ論文にごまかしがあっても、STAP細胞の存在が真実なら、それでいいと私は思います。

今回の論文が取り下げられたとしても、STAP細胞が本物なら、いつか誰かが立証してくれるはずです。

ただし、小保方さんの名誉が回復するのも、その時まで待たねばなりません。

CarPlay

Appleのモバイル向けOSの最新版「iOS 7.1」が昨日リリースされたので、ただちにアップデートしました。

OSは常に最新のものにするのが私の流儀であり、模様眺めなどしないのが私の信条です。

おかげで何度も痛い目に遭ってきたことは、言うまでもありません。

前バージョン「iOS 7.0.6」にアップデートしたときの「エラー騒ぎ」については、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-872.html" target="_blank" title="先日書いた">先日書いた</a>通りです。

ハードでもソフトでも、出たばかりのモノには常に、仕様の問題や初期不良のリスクがあります。

しかし敢えて私は、新製品は発売日に買いたいし、ソフトウェアはすぐにアップデートしたいのです。

その結果、トラブルに直面したとしても、必死に対応策を考え、乗り越えていく過程がまた、好きなのです。

さらにその苦難の顛末を、このような文章にして披露し、誰かの参考になれば、それもまた幸せなことです。

これを「人柱」と呼びますが、自ら進んで行う行為なので、Apple信者としては「殉教」とも言えます。

それはさておき、iOS 7.1のウリといえば、「CarPlay」への対応でしょう。

iPhoneなどの端末を、言うなれば「スマートカー」のコントローラーにしてしまおう、というわけです。

考えてみると車というのは、家庭よりも圧倒的に狭い居住空間です。iPhoneとの親和性は高いでしょう。

さっそくそのCarPlayを搭載した「フェラーリFF」のデモ動画が、いま話題です。

人柱的には、ただちにこの車を購入すべきところなのですが、お値段がちょっと・・・