バイオテロと水痘

「猛毒のサリンが名古屋の野球場で散布された」という想定で、国などの合同訓練が行われたそうです。

「化学テロ」で使われるサリンなどは、ただちに毒性を発揮するので、テロ現場で大きな被害が出ます。

一方で「バイオテロ」の場合、病原体感染から発症までに潜伏期があり、被害が拡大しやすいのが問題です。

バイオテロに使われ得る病原体と言えば、「炭疽菌」と双璧をなすのが「天然痘」ウイルスです。

人から人へ感染しない炭疽菌とは異なり、天然痘は感染力が極めて強く、発症したら致死率30%です。

天然痘は、ワクチンによる予防がきわめて有効で、1980年にはWHOから根絶宣言が出されました。

日本でも1976年に、定期接種としての種痘が中止されました。

すでに地球上から根絶された天然痘ですが、一部の研究機関には、そのウイルスが保管されています。

もしもウイルスがテロリストに奪われたら、それこそ映画に出てくるような一大事になります。

じつは、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-810.html" target="_blank" title="水痘ワクチン">水痘ワクチン</a>を定期接種化するのには、「バイオテロ対策」という側面があります。

天然痘の初期症状は、水痘に似ているそうです。19世紀まで両者は、明確に区別されていなかったほどです。

学術資料の写真で確認すると、少なくとも最初の2,3日は、天然痘の発疹は水痘にそっくりです。

発症5,6日後以降の発疹の経過はまったく異なりますが、感染防御の観点からは、もはや手遅れの時期です。

水痘が蔓延してありきたりになっている日本で、天然痘をすぐに見分けて隔離することは困難でしょう。

というわけで、天然痘バイオテロを早期発見するためには、まずは水痘を撲滅しましょう。

「明日ママ」問題

日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」が、社会問題になっています。

このドラマを私は一度も見ていないので、その内容についてコメントはできません。

昨日の放送分だけでも見ようと思っていたのですが、残念なことに、録画設定を失敗していました。

マスコミ報道はともかく、慈恵病院のコメントから想像すると、問題はこのドラマの「加害性」のようです。

虐待を受けたことのある子どもの心に突き刺さり、「フラッシュバック」の引き金になりかねないと。

評判を気にするのか、うしろめたいのか、番組のスポンサー全社が番組内でのCM放送を中止したようです。

これは異例のことですが、企業の態度としてはいかがなものか。

表に出ないように、こっそり息をひそめ、やり過ごそうとしている姿勢を感じます。

ドラマに反対ならスポンサーを降りるべきだし、ドラマの価値を認めるならCMも堂々と流すべきでしょう。

一方で日本テレビの社長は「最後まで見ていただければ、私たちの意図が理解していただける」とコメント。

何を言われようと信念を持ってドラマを放送し続ける態度は、一見、筋が通っています。

しかし、最終回までのドラマ全体を見てその意義を理解してくれ、というのは、あくまで大人の理屈です。

その回その回の放送によって精神的被害を受ける子どもがいるとすれば、全体もへったくれもありません。

小説や映画ではなく、誰もが見やすい民放の番組というところが、問題なのかもしれません。

そうは言っても、やはり内容を見ないと責任ある意見は述べられません。来週はちゃんと録画しよう。

MacPro届く

ついに到着!「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-808.html" target="_blank" title="MacPro">MacPro</a>」

12月19日の午前0時(米国太平洋時間)に発売されるやいなや、ただちにAppleStoreで<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-807.html" target="_blank" title="発注">発注</a>したやつです。

「1月出荷予定」とのことで、首を長くして待っていましたが、月末が近づいた本日、ようやく届きました。

ちなみにいま発注したら、3月出荷になるようです。

多くの製品を中国などで組み立てているAppleですが、このMacProは例外的な「Made in USA」です。

今日はまず、そのデザインの話をしなければなりません。むろん、斬新なんて言葉では言い足りません。

発売前から<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-618.html" target="_blank" title="ゴミ箱">ゴミ箱</a>と揶揄されてきましたが、いざ現物を見ると、そんな表現は的外れだとわかります。

