冷却ゲルシート

「熱さまシート」とか「冷えピタ」とかの冷却ゲルシートを、額に貼っているお子さんをよく見かけます。

診察時に触ってみると、当然のことながら、体温と同じ暖かさのシートになっています。

もはや、額からの放熱に役立っていないばかりか、放熱を阻害する「保温シート」の状態です。

このような「冷却ゲルシート」問題は、何年も前から話題に上っていますが、結論は出ていません。

問題は複雑です。論点を整理してみましょう。

(1)本当に冷えるのか

貼ったときのヒンヤリ感は否定しません。体温よりも冷たいモノを接触させれば、当然、熱を奪います。

(2)冷却効果は持続するのか

メーカーは、シートが温かくなっていても冷却効果が続くと説明していますが、私には理解できません。

(3)額を冷やして解熱効果があるのか

太い血管に近い部分、ワキや首やそけい部を冷やさなければ、解熱効果はあまり期待できないと思います。

(4)そもそも解熱すべきなのか

熱が上がると病原体の活動は低下し、逆に免疫細胞の活動は活発になります。つまり熱が高い方が有利です。

病原体の侵入を受けると、体温調節中枢(視床下部)が設定温度を変えて、体温を上げるのはそのためです。

だから本当は、なるべく熱は下げたくない。でも、ぐったりしている子どもを、少しでも楽にしてやりたい。

ならば、解熱効果は少なく、しかし涼感があって心地よいことをすればいい。

逆説的ですが、それが冷却ゲルシートの役割かもしれません。ちょっと皮肉すぎましたか。