血圧を下げる薬(降圧剤)「バルサルタン」に関する論文の不正疑惑が、波紋を呼んでいます。
製薬会社からの資金援助を得た研究者が、宣伝効果のある論文を発表し、薬の売上に貢献するという図式。
有力教授たちがこぞって荷担していたことと、売上1000億円を超す大ヒット薬だったことが問題です。
患者さんの不利益だけでなく、日本人が発表する研究論文全体への信頼を失うことにもなりました。
バルサルタン自体も、残念ながら私を含め多くの医師が、別の降圧剤への切り替えを検討中です。
今回これほど報道された以上、日本での売上に影響することは間違いないでしょう。
降圧剤のうち、最近とくに進歩著しいのが「ARB」という種類の薬で、バルサルタンもその一種です。
ARBは、アンギオテンシンという体内物質が、細胞に作用して血圧を上げる働きをブロックします。
日本では7つのARBが発売されていて、その一般名はみな、語尾が「サルタン」です(商品名は別)。
一連の報道を聞くたびに、どうしても思い出すのが「悲しきサルタン」という洋楽曲。
学生の時にヒットしていて良く聴いた、ロックバンド「ダイアー・ストレイツ」のデビュー曲です。
今回の事件はまさに、「悲しきバルサルタン」って感じです。