決して奇異でななく、むしろ芸術作品とか、オブジェとかいう表現の方がふさわしい一品です。

デザインしたのは、ジョナサン・アイブ。大阪弁がうまい人です(ウソ)。

ジョブズがAppleに復帰した後、アイブはiMacをデザインして頭角を現しました。

その後のApple製品は、MacBookAirからiPhone、iPadに至るまで、すべて彼がデザインしています。

アイブのデザインは近年どんどんシンプルになり、究極的な「ミニマリズム」を追求して今に至ります。

その頂点とも言えるのが、いま私の目の前にあるMacProというわけです。

とりあえず床の間に置いてみたところ、これが良い感じなんです。どう見ても、斬新な花瓶(または骨壺)。

山を下る

「過去にさかのぼる」という言葉は、よく考えてみると不思議です。

「川をさかのぼる」と同様に、高い方に向かうイメージがあるからです。過去は上の方にあるのでしょうか。

たしかに、「時代が下って」などという表現もあります。

高い位置に過去があり、時は流れて下ってくるものなのでしょうか。

一方で、人も時代も前に向かって進んでいきます。「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」です。

これらを総合すると、未来は「前方」かつ「低い位置」にあると、そういうことになりますね。

つまり人生とは、どこかの山頂に生まれ、その山をだんだんと下り、平野を歩き回り、海に向かうものだと。

「人生は重荷を背負って山道を歩むがごとし」と言うと山を登る印象がありますが、実は下っているのかも。

もしも人生を「登山」に例えると、どのようなルートを辿っても、ゴールは山頂に限定されてしまいます。

しかし人生が「下山」なら、山を下りる方向、道の選び方によって、到達する平野もまるで異なります。

後者の方が、人生っぽくていいですね。

成人用肺炎球菌ワクチン

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-810.html" target="_blank" title="水痘ワクチン">水痘ワクチン</a>」と並んで「成人用肺炎球菌ワクチン」も、来年度中に定期接種化されることになりました。

今日は、成人用肺炎球菌ワクチンの定期接種の、その奇妙な取り決めについて、取り上げます。

このワクチンは、とくに高齢者で重症化しやすい肺炎球菌感染による肺炎を、予防するためのものです。

ただし、高齢者全員がいちどに接種するとなると、人数が多すぎます。ワクチン不足が懸念されます。

そこで、高齢者の「入り口」である65歳を、接種対象とする方向に決まりそうです。

注意してください。接種対象は「65歳以上の者」ではないですよ、「65歳の者」ですよ。65歳限定です。

しかしそれでは、すでに66歳以上の高齢者はどうするんじゃい、となるので「経過措置」がとられます。

その経過措置による接種対象は、「65歳以上で5の倍数の年齢の者」とする案が固まりつつあります。

経過措置は5年間。たとえば初年度に66歳の人は、4年後の70歳のときに接種することになります。

この5年間で、65歳以上の高齢者の接種がすべて完了するはず、というのが、まさに絵に描いた餅です。

経過措置が終了したら、接種制度の再検討はするものの、おそらく対象は65歳限定となるでしょう。

一見、5年間の猶予があるように見える経過措置ですが、個人にとっては、接種対象となるのは1年限りです。

定期接種化の趣旨からは、何歳の高齢者でも接種可能にしてもいいはずなのに、お役人は融通が利きません。

これはちょうど、かつての麻しん/風しん混合(MR)ワクチンの第3期と第4期の接種と同じやり方です。

接種を逃した子どもたちにも、特例接種を認めれば、麻疹や風疹はずいぶん減らせると思うのですが。

インフル大流行

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-832.html" target="_blank" title="先日">先日</a>「予言」したように、ついにインフルエンザは「流行期」に突入したようです。

