「心臓手術を受けました」という方に、ときどき出くわします。
しかしよく聞くと、その心臓手術は「カテーテル手術」のことだったりします。
元心臓外科医の私としては、少々がっかりします。それを手術とは、言ってほしくないんですよね。
この場合厳密には「カテーテル治療」とか「冠動脈インターベンション」と言うのが正しいです。
「インターベンション」というのは、元々は「介入」という意味です。
カテーテルを血管の中に挿入し、冠動脈に物理的な治療を施すので、たしかに外科的な手法ではあります。
心臓の「カテーテル検査」は、昔からたいてい内科医(循環器内科医)が行っています。
冠動脈インターベンションも、検査と同様の器具と手法で実施できるので、やはり内科医が行うのです。
この分野の進歩はめざましく、冠動脈の病変に対しては、主流の治療法となりつつあります。
そしてその結果、心臓外科医の仕事(狭い意味での心臓手術)が減っているわけです。
内科医がカテーテルを武器に、外科医の仕事に「介入」してきた状況とも言えます。
でも考えてみると、大腸ポリープの内視鏡的切除は、もっぱら内科医(消化器内科医)が行っています。
腹腔鏡下や胸腔鏡下に行う手術だって、やがてこれを手がける果敢な内科医も出てくることでしょう。
「外科」と「内科」の境界が、だんだんあやふやになりそうです。