気色ばむ

「猪瀬都知事が気色ばむ一幕もありました」と報道キャスターが冒頭に言うので、どれどれと見てみました。

たしかに、いつも努めて冷静に釈明している猪瀬氏にしては、思わず地が出たか、少しイラついていました。

しかしこれを「気色ばむ」などと表現するのなら、世の政治家の大半は、いつも気色ばんでいます。

それどころか、委員会の野党議員などはみな、激おこぷんぷん丸です(若者言葉を使ってみました)。

ところで「気色ばむ」の読み方ですが、標準の「けしきばむ」よりは「きしょくばむ」の方が私は好きです。

まず耳で聞いたとき、「けしき」からは「景色」をイメージしてしまい、「気色ばむ」の意味に合わない。

逆に「きしょく」からは「気色が悪い」を連想するので、ネガティブなイメージが「気色ばむ」に合います。

文字を読む場合でも、一字目の「気」を見た瞬間に「き」と読めてしまう。「け」ではなくて。

こういう風に、最初の漢字の読みに引きずられてしまう他の例を、ひとつ思いつきます。「重複」です。

「ちょうふく」が標準なのですが、放送以外の実生活では「じゅうふく」の方をよく聞きます。

おそらく、一文字目の「重」を見た瞬間、「じゅう」の方をイメージしやすいからでしょう、たぶん。

もっと気になるのは「気色ばむ」の「ばむ」の方です。またいつか、じっくり考えてみます。