発熱して来院される方が急増し、検査をすると、そのうちの何割かはインフルエンザの陽性反応が出ます。

A型とB型が両方流行しているので、来院した兄弟が、別々の型のインフルエンザというケースもあります。

高熱でお困りの方が多いので、遅い時間の予約もどんどん受け入れていたら、診療が夜遅くなります。

この時期だけはしょうがないなと思ってやっています。スタッフには感謝です。

診療終了が21時を過ぎることも当たり前になりましたが、今日は久しぶりに、22時を過ぎてしまいました。

片付けをして、帰宅して、風呂に入って出てみたら、23時を過ぎています。

そこからまず、ビールです。そして晩飯。今日のメニューは、ブロッコリー、サラダ、刺身、餃子、鶏肉。

そのあと、デザートの「ぜんざい」に続きます。食べ終わると、深夜0時ということになります。

さて問題は、ブログです。毎日の更新を欠かさないためには、締切を守らなければなりません。

どれだけ疲れていても、時間が無くても、深夜0時までには何か書き上げなければなりません。

今日の場合で言えば、餃子の途中からぜんざいの途中までに書き上げてアップロードしたのがこのブログ。

内容がこの程度になってしまうことを、ご了承ください。

細い注射針

「痛くない極細注射針を開発した」とウソをついて、会社の未公開株の購入を持ち掛ける詐欺が起きました。

なかなか巧妙というか、よくそんなスキマ狙いの設定を思いついたものです。

インスリン注射用の針をはじめとして、極細で痛くない針の需要は、たしかにあります。

一般的な診療でも予防接種でも、もちろん針は痛くないに越したことはありません。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-762.html" target="_blank" title="注射針">注射針</a>は、針の根元のプラスチック部分の色が、針の太さに応じて色分けされています。

その部分がオレンジ色の、テルモ製のかなり細い注射針を、当院では予防接種のとき使用しています。

針の太さの単位は「ゲージ(G)」で表し、数値が大きいほど細い針です。オレンジ針の場合は25Gです。

インフルエンザワクチンは、ガラスの小瓶(バイアル)に入っている製剤を、当院では使用しています。

そのバイアルの中から、接種量(3歳以上は0.5ml、3歳未満は0.25ml)の分だけ、注射器に吸引します。

その際、バイアルのフタは開けず、そのゴムのフタを消毒して注射針で貫いて、薬液を吸い出します。

このゴムを貫く操作によって、針先がわずかに傷みます。細くて尖った針であればなおさらです。

せっかくの、25Gの鋭い針先が鈍ってしまうと、接種の際に皮膚を刺す時の痛みが強くなってしまいます。

そこで、バイアルから薬液を吸い出した時の針ははずし、新しい針を注射器に装着して接種を行っています。

当院に限らず、他の医療機関でも同様の手間とコストをかけていると思います(たぶん)。

痛みが原因とされる<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-840.html" target="_blank" title="HPVワクチン">HPVワクチン</a>接種の副反応が、このような工夫で少しでも減ってくれればいいのですが。

インフル死亡数

「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-810.html" target="_blank" title="水痘">水痘</a>パーティー」というのがあります。

