母犬の想い

このブログにも何度も登場してきた、わが家の愛犬。名前はアンナといいます。黒いラブラドールです。

いまから10年ぐらい前に、アンナは子犬を生みました。しかも8匹。

はじめ片手に乗る大きさだった子犬たちはみな、すくすくと育ちました。

一方で母犬のアンナは産後にひどい乳腺炎となり、入院・手術・輸血を受け、一時は生死をさまよいました。

それを乗り越えた後のわが家は、9匹の犬がひと部屋を占領する、まさに犬屋敷となってしまいました。

知人を頼り、子犬をもらってくれる人を捜しました。広告も出しました。

そのおかげで5匹は引き取られて行きましたが、残る3匹の里親がどうしても見つかりません。

3匹はどんどん大きくなり、わんぱくになり、世話も大変ですが愛着も増すばかり。

ある日、某所で犬の里親探しの会が開かれると知りました。

母犬アンナの悲しげな鳴き声をあとにして、子犬3匹を大きなかごに入れて車で出かけました。

無事、子犬たちを大事にしてくれそうな里親たちに出会うことができましたが、かごはカラになりました。

帰宅したら真っ先にアンナを抱きしめてやろうと、家の中を探すと、アンナはソファーの上にいました。

腹ばいで動こうともせず、じっとこちらを見つめていますが、何かおかしいのです。何か隠している。

そう感じて、無理矢理ソファーからおろすと、そこに見つけたものは、小さな犬のぬいぐるみ2匹でした。

私が子犬を連れ出したあと、家中を探し回ったのでしょう。そして、子犬のぬいぐるみを見つけたのです。

決して動かず暖かみもないその2匹を、自分の居場所に連れ帰り、おなかの下で暖めていたのです。

若い頃は真っ黒のビロードのような毛並みのアンナでしたが、すでに白髪だらけになりました。

少し前までは喜んで散歩していましたが、最近は足腰も弱ってよろよろで、もはや散歩もやめていました。

食が細ってあばら骨が目立ち、体力も落ちてリビングのテラスにも上れなくなりました。

一昨日までは多少は食べていたのですが、昨日の朝から突然、何も食べず、まったく動けなくなりました。

昨夜仕事から帰宅してすぐ、庭に横たわるアンナをなでてやって驚きました。言葉を失いました。

すでに骨と皮だけになっていました。そこまでやせ細っていることに、私は昨日初めて気づいたのです。

仕事の忙しさにかまけて、ここのところずっと、アンナと触れ合っていませんでした。

アンナを部屋に入れ、口に飲み物を注ぐと、少し飲み、私の指もなめ、前足で何か意思表示をしてくれます。

夜中も今朝も、ときどき水分を飲みましたが、昼過ぎに与えた時は、もういらないよ、という顔をしました。

そして、ちょっと目を離したその間に、眠るように息を引き取っていました。本当に眠っているようでした。

家族の一員として過ごした15年間でした。思い出をいっぱい、ありがとう、アンナ。