アシアナ航空のボーイング777型機が、サンフランシスコの空港で着陸に失敗した事故が起きました。
その原因の詳細は、今後明らかになると思いますが、操縦ミスの可能性が指摘されています。
今回の飛行が副機長(副操縦士)の「慣熟訓練」であったことから、2つの点で問題視されています。
(1)副機長は、9800時間の飛行経験があるが、777の操縦経験は9回目、わずか43時間だった。
(2)教官役の機長はベテランだが、教官としては初めての経験だった。
このニュースを聞いてすぐ思ったことは、外科医の修練と似ている、ということです。
外科医が一人前になる過程では、見学、助手、執刀医、という順番で修練を積んでいきます。
基本的で平易な手術から、だんだんと複雑で難しい手術の執刀を経験し、実力をつけていきます。
もちろん修練医が執刀する際は、経験豊富な先輩外科医が助手として指導とサポートを行います。
修練中に突発的な事態が生じたときは、指導医が手助けをするか、状況によっては執刀を交代します。
しかし多くの指導医は「できるだけギリギリまで修練医に任せて、経験を積ませよう」と考えがちです。
急場をしのぐ経験こそが外科医を育てるのであり、どこまで任せきれるかで、指導医の手腕が問われます。
パイロットの訓練でも、おそらく似たような状況があるような気がします。
今回の事故は、機長がギリギリまで副機長に任せ過ぎたのではないかと、私は想像します。
教官経験が少ない機長が、「教官としての度量」を見せようとしたのかもしれません。