水痘に罹った子どもを、罹患歴の無い子どもたちが取り囲んで、みんなで感染しようという集まりです。

しかし免疫を獲得するために積極的に感染させるなど、本末転倒でしょう。

水痘が、生命に別状の無い病気だと思っているのでしょうが、それは単に、確率の問題です。

毎年全国で100万人が罹患し、そのうち約20人が死亡していることを、どう受け止めるか、でしょう。

たしかに死亡率はとても低いです。しかし予防接種さえ徹底すれば、死ななくて済むであろう20人です。

このように、患者数が多い疾患では、死亡率が低いと安心しがちですが、注意が必要です。

似たようなことがインフルエンザにも言えます。というよりも、インフルエンザの方が深刻かもしれません。

今の時期にはありきたりの疾患で、死亡率も高くありませんが、それでも毎年数百人が死亡します。

さらに、インフルエンザに別の肺炎を併発したり、持病が悪化して亡くなるケースが多いのも問題です。

これを「超過死亡」という考え方で推測すると、インフルエンザによる死亡数が1万人以上の年もあります。

インフルエンザなど、タミフルを飲めばすぐ治るとお考えの、体力自慢の方も多いです。

仕事熱心なのでしょうか、下熱したらすぐに職場復帰する方もおられますが、甘く考えてはいけません。

周囲の高齢者や持病のある方にうつして、その方を死亡させてしまうリスクまで考慮しなければなりません。

靴下のアドレス

冷蔵庫から迷惑メールが発信されていたと、今朝のニュースが面白おかしく報じていました。

いわゆる「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-295.html" target="_blank" title="スマート">スマート</a>家電」は、ネットにつながる以上、ハッキングされるリスクがあるということです。

ウイルスに感染した冷蔵庫など、シャレにもなりません。

あらゆるモノがネットにつながり、個別のアドレスが割り振られる時代は、遅かれ早かれやがて訪れます。

セキュリティーや個人情報の保護が、いっそう困難になりそうです。

先日も書いた「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-827.html" target="_blank" title="モノのインターネット">モノのインターネット</a>」の時代です。最近目にしたネット記事では、こうまで言ってます。

「靴下にすべてアドレスをつけて、間違った靴下を組にしてしまうことがないようにすることさえ可能だ」

笑ってはいけません。現に私は時々、両方とも左足用の靴下を間違えて履きそうになることがあります。

そうならないように、靴下を洗濯するときには、ネットに一組ずつペアで入れるとよいそうです。

しかし、靴下の組を揃える手段として有効なのは、今は洗濯ネットでも、未来はインターネットなのです。

靴下から発信されたデータはまた、いわゆるビッグデータとなり、どこかに蓄積され、だれかが集計します。

たとえば、「靴下を履くのは、右足からか左足からか」ということを調査するとします。目的はともかく。

アンケート調査では時間がかかります。それに、記憶で回答したのでは、正確なデータとは言えません。

ためしてガッテンみたいに実験しますか。かなりの人数を集めなければ、正確なデータになりません。

ところがもしも、世界中の靴下からリアルタイムで発信されるビッグデータがあったらどうでしょう。

靴下の利用に関する、ありとあらゆる解析を、瞬時に行うことが可能です。

でもいつか、ハッキングされた靴下から、迷惑メールが発信される日が来るかもしれません。

情報とWikipedia

何かをググると、しばしば上位に登場してくるのが「Wikipedia」の記事です。

私もよく目を通しますが、まず第一に、文章の構成にまとまりがなく、随所におかしな日本語が見られます。

さらにしばしば、不適切な内容の記述を発見します。ときには明らかな間違いもあります。

とくに医学分野の中でも臨床的事項の記載は、誰が書いたのか知りませんが、もっともらしい嘘が多いです。

このことからもかわるように、その分野の専門家からすれば、薄っぺらでいい加減なのがWikipediaです。

しかし、ざっくりと概略を知りたいときは、それでも事足りるのかもしれません。

世の中の膨大な情報の中から、目的とするものを抽出するとき、Wikipediaはたしかに有用です。

また、ある事柄について深く知りたいとき、とっかかりを得るために使うのであれば、悪くはありません。

自分以外の他人のフィルターを通してまとめ上げられている、という点だけ考えても十分に有意義です。

大学生が、Wikipediaだけを頼りにレポートを書くことが、しばしば批判されます。

しかし、ゼロからアイデアを生み出すなんてことは奇跡です。世の中の知恵は、先人の知恵の応用です。

たとえばAppleは、既知の要素を寄せ合わせ、既存の技術を組み合わせて、イノベーションを起こしました。

情報集めに労力を費やすよりも、効率よく入手した情報を元に、自分が何を創り出すかが重要でしょう。