乳がん治療薬「ノルバデックス」と高血圧治療薬「ノルバスク」は、名前が似ていて紛らわしい薬です。
これらを取り違えて処方しないように、最近、メーカーがあらためて注意喚起を呼びかけています。
手書きの処方箋なら、両者の取り違えはまず起きないでしょう。薬の名前そのものを勘違いしていなければ。
ところが、電子カルテなどのIT化したシステムでは、これが問題となります。
薬剤は頭文字の五十音別に分類されていたり、最初の何文字かを入力して検索するようになっています。
医師は候補薬剤一覧の中から、目的の薬をクリック等で選択し、用法用量などの情報を加えて処方します。
名前が似ていると、うっかり別の薬を選択してしまうことがあり得ます。これが取り違えにつながります。
システムをどのように改良したところで、間違えて別の薬を処方するリスクはつきまといます。
抜本的には、薬の名前を変えてしまうしかありません。実際に昨年、そのような事例がありました。
高血圧治療薬「アルマール」と糖尿病治療薬「アマリール」の問題は、名称変更によって決着しました。
これはたしかに、紛らわしかった。いくら注意しても間違いそうなので、私は処方したくない薬でした。
結局、取り違えが原因で死亡例も出てしまい、市場規模の小さいアルマールの方が、名称を変えました。
ポピュラーな商品だったのに、潔く名前を変えた大日本住友製薬の英断が、評価されました。
しかし、高血圧治療薬のつもりで、間違えてアマリールを処方してしまうリスクは、今も残っています。
こういった場合本来は、間違えて内服するとリスクの大きいアマリールの方を、名称変更すべきでした。
あるいはいっそのこと、薬剤名を両方とも変更してもよかったと思います。ケンカ両成敗じゃないけど。
良い薬は、名前が変わったぐらいで売れ行きが落ちるものではないはずです。